一昨日の夜は二度目の仕事で、初めて行く会場だった。
そこは地下にダンスフロアがあり、メインステージのほかにGoGo専用のお立ち台がいくつかあり、いわゆる典型的なクラブ仕様になっていた。
かかる曲も前回のもう一つの会場ともちがった。流行りの曲が多くてノリやすかった。
僕がオーディションを受けて加入することになったのは、ニューヨーク最大のGoGoカンパニーだ。
なんでいきなりそんな無謀な、、、って話かもだけど、最初だからこそできるだけちゃんとしたところに所属すべきだと思うんよね。
これは、たぶん楽器とかスポーツとか学校とかにたとえるとわかりやすいかもしれない。
つまり、楽器やスポーツを始めるときに、ちゃんとした道具ではなくて、安物の中途半端なものを使うと、上達が遅いだけじゃなく、変な癖がついたりとかして、最初についた癖はその後もなかなか抜けなかったりするものだよね。
学校とかでも、地元の公立の中学とか高校とかで成績よかったりしても、大学で東京に出てきたら自分なんかより圧倒的に優秀な人がたくさんいて、地元で調子乗ってたのなんやったの?ってなるじゃん?
たまたま東京の全国区の学校に出てきたならば気づけるからまだ救いなんだけど、ずっと地元から出ないまま大人になったりすると、まさに地元じゃ負け知らず状態になって、自分の現状を勘違いしたまま突き進むことになりかねない。
だからこそ僕は地元を出るべきだと思ってるし、やっぱり日本の中なら一度は東京に出る経験をすべきだし、日本にいるなら海外に出る経験をすべきだし、アメリカに来たならニューヨークとかシカゴとかロサンゼルスで勝負すべきだと思う。
同じ理屈で、ゲイ産業やGoGo業界にも、大小あるけれど、やっぱり大きいところで挑戦したほうがモチベーションも上がるし、狭い世界で勘違いしないで済むし、実力もつくと思う。
日本にウリ専はたくさんあるけれど、やっぱり東京で在籍ボーイが60人とかいるお店はレベルが高いから自分が磨かれると思うんだよね。だから、高田馬場で一番のお店を選んだ。
田舎がダメって言いたいんじゃなくて、それは実力をつける練習の場としてはいいんだけど、高校野球にたとえるなら地方大会みたいなもので、そこから全国大会に出れば一気にレベルが上がるわけじゃん。
だからこそ、そういうレベルを早めに見ておくことはけっこう大事だと思ってるんだよね。
そんなわけで、ウリ専やエスコートのように今まで僕がやってきた世界ではなく、GoGoボーイという似てるようで中身はぜんぜん違う世界に挑戦するにあたって、なんとなくそれっぽいことやってる小さなところだと、挑戦するモチベーションが上がらなかった。
しかも現実問題として僕はデビューとしてはすでにぜんぜん若くないので、今後移籍したりとかして一歩一歩上がっていこうみたいな時間もない。
いつかはあのグループに、、、とかって言ってたら、そのころじじぃになっとるわ。。という話笑
というわけで、ニューヨーク最大のGoGoボーイの集団に無謀にも挑戦することにしたのだった。
だからこそ、書類通過しちゃったときは正直驚いたし、かなり緊張した。
そしてオーディション前は、絶対ムリだわぁ、、、とかなり弱気になったときもあった。
そうした精神状態だったのは、そういうわけなんだよね。
だから、合格してほんとうに感激したのだった。
こんなことがあるんだぁというのが、正直な感覚。
そんなわけで、はじめてのステージが終わり帰宅してから、現実感なくふわぁ〜としたまま翌週を迎え、一昨日の夜が2度目の参加だった。
冒頭に書いたとおり、会場は初回と違うところ。フロアが大きいので、GoGoは、30名近く踊る。
水商売はたいてい、最初にひととおり流れをざっくり説明されたら、あとは状況見て空気読んで上手いことやってね〜というものだ。そこからいろいろ吸収してのし上がるか、鳴かず飛ばずのままいつのまにかフェードアウトするか、そういうものだと思う。
言ってもウリ専業界の経験はそれなりに長いし、二丁目でも働いてたし、ニューヨークでエスコートもやってきたから、業界の雰囲気はわかる。その点は、変な焦りはなく溶け込めてるとは思う。。(自分が勝手に思ってるだけかもしれんが、、笑)
昨夜のステージは、バックに全面LEDが仕込まれてたりしてかなりカッコよかった。
そしてベテランGoGoのバキバキお兄さんたちがマジでハイレベルすぎるGoGoダンスとか、ポールダンスとかを次々と披露してるから、まさに圧巻だった。
そして定番ながらドラァグクイーンのショーもある。ドラァグクイーンの人は2人出演していて、その一人と閉店後に少し話すことができた。
僕が片付けをしてたら、
だいじょぶ?
と、日本語が聞こえたのだった。
あれ、たまたまかな?
と思ったのだけれど、その人は日本語でいくつか言葉を続けたのだった。
アメリカ人でアジア人の区別ついてないってよく言われがちだけど、僕はなぜか一発で日本人と見られることが多い笑
また元カレの話してアレなんだけど、彼に言わせると、僕はいわゆるイメージ通りの典型的日本人らしいのだ。
意味がよくわからないけど、髪型とか顔つきとか体型がそうなのだろうか。チビだし。。(ていっても最近の日本人男子は背もチソ⚫︎もデカいよね。DNAに突然なにがあったの?)
さて、そんなわけで、そのドラァグクイーンのダ⚫︎ちゃん(そう呼んでねって言われた)が、
日本のどこから?
と訊ねるので、僕は、東京だよと答えた。
すると彼女は、千葉に住んでたことがあると言うのだ。
なるほど、それで日本語がしゃべれるのか。
留学?仕事?
などと僕が訊ねると彼女は仕事だと言う。
そして驚愕の事実を知った。。
それは、彼女は日本で、東京ディズニーシーでシンガーをしていたらしいのだ。
マジでヤバくないか?レベル高すぎる、この集団、、、
なんで僕が受かったのか、いまだに理解できない。。
ていうか実は合格してないのに僕が英語を勘違いして勝手に行ってるだけなのか、またはほんとは落ちたのに現実を受け入れられなくて勝手に行ってるのか、もしくは、幻想の中でなったことになってるというパラレルワールドが展開されているのか、はたまたこのブログが単なる創作なのか。。笑(証拠として写真を載せたいところだけど、残念ながら写真や動画はフロアでは禁止されてる。いかがわしい空間だから、まぁそういうことよね。。)
なので、ニューヨークに旅行などでいらした際にはぜひ会場に遊びに来てね!
ちなみにニューヨークのGoGoバーとか興味あってもよくわからなくて敷居が高い感じしちゃうみたいな人とか、僕がニューヨーク唯一の日本人GoGoボーイとして優しくお迎えするので、システムのことも言葉の壁も心配せずに気軽に遊びに来てねー!(宣伝…)
さて、話を戻して、、
そんなわけで、自分でも寝ぼけてるんじゃないか?と自身に疑いの目を向けかねない今の状況なのだけれど、
一昨日の夜10時にたしかに僕は2度目の出勤をし、先週の日曜に友だちになったGoGo仲間のNくんともハグして話したし、僕はたしかにフロアのGoGoブースの台の上で、6時間踊り続けた。
そして翌朝4時に閉店となり、そこから雨の降るマンハッタンを、ポートオーソリティバスターミナルまで傘をさして歩いてきた。
途中、チェルシーという別のゲイタウンに差し掛かったとき、ひとりで歩いていた南米系男性に話しかけられ、
ペンステーションはこっちかい?
と聞いてきたので、
そうだよ、と答えた。
ペンステーションとは、ポートオーソリティバスターミナルへ向かう道の途中にある鉄道駅だ。
タバコちょーだい、と言うので一本あげ、しばらくいっしょに歩いた。
彼はチェルシーのゲイバーで飲んできて、これからブルックリンの自宅へ帰るらしい。
キミは?
というので、仕事終わったとこだよと、さっきまでいた店の名前を言った。
すると彼は、
地下にダンスフロアあるとこだよね?
と一発で言い当てたので、なんか知らんけど有名な店らしい。
たしかに、Stonewall Innというニューヨークのゲイカルチャーを語る上での歴史的ゲイバーがあるのだけれど、ここは観光雑誌にも載っていて、店の前ではわざわざ写真を撮りに来る人もいるほどの有名スポットなんだけど、僕が仕事してたのは、そのStonewall Innの向かいの店。向かいというか厳密には、真向かいに三角州みたいな植え込みがちょっとあって、その向かい側。
その地域一帯がまさにゲイカルチャー発祥の地だから、きっと昨日の場所も老舗なんだろうなぁという感じがした。雨の木曜なのに客入りもかなりあったし。フロアデカいし。
そんなわけで、幻想でも創作でもなく、たしかに僕はニューヨーク最大のGoGoカンパニーに所属したらしい。
バキバキお兄さんたちのパフォーマンスはマジで凄くて、それに追いつくには10年どころじゃなくて、そもそもDNAに刻まれた身体能力から塗り替えないといけないんじゃないかってレベルなんだけど、
とりあえずクビにならないようにがんばる……笑
そんなわけで、一言でまとめると、最高の夜だった。。
前回いろいろ教えてくれた姉さんはこの日もいて、隣で踊りながらまたアドバイスをしてくれた。
今回はアップテンポ目な曲がかかってたのでそれに合わせて踊っていたら、姉さんが、
もっとゆっくり踊るのよ、そうするとチップをもらいやすくなるから
と。
なるほど。。
素直な僕は即、ゆっくりめに動きを変えた。
すると、しばらくしてお客さんからパンツの隙間にチップを挟まれたのだった。。
さすがベテラン姉さんのアドバイスは有益すぎる、、、
動きが激しすぎると、お客さん的には気になっても近付きにくくなっちゃうらしい。
ゆっくりと誘うように、、、
マジで勉強になるわぁ。。。
別のGoGo仲間のHくんとも踊りながら仲良くなった。彼が僕の股の間に四つん這いで滑り込んできたので僕が彼のケツに股間を押し付けて腰を振っていたら、フロアを巡回してるセキュリティーニキに止められそうになった。。やりすぎはいかんらしい、、、笑(たぶん風営法的な細かな決まりがあるらしい)
Hくんはバキバキお兄さんというより小柄な可愛い系。小柄とは言ってもアメリカ人なのでそんなに小柄ではないけど。
ほかにはバキバキコワモテニキにも絡まれた。
コワモテニキはバキバキと胸筋を揺らしながら歩いていて、僕が踊っていると、
わて、今日何人の客に声かけたんや?
て感じのテンションで言ってきたので、
One…
というと、
そうか、One hundredかっ!!ははは。。
と皮肉を言って去っていった。
コワモテニキ、ほんまに怖いやないかっ!!
と僕は一瞬引いたが、こういうキャラがいるからこそドラマチックになるのだと思うと、テンションが上がった。
しかも、そのコワモテニキは、なぜか聴診器を首にかけてるという謎のコスプレスタイルで、どこからがプレーでどこからが地のキャラなのかわからない。。
その後、そのコワモテ聴診器ニキのことが気になったのでお立ち台から観察していると、ニキは客に対してもコワモテで、裏行くぞっ!みたいなノリで接客していたので、一貫性のあるドラマチックなニキらしい。
ニキに目をつけられた僕は、その後も何度か絡まれて怖かったので、営業が終わりに近づいたくらいの時間帯に、お立ち台の上からニキに満面の笑みを送ってみた。。
すると、コワモテニキは優しい笑顔を返してきたので、なんか好きになった。。笑笑
にしても、首にかけた聴診器が気になるので、こんど聞いてみたいと思うが、余計なこと聞いたら持ち上げられて投げられそうなので、あまり深くは聞かないようにしようと思う。人にはいろいろ事情があるものだ。。。
コワモテニキの力強いアドバイスもあり、その後何人かの客と絡んでみた。こちらから声をかける場合もあるし、向こうから話しかけられる場合もある。
僕がお立ち台で踊っていると、背後から背中を叩く人がいた。
その人はカウンターで一人で飲んでたお客さんで、齢60ほどに見えた。どうやら常連さんらしく、
キミ新しいよね?
みたいな感じで話しかけてきた。
そして彼は僕にこう言った。
GoGoのアジア人は見かけないからキミみたいな人が入ってくれて素晴らしいことだ!
これぞニューヨークなんだ!
と。
マジで感動した。
それなんよ、僕がやりたいことは。
前にも少し書いたけど、かつてはニューヨークにThe Webという名前のアジア系のGoGoバーが59丁目あたりにあって、僕はその店が好きだったし、そこで働くことを夢見た。だがその後閉鎖になってしまって、それ以来アジア系の店はないし、GoGoボーイは南米系、白人、黒人のバキバキお兄さんばかり。
バンコクのGoGoバーとか東京のウリ専みたいな店、ニューヨークにほしいやん!
という僕の個人的な願望でもある。
ニューヨークのGoGoボーイも巨大なバキバキお兄さんだけじゃなく、僕のようないかにも日本人的なチビもありなんやなーって空気になったら、もしかしたらニューヨークのアジア系GoGoボーイも増えるかもしれないし、バンコクみたいなキャラとか東京みたいなキャラも増えるかもしれない。そんなことを何気に僕は夢見てたりもする。そして将来的にはぜひThe Webのような店を僕自身が開きたい。そのための修行だ。
そんなふうにどこかで考えている僕としては、そのお客さんに期せずして言われたその言葉には大いに感動した。
これぞニューヨークだっ!
という言葉が刺さった。やっぱりニューヨークが好きだ。。特に夜のニューヨークは最高だ。
その日の営業は午前4時までだった。
バンコクのGoGoバーと決定的に違うのは、ニューヨークのGoGoバーには店外指名がない。
これは法的な問題で、タイは売⚫︎が実質的に合法だけれど、ニューヨークはNG。ちなみにタイも合法なわけではなく、刑事罰がなく容認という立場であって、店側は賄賂などで当局と繋がることで摘発を免れているものと思われる。
アメリカではすべての州で違法というわけではなく、ラスベガスのあるネバダ州の一部の地域のみ、アメリカで唯一売⚫︎が合法だ。(ただし、ラスベガスは違法)
そういうわけで、ニューヨークのGoGoバーでは店外指名はできない。
なので、営業が終われば普通にみな帰っていく。営業途中であっても、今日はもういいやという感じで途中で帰っていくボーイもいる。
この日仲良くなったHくんとは、閉店の4時までお互いフロアに出ていたので、仕事終わりに連絡先も交換した。。(同業者の特権……笑)
そして別れ際、Hくんは、
キミはほんとうにいいパーソナリティだから、、
そのままでいてね!
と言って去っていった。
前段は普通に嬉しかったのだが、後段が気になった。Hくんはよく笑う人で、何か言葉を発するたびにハハハと笑う。
けど、
そのままでいてね!
と言ったときだけ笑わなかった。彼の瞳にどこか寂しげな影が映った瞬間を僕は見逃さなかったのだ。
一体、彼の過去に何があったのだろうか。
仲の良かった仲間に裏切られた経験とか、あったのかな……
などと勝手に想像してしまったが、、
人には人の事情というものがある。むやみやたらと詮索するものではない。
夜の世界にはドラマがある。
だから僕は、やめられない。。