僕の住むハートフォードは寂れた地方都市にも見えるんだけど、その懐はかなり深い。


2年住んで振り返ると、なんだかんだこの街を使い倒していて、この街と出会ったことは偶然じゃなく運命なんじゃないかとさえ思う笑


コネチカット州は、元彼の出身地だったから、彼の実家に遊びに行くときなんかに車を運転して一緒に行くことが何度かあった。


そんな縁もあって、ニューヨークでの同居生活を解消したあと、僕がひとりになってさぁどこに住もうかと考えたときに候補に上がったのだった。


ニューヨークに比べれば家賃も少しは安い(とはいて東京とは比較にならないくらい高いには高いが)


彼の地元は僕が住むことになるハートフォードよりもニューヨーク寄りだけれども、街の雰囲気はなんとなく似ている


ハートフォードは、コネチカット州の州都。腐っても州都である。


なんだかんだ、機能は一通り揃っているから慣れれば住みやすい(慣れるまではそれなりに強烈ではある笑)


ちなみにハートフォードは、アメリカ人の中でも評判は悪い笑


かつてはコネチカット川の交通の便を生かして武器や航空部品などの製造業として栄え、その後は保険の都として金融で栄えたそうな。


しかし1900年代後半にかけて廃れていき、今では全米での犯罪統計ランキングで上位入賞を果たす街で、パークストリートと呼ばれる目抜通りを少し入ると、昔ながらのギャング的な人たちがいたり、発砲事件も多かったりと、まるで映画の世界のように賑やかなのだ。(僕はそこも気に入ってたりするが)


YouTubeでハートフォードを検索すれば、「住んじゃいけない危険な街ランキング」みたいなアメリカ人YouTuberの動画がたくさん出てくる笑


そして実際に街はなかなか香ばしい。歩いてる人も香ばしい。。


さて、そんなハートフォード。しつこいようだけど、腐っても州都なのだ。


最初の頃はどうしたこったいと一瞬思ったが、自分で言うのもなんだけど、僕は順応性に関してはそれなりに自信がある。今となってはハートフォードを離れることをちょっと想像しただけでも躊躇いを否定できない。


この街の懐の深さは、ゲイカルチャーにも及ぶ。


ちょうど今月あたま、ハートフォードのPRIDEイベントがあったから行ってきた。規模は小さくてびっくりするくらい地味なんだけど、地元らしく平和な雰囲気で悪くなかった。



こちらが実際の今月の写真

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ていうか、ハートフォード周辺のPRIDEイベントは謎に多くて、真夏のシーズンには、お隣のWest Hartfordという街でイベントが開催され、こちらは綺麗なショッピングモールの広場に特設ステージが設けられ、ドラァグクイーンのショーなども炎天下の真昼間に執り行われ、かなり盛り上がる。


ドラァグクイーンと言えば、僕の家の近くにハートフォードでほぼ唯一と言ってもよいゲイバーがある。


田舎のスナックかと思いきや、実はここはかなりの老舗ゲイバーで、本格的なステージもあり、敷地も比較的広い。


老舗というだけあって、ゲイバーというよりは昔ながらのキャバレーといった様相を呈している。


このブログでも書いたと思うけど、去年の12月に行ったときも、ドラァグクイーンのショーをやっていて雰囲気も楽しい。お酒も安い。東京やニューヨークを含め、数あるゲイバーの中でも、僕的にはここはかなりトップレベルに好きなお店なのだ。


そのとき行ったのは、とあるイベントがあると知ったから。


それというのも、アメリカにはLGBTQ専用チャンネルがケーブルテレビにあって、その中の超人気番組で、Rupaul’s Drag Raceというのがある。


これは僕がアメリカに最初に来た頃にはすでにやっていた気がするから、けっこう長くやってる人気番組なのだ。


内容は、全米からドラァグクイーンが集まり、ショーを競い、最終的にチャンピョンが決まるというもの。


実は去年、そのファイナリストがコネチカット代表のドラァグクイーンで、その人の凱旋ショーがハートフォードのそのゲイバーであるということだったので、それを見に行ったのだ。


地元の人たちで大盛況だった。


このゲイバーでは、毎年ドラァグクイーンのトップを決めるショーレースも独自に開催されている。


ゲイカルチャー以外にも、ハートフォードの懐はまだまだ深い。


去年、僕はフライトスクールに通ったのだけれども、その訓練飛行場も自宅から車で7分ほどの場所にある。なにせ地方都市なので、人も多くなくこぢんまりとしていて通いやすかった。


買い物に出るときはどこも広大な駐車場を持っていて、当然タダ。


ジムも月額25ドル程度払えば使い放題で、車で10分程度。


ニューヨークやボストンのような大都会は、ちょっと買い物に行こうにも駐車料金は大変なことになるし、レジには長蛇の列ができている。一方のハートフォードで何かを待つということはほぼない笑


渋滞もない。満車もない。レジ待ちは夕方のコスコでちょっと並ぶくらい。とはいえ高が知れている。


その気になればハートフォードライフの充実度は半端ない。ニューヨークに住んでいたら、まさかフライトスクールになど行けなかったと思う。


そんなわけで、僕は最近、かねてから興味のあったポールダンスをやりたいなぁと思い、衝動的にYelpで検索してみたのだ。


すると、評価の高いスクールが出てきて、ウェブの情報も充実してるし、口コミも上々だし、雰囲気もよさそうだった。ところが、場所は車で30分くらいのお隣の州であるマサチューセッツ州だった。


けどまぁ、30分くらいならいいかなぁなんて思ったくらい直感的に気に入ったのだ。


そんな中、さっそくレッスンを予約してみようと思って調べてみたところ、つい先月、ハートフォードにも支店がオープンしたとあった。


住所を調べてみたら、なんとうちから車で6分の場所だったのである。


そんなに近いとは知らずにただ雰囲気がいいなぁと思って気になってたのに、うちの激チカに2校目が最近オープンしたとなったら、もうほとんど運命的なものを感じ、即申し込みをしたのだった。


料金的にも良心的。ただ、案内の画像に出てくるのが女性ばかりだったので、念のためメールで男も大丈夫ですか?と聞いてみたところ、もちろんよ!と即レスが来たので安心したのだった。


メールの対応も親切で、僕はこのスクールが一発で好きになった。


さて、初回のレッスンに参加したときのこと。


住所をGoogleマップに入れて現地に行ってみて衝撃を受けた。


それは、いつも走る高速道路上から看板が見えるアートスクールのビルで、実はハートフォードに引っ越してきたばかりの頃からこの看板が気になっていて、いつかあんなところに通えたらいいなぁなどと漠然の思っていたのだ。


まさかポールダンスのレッスンでこのビルに通うことになるとは思っていなかったが、結果的に2年間に渡る漠然とした憧れを果たすことになった。



ちなみにこれがその看板。高速道路上から目立つのよ。

↓↓




駐車場入ってくとこんな感じ。ハートフォードらしい雰囲気。




そして、スタジオに入ると僕は衝撃を受けたのだった…


インストラクターの先生が、美しすぎる…



僕はメールで、男でも大丈夫ですか?と尋ねたのは、ウェブなどの写真が全員女性だったからなのだけれど、インストラクターの先生も女性なのだとばかり思っていたら、どうやら男性らしい。


にしても、今まで見た人間の中でこんなに美しい外見と動きの人は見たことがないと言っても大袈裟ではないくらいの衝撃を受けたのだった。



なんという世界なんだろう。


そして、この人はいったい何者なのか…



初回はとにかくイケメンという印象でレッスンを終え、翌週もレッスンがあった。


相変わらずイケメンだったし、2回目ともなると少し打ち解けて、前回よりも丁寧に教えてくれた感がある。いや、それにしても美しい。ジェンダーレスとはこのことかと初めて実感した気がした。


先生のことが気になったので、スクールのウェブを再び見て、インストラクターの紹介ページを眺めてみた。


ところが、やっぱりそこには女性インストラクターらしき人しか載っていないように見えたのだ。


けれど、念のため一人一人クリックして紹介文を読んでみることにした。


すると、インストラクターの一人をクリックしたとき、写真をよく見ると彼のようにも見えたのだ。


インスタがあったので見てみたところ、やはりその先生だった。


女性の格好もするし、男性の格好もする。女性にも見えるし、男性にも見える。さっきも言ったけど、これが本当のジェンダーフリーなんだと思った。理屈じゃなしに、その人の佇まいはエレガントそのもので、性別などというつまらないカテゴライズにハマらない存在なのだ。


インスタの画像を見ながら、魅力に引き込まれていった。ほんとうに言葉では表せないけど、あえて表すならエレガントそのもの。彼と言うのが適切か彼女と言うのが適切か、どちらでもないような気がする。


そして一番衝撃的な投稿があった。


それは、さっき紹介したハートフォードの老舗ゲイバーで毎年開催されているドラァグクイーンのレースで、先生は数年前に優勝していた人だったのだ。



ニューヨークのゲイバーやクラブなどでも、数々のドラァグクイーンショーを見てきたけれど、正直ピンときていなかった。言葉は悪いけど、ただの女装でしょ?くらいのイメージすらあったし、宴会芸のような騒々しいイメージもあった。そのイメージが、僕の中で、一瞬にして180度大転換したのだ。


その先生のショーの画像や動画は、ほんとうにエレガントで美しく、それでいて野性的で、強く優しく鋭い眼光を放ち、心の底にある寂しさとそれを埋めて生きてきたエネルギーに満ち溢れていた。



なにしろ、先生本人を見ているから、そのスッピンの美しさとカラダの美しさと所作のしなやかさは僕が過去に出会った人類の誰よりも突出していて、ドラァグクイーンだと知らなかったけれど、独特のオーラに圧倒されていたのだ。



僕はこれまで、ドラァグクイーンという存在を大いに誤解していたのだと思った。こんなに素晴らしいショーに出会ったことはなかった。というよりも、もしかしたら僕はゲイカルチャーそのものをずいぶんと誤解していたかもしれない。


僕は新宿二丁目でゲイキャリアを始め、その後高田馬場を経由して、ニューヨークへとやってきた。ニューヨークではミッドタウンに当時事務所を構えていたCというウリ専のお店に所属した。それなりにゲイの世界に足を突っ込んで来たつもりだったけれど、ゲイカルチャーに対する僕の理解は到底足りていなかったのかもしれないと痛感した。


先生の、全身全霊に溢れ出る美の表現は凄まじいものがある。


こういう人をゲイというのだろうし、ジェンダーレスと言うのだろうし、本当の深い意味でのLGBTQカルチャーの体現者なのだと思った。


心から尊敬する人が、また一人増えた。







ちなみに、ポールダンスは楽しすぎるから、けっこう真面目に続けてる。






これまで、いろんな誤解をしていた。


ひとつひとつ、できるだけ振り返って、自分の頭の中を整理してみたいと思う。




とにかく、衝撃的な出会いだった。。


ハートフォードの不思議な引力。