あの夏…俺の隣にいた君に捧げます。






俺はここパタヤという狂った街で…金の力を通さず、本当にタイプだと思った可愛いタイ人…一人だけとセックスをする。


そう決めてナンパを始めた俺。

ただ、街中やショッピングモールで女に声をかけても、ぶっちゃけ娼婦で溢れてる。

そこで俺は高級ホテルのロビー付近やホテル内のカフェ、レストランで可愛い女を探すという手に出た。

高級ホテルに客として宿泊してる女なら、旅行客か、普通の職業の女である可能性が高いと読んだ。

そっからは楽しかった。


宿泊客のタイ人の女性に声をかけ、なぜかその家族と一緒にプールサイドで夕食を食べたりした。


だが、苦戦した…

やはり、英語では俺の気持ちを正確に伝えられない。

それ以上に心の底にグッと来るような可愛いタイ人女性に巡り会えない…


3日位経ったか…


あるホテル内のカフェ…


そこで一目惚れしたタイ人の女…


それがダーウとの出会いだった。


小柄で黒髪の彼女は神秘的な魅力があった。


She is oriental beauty.


彼女は普段住んでるタイの北部の都市、チェンライからパタヤに住む友人に会いにきていて、ちょうど一人で休憩しているところだった。


何故だろう…


彼女とはなぜか他のタイ人女性に感じた違和感が全くなく、普段、日本でナンパした可愛い女子と話しているようなトキメキと楽しさがあった。

自然な感覚で、タイ人と日本人という事を意識しないでいられたんだ。


この女しかいないという直感。


俺達はその日の夜にカフェで会話をし、それからは、ほとんど毎日会った。


一緒に行ったパタヤの海沿いのスタバや、彼女の友達のアパートの近くにあるショッピングモール…

ホントに楽しかった。


パタヤの街中にある仏陀の像に真剣に祈りを捧げる彼女の信教心の深さに感心した。


帰国する前々日に彼女と初めてセックスした。


前日には彼女の友達がアパートの部屋を貸してくれて、1日中、一緒にいた。


別れの時間が近づくにつれて、恥ずかしい話だが、俺は涙を流してしまった。


“もう会えないかもしれない”


そう思うと自然に涙が出てきた。


泣いてはいけない…


けど止まらない…


一人、彼女の友達の部屋のベッドで泣いた。


3時間位、涙が止まらなかった…


そんな俺に彼女は優しい言葉をかけてくれた。


“I believe you.”


彼女は泣かなかった。


最後のセックスはコンドームをつけなかった。


“believe”…信じるという事。




帰国後、俺達はEメールや電話をし、頻繁に連絡を取り合った。


東京、吉原のセブンイレブンの深夜勤や運送業で金を稼いだ。


休憩時間には国際電話のカードを買い、携帯で彼女と電話した。


その年のイヴは一人だったけど全く寂しくなかった。


セブンのバイト中にクリスマスケーキを買った常連のおばさんに『来年はこんなとこでバイトしてちゃダメだよ。』とレジで言われたが、『タイに彼女がいるんで平気です!』と胸を張って、答えた。


翌年の夏、彼女の住むチェンライに行った事は誰にも話してない。


空港で彼女に再会した時の感動は、ちょっと表現できないくらいだった…




2ヶ月半のとてもとても幸せな時間だった。


車やバイクの音がうるさいバンコクとは全く違うホントに静かな街だった。

俺は病気の彼女の祖父の世話をしたり、電機店の店員をしていた彼女の送り迎えをしたり、のんびり過ごした。


やがて、タイでの仕事先を探し始めた。




『赤ちゃんができたら、結婚しよう』


二人でそう話し、タイに住む事を決意していた。




このまま一緒に暮らしたい。


それは二人の夢だった。


彼女は『私が日本に行ってもいいよ。』と言ってくれたが、俺は彼女の方に合わせたいと思った。


親には大反対されていた。


タイ人だからという短絡的な理由で……


ぶっちゃけ、友達や知り合いにも、そう言う人は多かった。


けど、俺は彼女を一人の女としてしか見ていなかった。


俺は一人ぼっちになっても構わない。


彼女を信じる。


自分を信じる。


二度目の帰国の前日、今度は彼女も涙を流してくれた。




彼女はとても美しかった…


She is oriental beauty.




空港へ向かうタクシーの中、俺のウォークマンで二人が最後に聴いた曲。

Peter Ceteraの『Stay With Me』









別れの理由は誰にも話さないし、話せない…




彼女が幸せになっている事を東京の片隅で…心から願ってる。