ある年の七夕の夜…小さな銀行の前での約束…





素敵な名前のあの娘に捧げます。













大学時代、ロンドンへの短期留学を迷っていた。





その帰国日を見た時、俺はロンドンへ行く事に決めた。





彼女との約束の日の前日だったから…













ある年の七夕。





俺は自転車に乗り、巣鴨にいた。





暑かったが、爽やかな夜だった。





ペットボトルのミネラルウォーターを頭から飲んだ。





七夕が終わろうとしていた夜…白い服を着た小さくて可愛い彼女に出会った。





彼女は高校3年生。





塾の帰り。





彼女は大学の医学部合格を目指していた。





初対面とは思えないくらい、空気が合った。





そんなに長い時間ではなかったかもしれないけど、楽しく懐かしいような時間を過ごした。





『塾の帰りに自転車で毎日、迎えに行くよ。』





『うん。』





その時、彼女が今日という日が七夕だった事に気付いた。





二人…七夕だった事を全く意識していなかった。





俺はギャグで『来年の七夕に会おうか…?』





『え…?』





七夕の夜に出会った二人…

来年の七夕まで一度も会わずに再会できたら…





ロマンチストな俺はノリでそんな提案をした。





結局、二人…楽しみながら、来年の彼女の卒業式の翌々日…3月3日に再会する約束をした。





その日にした理由は単に覚えやすかったからと来年の七夕まで一年は長いし、彼女の受験も終わり、落ち着ける頃だったから。





『メールしない?』と彼女は言ってくれたが、俺は断った。





その時の俺は…二人が、それまで何の連絡もしないで再会できた方が素敵だなと思っていた…





互いに『待ってるから。』と言い合い、別れた。





直後、俺はロンドンへ行く事を決めた。





帰国は約束の前日。





彼女を100%信じていた。





約束の午後8時。





ある銀行の前。





彼女は来なかった。





俺はその日が終わる0時まで待った。





冷たい風がきつかった。





だが、彼女は来なかった。





0時になった時、きっぱりと諦めた。





アホだったかもしれない。





いや、アホだった。





けど、俺はあの日、彼女と無茶な約束をした事を今でも後悔していない。





生涯、俺はアホなロマンチストでいたい。





俺の七夕の夜…思い出の1ページ目に白い服を着た小さくて可愛い彼女がいる。