真っ青に澄みきった快晴…

暑い初夏の日…

2004年5月30日…

俺は一人の男と一頭の馬の勝負に対する真剣な、そして真摯な姿に心底、感動した…









その年、俺には惚れた馬がいた。

キングカメハメハ…

後に…同厩舎の名馬であるクロフネやタニノギムレットが果たせなかったマイルカップとダービーの2冠達成をWレコードという圧倒的存在として史上初めて制する事になる名馬である。





3月、阪神競馬場、毎日杯…

パドックで歩く彼の姿を初めて見て…そして惚れた。

理由はない。

オーラとか大物感とかありきたりな言葉じゃない何かが俺の胸に刺さった。

レースで1番人気の藤澤和厩舎の評判馬、シェルゲームを子供扱いした時…

『この馬ならどこだって勝てるんじゃないか、どこでも獲れるんじゃないか…?』

そんな風に確信していた。



迎えた彼の次戦は初めてのG1挑戦となるマイルカップだった。

皐月賞無視を決めこんだ松田国英調教師のこだわりだった。

男のこだわり…嫌いじゃない。



全く評価していなかったシーキングザダイヤに次ぐ2番人気の評価に心中で冷笑した。



俺はそのレースを大勝した。



G前、レコードで突き抜けた彼を見て、思いきり叫んだ。

『よっしゃ~!見たか~!おら~!』

そんな気持ちだった。





中2週のハードなレース間隔や800Mの距離延長、また消耗が激しいG1連戦の不安がとりただされたが、結局、彼は単勝260円の堂々たる1番人気で競馬の祭典…ダービーを迎えた。





俺は彼の勝利を確信していたので、裏なしの馬単で3頭へ流し、3連複3点(当時は3連単導入前)を購入した。

30万円。







レースは皐月賞で逃げ宣言をしながらも出遅れたマイネルマクロスが暴走気味の超ハイペースで飛ばす流れ。

同じく皐月賞でダイワメジャーに前残りを許した『地方の雄』コスモバルクも早め3番手につける。

それら先行集団の直後にキングカメハメハはいた。

そのすぐ後ろに彼をマークする馬。

人気馬の中ではハーツクライと横山だけがかなり後方をポツンと追走。



1000M通過は57秒6。

レース後、何頭もの馬が故障、引退する程の超消耗戦になった。



3角手前で早くもバテたマイネルマクロスをコスモバルクがかわしにかかる。



まだ早いとじっと我慢したいキングカメハメハと安藤勝己に挑戦状を叩きつけるように…す~っと馬体を外から被せてきた馬とピンクの帽子…



直後にマークしていたハイアーゲームだった。


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『2着はいらない。』

という競馬をしにいった蛯名正義。



4角から直線…



息つまる2頭の激しい一騎打ちになった…



俺の人生で最も心臓が高鳴った時間だった…



俺はキングカメハメハからハイアーゲームの馬単を20万円買っていた。













あの初夏の日…



俺は真剣勝負を見た。



ハイアーゲームを対抗にして、よかった…



いい夢見たゼ…?





俺はあの日の蛯名正義と一頭の馬を生涯忘れる事はないだろう。











追伸

キングカメハメハの子供達がデビューし、ハーツクライの子供達がセリに出された今年の夏…







ハイアーゲームは今秋の毎日王冠出走を目指し、今もまだ走り続けてる。

だが、その背中に蛯名の姿はない…



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