お嫁入りに持ってきた鏡台の引き出しの奥から祖父からの手紙が出てきた。

新婚旅行の餞別として貰ったらしく、お年玉袋のような袋の中に小さく畳んで入っていた。

手紙というにはお粗末な大学ノートの切り端しに走り書きした祖父の懐かしい文字…。

どんな状況で貰ったか…もう既に記憶に無い。


気にくわぬ

風が吹くで

あらうに

やなぎかな


此の歌を わすれぬ様

メモしておけ


これからさき 生きて行く

日暮の中で ほがらかな

さわやかな風ばかり ふかぬので

やなぎの如く さからわず

なびいて くびをたれて

生きて行くことが

たいせつである。


少しだが

旅行の餞別の気持ち

俺の気持ちだから

だれにも云うことはない

お土産の何もいらない


25年も前…父が早くに亡くなって父代わりのような想いで、私の門出を心配してくれていただろう祖父の手紙。


亡くなってこの世の人ではない祖父の願い…

今になって、此の言葉にこめた想いを痛いほど感じて…胸が熱くなった。


未だに生きる事に不器用で、いつも肩に力が入っていて…

ギクシャクしている私をどんなにか、嘆いているだろうなあああ…と思いながら…。


心底、あったかくて優しかった祖父を想っていた。