朝日新聞2005年10月4日朝刊の、「日本代表、きょうから東欧遠征」という記事の中で、「今季、欧州組のFW陣で、大久保の経験値は、ずば抜けて高い。」(稲垣康介)と書かれていた。


 ここでは、大久保が先発で6試合出場していることを指している。経験試合数だから、確かに数値化できるわけである。


 これから、こういう表現がふえてくるのだろうなあ。

 

 書いてますか? ――ぼちぼちでんなあ。

というわけで、久しぶりのサッカー用語。


 「オーバー」「ヘッド」なのだから、頭越しにけること、である。

 気になるのは、何かというと「オーバーヘッド」と言いたがるアナウンサーがいること。


 もっともオーバーヘッドらしいオーバーヘッドは、ゴールにほぼ背を向けた状態から、ジャンプしてバイシクルキックをするものだろう。それも、横からのセンタリング、あるいは後ろ(ゴールに背を向けているからキックする人から見れば前になる)からのフィードボールをボレーキックするものである。

 中田のセリエA、衝撃的デビューの試合のゴールを思い出す。


 自分でちょんとボールを浮かせてバイシクルキックというのは、ブラジルの選手がよくやる技だが、たいていはスタンドプレーくさくて、それほど感心するようなものではない。

 また、ゴール前の混戦でディフェンダがヘッドでクリアしようとしているような浮き球を、体を預けながらむりやりオーバーヘッドシュートしようとするのは、危険なプレーとなることが多い。

 しっかり立ったまま頭越しに後ろへけることもできるし、後ろへ倒れこみながらのキックもある。それが、意表をついたパスだったり、自分で振り向いてそのボールをボレーでシュートしたりするのなら、それはそれでおもしろいプレーである。


 しかし、わざわざ「オーバーヘッドのシュート」と実況するのなら、それはやはりジャンプしてのボレーのバイシクルキックであるべきだ。


 久しぶりの記事です。


 2004年、日本サッカー協会公募による、日本女子サッカー代表の愛称。

 「なでしこジャパンになでしこはいるのか?」などと使う。


 男子代表については、いつごろからか、「トルシエジャパン」「ジーコジャパン」などという呼び方が定着してきたので、それからの類推として語呂がいい。

 代表女子サッカーの盛り上がりとともに、かなり使われている。「なでしこ」のイメージも悪くない。ふだんはしとやかだが、いざとなると凛とした強さを発揮する(ということになっている)、日本女性の代表ということなのだろう。


 しかーし、変な語ではある。

 そもそも、「○○ジャパン」で、なぜ代表を意味するのか。「オールジャパン」ならまだわかるが。

 おまけに、「なでしこ」は「やまとなでしこ(大和撫子)」の略であるから、「略語+略語」である。固有名詞だからわかりはするのだけれども、造語法としては感心できない。


 当分の間、使われることになるだろうが、男子の代表も含めて、いずれ再度募集して新たな愛称を決めてほしいものだ。

 最近、若いアナウンサーが実況中に使いたがる用語。「もう少しバイタルエリアにボールを入れたいですね。」などと使う。


 有効な攻撃、特にゴールに結びつくような攻撃のおこなわれる領域ということであろうが、意味は必ずしも明確ではない。広い意味での「ゴール前」と、「スペース」とを合わせた感じで使われているようだ。


 あいまいなのは、「バイタルエリア」と呼んでよいような場所が結局両チームの選手の力量いかんによって決まることだからだろう。へぼな守備陣なら、どこでもバイタルエリアになりそうだし、ロナウドにとってのバイタルエリアは、並の選手よりはるかに広いはずだからだ。

 このままだと、具体的にどの選手がどのように動き、どのようなスペースを生かすのか、あるいはどのようなパスを狙うべきなのかといったことを指摘できないときに、何となくわかったような気持ちにさせる言い方として使われる語になってしまいそうである。

 「キーパーというのは、経験値がモノを言いますからね。」などと使う。

 「経験値が高い」「経験値をかせぐ」というかたちでも使われる。水沼がU-20世界選手権のオーストラリア戦の解説で「経験値を持って帰る」とも言っていた。


 おそらくRPGゲームの用語が入り込んできたもの。サッカー関係のゲームソフトも多いので、井原、松木あたりの世代は、おそらく無意識のうちに使ってしまっているのだろう。今やいいおっさんとなった彼らが、いっしょうけんめいゲームをしている図を思い浮かべるとほほえましい。


 ただ「経験」というだけでじゅうぶんであろう。「経験」そのものは、代表歴のように数値化できるものではないのだから、ジーコが「宮本は経験値26で、松田は経験値18だから、先発は宮本で行こう。」と決めているわけではあるまい。

 意味は同じでも、けっして「ディフェンダー」ではない。

 セルジオ越後風だと、「フェ」を高く発音する。ふつうに平板で発音すると、宮沢ミシェル風になる。人ではなく守備についていうときには「デフェンス」となる。


 かつては「ディ」の発音[di]が日本語話者には難しかったので、「デズニーランド」のような発音はしばしば聞かれる。「デフェンダ」も同じ。


 がつっと選手同士がピッチでぶつかる。ひざなど硬い部分が相手選手の太ももを直撃する。 

「あれは痛いんですよね。モモカンというやつですね。」


 確かにこれは痛い。しばらく足に力が入らない。「もも」を「かーん」と打つということか。関東の大学ではよく使われていたのではないか、と推測している。

 「いわゆるホワンキックですね。」と、Jリーグが始まったころの解説者が言っていた。ふわっと軽く浮かすようなキックのことである。


 「えっ」と思ったのは、その昔中学校のサッカー部で一年先輩の人が使い、仲間内で使っていたのと同じだったからだ。人のつながりは想像できないので、たぶん偶然別々に同じことばがうまれたのだろう。

 感じはよく出ているように思う。「ホワン」としたボールを蹴る、といえばほぼ伝わるだろうから。


 それにしても、あの解説者は誰だったか? あまりメジャーな人ではなかったような気がするが。


 「二人でボランチを組みます。」「ツーボランチ」などと使われている。


 ポルトガル語で「ハンドル」を意味すると言われ、チームの核となる小数の優秀な選手を指していたものと思われるが、近頃は「中盤の底」という守備位置とほぼ同義で、普通名詞になってしまっている。


 ポジションを指すのならば、「守備的ミッドフィルダー」「守備的中盤」で十分であろう。いわゆるストッパータイプの選手までもボランチと呼ぶのなら、わざわざ「ボランチ」という語を使う意味はない。ひとりの場合には「ワンボランチ」より「センターハーフ」の方がぴったりかもしれない。


 ポジション用語は、システムと関係して新しいものが使われるようになる。WMフォーメーションの時代にはフォワードの中央にストライカーがいた。釜本は、まさに「センターフォワード」であったし、ビエリにもそんなにおいがある。守備重視で生まれた「スイーパー」を経て、イタリアで使われた「リベロ」は、むしろベッケンバウアーにぴったりの名称であったし、4―4―2システムによって「サイドバック」は「ウイングバック」となり、ロベルト・カルロスはその代表のひとりであろう。


 ヨハン・クライフを特定のポジション用語と結びつけることは難しいことが象徴しているように、傑出した個人は(ゴールキーパーは除けば)ポジションと関係ない。ペレもマラドーナもそうである。

 ポジション用語は、便宜上、試合開始時点の位置を基準に、およその主たる活動場所がわかるようなものであればいいのではなかろうか。


 

 「ここで点数がほしいところです。」「点数をとらないといけません。」

などと、サッカー中継で「点数」ということばを耳にすることが多い。


 「点数」とは、「点の数」なのだから、「点数が多い。」ならわかる。

 しかし、とくに「多くの点」という意味合いもなく使われることには、いささか抵抗がある。単に、 「点がほしい。」「点をとる」でいいのではないか。


 まあ、もっとも「得点をとる」などというよりはましか。