そんなわけで、僕は最終面接当日を迎えた。
(※前回記事の続きです)
面接の時刻は午後だったのだけど、朝から現場に到着し、スタバでひたすら最終確認をしたのだった。
最後まで頭に入らなかった単語は、、、
to be detained
→to be held in custody by police
警察に拘束された的な…
alternative sentencing
→a different way to punish someone instead of going jail
収監を伴わない刑罰的な…
controlled substances
→legal drugs that can be bought with a subscription
マツキヨとかで買えるクスリ的な…
narcotics
→an illegal drug such as heroin or cocaine
違法薬物的な…
charge
→to accuse someone of having done something illegal
違法行為をした人を告発する的な…
to be convicted
→to be found guilty of a crime under the law
有罪を言い渡される的な…
recession
→to take back a decision
決定の取消的な…
probation
→you report to an officer regularly instead of jail time
保護観察的な…
parole
→allowed to leave the prison early due to good behavior
仮釈放的な…
fraudulent
→to be dishonest or intending to deceive
不誠実な態度的な…
non-combatant services
→services that do not involve combat or hiding
軍事作業以外の兵役的な…
owe
→to have a debt
借金的な…
a suspended sentence
→delaying a sentence
執行猶予的な…
insurgent organization
→a group that uses weapons and fights against a government
反政府組織的な…
persecute
→to someone badly
虐待的な…
legally incompetent
→having mental problem under law
被後見人的な…
pay alimony
→to pay money to ex-spouse after a divorce
離婚した元配偶者への送金…
torture
→to hurt someone physically
拷問…
polygamy
→having more than one spouse at the same time
重婚…
extermination camp
→a place to keep people before killing them
虐殺前の収監施設…
detention facility
→a place where people are forced to stay
強制収容所…
ってことで、知らんがなな単語が並んでたんだけど、たしかにニュースの見出しとかで見かけることはあるような気もするけど、日常使いしないから意味がパッと出ない。
書類を提出したときにはいちおう全部意味を調べてYes/Noを記入したはずなんだけど、いざ口頭で尋ねられても言い換えなんて無理っしょと思った。
なので、これらの単語を説明してる動画をYouTubeで倍速再生して最後はスクショして単語カードのように覚えてたんだけど、前日から寝たのが行きの電車の2時間くらいだったから頭がホワホワになってきた。
スタバをハシゴしたけれど、2件目のスタバで寝落ちして遅刻したら笑えないので、早めに出て面接会場である移民局の施設に向かったのだった。
2年半前にハートフォードという縁もゆかりもない土地に、なかばガチャのような気分で移り住み、その間、しょっちゅう前を通っていた建物が、その施設だったのが、なんとなく感慨深かった。
とはいえ感慨に耽ってる場合じゃないので、とりあえず入館し、セキュリティチェックなどを経て面接の待合室に入った。
そこにはざっと見15人ほどが待っていて、思ったよりも空いていた。
これじゃすぐに自分の名前が呼ばれそうだ
まじでここで落ちたら笑えない。
この15年ほどかけて、その都度滞在資格を変更しながらも、一歩一歩進んできたのだ。
僕にとって、アメリカ滞在は、ビザなしで始まって、学生ビザになって、就労ビザになって、永住権になって、ようやく市民権の申し込みができたのだ。どれもスムーズに取れたわけじゃなかったし、就労ビザや永住権を取るために労働時間とか休日出勤とか度外視して働いてきた。そして永住権が取れてから、市民権の申し込みが可能になるまでの5年間、自分の会社をたてたり、コロナで世の中が混乱する中、なんとか生き延びてきたのだ。
それなのに、単なる英単語がわからなくて落ちるとか、まじで笑えない。。。
そんな感じで、走馬灯のように脳内にさまざまな思いが駆け巡るというか、駆け巡る暇あったらひとつでも単語覚えろやって話なんだけど、運良く、僕の名前はなかなか呼ばれなかったのだった。
正直、けっこう緊張していた。この緊張感は、昨年に受けたGoGoボーイのオーディション以来だ。
GoGoのオーディションでは、緊張を落ち着けるために、直前までYouTubeで、肉の小路ニクヨさんのチャンネルを見ていたけれど、当日の夜、マンハッタンは激しい雨と風のせいで、完璧にセットしてきたはずのヘアースタイルは秒で崩壊し、服はビショ濡れ。寒いし、もはや緊張とかよりも早く店の中に入りたかった。そのことで、変な緊張感が解けて逆によかったと思う。
今回も同じ感じの展開で、予約の30分前に待合室に入って、最初は緊張してたのだけど、予約の時刻を30分すぎても一向に呼ばれず、待ってる人はついに僕を含めて2人になったのだった。
もはや緊張とかよりも、とりあえず呼ばれたいっていう気分だった
途中、警備員の人が、もう一人の待ってる人に、
誰かを待ってるのか?
と尋ねると、その人は、今面接中の仲間を待ってるのだと答えた。面接を受けに来た本人ではなく、同伴者だったらしい
そして、その警備員は僕に、
キミもか?
と尋ねるので、僕は、
面接待ちです…
と答えた。
警備員は、怪訝そうな顔をした。というのも、お役所だから閉まるのが早いようで、僕の予約時間は閉館直前だったらしく、あとから来たのは数人のみ。
そしてその数人は僕よりも先に面接室に呼ばれていったのだった。
中華屋で後から来たグループのチャーハンが先に出てきて自分の餃子がぜんぜん来なくてだんだん焦る気分に似ている。
僕はもはや単語とかどうでもよくなって、これはもう永遠に呼ばれないんじゃないかと思った。
考えてみれば、思い当たる節はいくつもある。
あまりここでは具体的には書かないけれど、、いろいろある。。笑
もしかしたら、面接に呼んだものの落とすことが確定してて、それでなんかアイツ来たよ的な感じで中の人たちが情報の照会をしてるに違いない
そうだ、僕はきっと落ちることが確定してるんだ、、
そんなとき、面接室のドアが開き、中からオフィサーらしき中年女性が僕に、、
もう少し待ってね、あなたの番を忘れてるわけじゃないのよ!
と気遣って声をかけてくれた。
そのとき僕はひとつの疑問が浮かんだのだ。
なんであの人は僕のことを知ってるのだろうか、、
だって、名前を呼ばれたわけでもないのに、直接僕の顔を見て声をかけたということは、顔を認識してるってことで、、
これはやっぱ、アイツ来たよ的な感じで、僕はここで拘束されて強制送還させられるのかもしれない、、いや、きっとそうだ。そうに違いない、、
と、指名手配犯のような気分になっていたのだった。
待合室にはついに僕一人になり、受付も終了し、警備員も退屈そうにデスクに足を投げ出している。。
そうか、僕のアメリカ滞在は、今日をもって終了になるのか。面接にのこのこやってきた指名手配犯。
僕の脳内では一大スペクタクルが繰り広げられ、日本に帰ったあとどうやって生活していこうかなどと考え始めていた。
けど、日本に帰らざるを得なくなったらそのときはそのときだなとも思った。
アメリカにこれからもいたいという気持ちは間違いないけれど、どうしたっていられないのだと決まれば、それはそれでなんとかなる気もする。
これまでのアメリカ滞在だって、なんか知らないけどなんとかなってきたのだ。これは別に運に任せるという投げやりな意味ではなく、最終的にはなんとか帳尻合わせをしてきたという一種の確信がある。
だから、もはやどっちでもいいような気さえしてきたのだった。。
その頃、頭の中には例の単語などすっかり消え、謎の開き直り状態になっていた。
そして、さらにそこから30分くらい経ったころだろうか。面接官がドアから顔を出し、ついに僕の名前を呼んだのだった。
いかにも役所の人っぽい仏頂面の女性は僕がドアを入ると、廊下を通ってさらに奥の個室へと案内してくれた。
そこで、右手を挙げて誓いを立てる。
真実のみを話します的な…
映画の法廷シーンとかでよく見るやつだ。なんかエモい
このあと僕は、拘束され、強制送還されるに違いない。。
続いて、氏名などを確認され、顔写真や指紋などを取った。
このまま拘束され、強制送還されるんだ、ぜったい。。。
そして面接官はなんの山場もなく100の質問を始めた。これは口頭でランダムに10問出題され、6問正解で勝ち抜けになる。
最高裁判所長官の名前を聞かれた以外の質問は、何聞かれたか覚えてないのだけど、1問も間違えることなくストレートに6問正解し、続いてリーディングとディクテーションのテストになった。
面接官の女性は表情ひとつ変えないどころか、パソコン画面に向かって僕の回答をひとつひとつ入力していて、こちらと目が合うことすらない。
リーディングは、手元のタブレットに表示される英文を読み上げるのだけど、これは中1レベルの英文。
ディクテーションは面接官が読み上げる英文を聞き取って、手元のタブレットに記入するテスト。3回チャンスがある。これも中1レベルの英文だけど、大文字小文字の区別とか、ピリオドとかも正確に見られるらしいから、ケアレスミスだけやらかさなければ大丈夫な感じ。
僕の英文は、
The President lives in the White House.
という、拍子抜けするほどシンプルな文だったのだけど、PresidentのPが大文字になることと、White HouseのWとHが大文字になるけどtheのtは大文字にならない点が、ちょっと引っ掛け的だったかもしれない。
まぁこれも問題なくストレートで正解したのだけど、そんなのは当たり前で、問題はこのあとのYes/Noクエスチョンなのだ。
例の見慣れない単語の意味を突然聞かれることがあるらしいから、ここでしくったらまじおじゃんやん。
質問は矢継ぎ早に繰り返された。
ただ、YouTubeで鬼再生していたおかげで、何を聞いてるのかがはっきり聞き取れたから、Yes/Noの回答を躊躇わずにできた。
そしてけっきょく、単語の意味を聞かれることも一度もなかったのだ。
今朝からあれだけやってたのに一問も尋ねられなかったのはなんだか拍子抜けしたけれど、結果オーライ。
おそらく、Yes/Noの回答を一瞬でも躊躇ったりすれば、こいつ意味ちゃんと理解してるのか?と疑われて単語の意味を突っ込まれたのかもしれないけど、スムーズに、むしろ食い気味に回答していったから怪しまれなかったのかもしれない。もう一つは、その日最後の一人だったから、時間も遅くなってたし、面接官的にもさっさと終わらせたかったのかもしれない。
そして、すべてのプロセスを終えると、面接官はCongratulation!と言い、
日本人は珍しいわね
とかなんとか言いながら、はじめて笑顔を見せた。
え、強制送還まで覚悟してたけど、おめでとう!と言われた。。
最後に名前や生年月日や身長や髪の色や目の色などの基本情報が正しいかどうかを確認してサインをし、書類を一枚渡されてこの日は終了となった。
とはいえ、あくまで最終面接が終了した段階なので、まだ正式に証明書を受け取るまでは安心できない。。
ただ、この段階まできて落ちた人の話はまず聞いたことがないので、ここまで来て落ちたら落ちたで話のネタにはなるから、まぁいまさら足掻いても仕方ないので、おとなしく待とうと思うよ。
外に出ると、夕方の空になっていた。
ニューヨークへ帰る電車まで1時間ほどあったので、あいかわらず閑散としているハートフォードのダウンタウンを歩き、この先あと何度来るかわからないこの街を、見ておこうと思った。
もともと縁もゆかりもなく、たった2年半しかすごしていないこの街だけど、ここで経験した時間は、あまりにも濃密だった。。