牛乳切らした。
コンビニエンスストアに、ちょっとのつもりで傘も持たずにでかけてしまった。
止むだろう、と思った雨は、大粒になって落ち始めた。
濡れてもほんのすこしだけ。
そう思って、歩幅を大きくする。
降ったり止んだりの今日は、雲の色もそんなに暗くなく、風も強くない。
コンビニエンスストアでの買い物を済ませると、ドアからまた雨の中へ。
・・・って言うほど土砂降りでもないのだけど。
梅雨の終わりごろの大雨のなかを、いつかひとりで歩いたことがある。
それはまだわたしがティーンエイジャーのころで、よりどころもなく、
おさいふにお金もあんまり入っていなかった。
下着までぐっしょり雨に濡れて、あれからどうやってうちに帰ったのか、
あんまり覚えていない。
台風の近づいている荒れた雨のなかを、いつだったか、その時の恋人と歩いた。
ふたりで濡れたTシャツを脱ぎ捨てあって、冷たくなった胸をあわせたのは、
わたしの記憶の創作だったろうか。
そんな、思い出してもなにかが滴り落ちそうな記憶とは無縁の顔をして、
午後の町の片隅、ちょっと傘を忘れちゃった奥さん、としてあたしはここにいる。
これでいいの。きっとこれでいい。
微笑がこぼれる。これはきっと正解。
あたしは、今雨に濡れたって、ちっとも悲しくない。
くびすじを、少しあたたかくなった雨がつたって落ちた。