息子が幼稚園の時、親子遠足があった。

バスの中で、『お父さん、お母さんを動物にたとえると何ですか?』というのがあった。

ひとりずつ園児が答えていく。

『ボクのお母さんはキリンです。』

そうすると、キリンと言われた背の高い痩せ型の『ボクのお母さん』が起立して照れたようにお辞儀をした。

後ろのほうの父母が居る辺りから…納得とも、感心とも取れるような、どよめきと溜め息がもれた。

そんなふうにゾウさんやライオンさんやリスさんやキツネさんが立ってはお辞儀をした。

フムフム…何だかとっても納得---子供たちって幼いながら、父母をよく観察しているものと感心した。

果たしてウチの息子は、私をどんな動物にたとえるのだろう…。

カエルとかトカゲとかヘビとかの爬虫類系は止めてほしいなああああ…

とか、カバやウシよりかヤギとかひつじのほうがましだなあ…

とか色んな思いが頭の中を行ったり来たりした。

ちょっとドキドキしながらそわそわした気持ちでその時を待った。

いよいよウチの息子の順番が廻ってきた。「ハイ!タカ君…」と呼ばれた息子は元気のいい声ではっきりと言った。

『ボクのお母さんは…サルです。』

…  ・・・  …   ・・・

(うえええええ…猿かよ~…私の何処が猿をイメージする…ってんだ???)

複雑な心境の中で私は起立して曖昧な笑顔を作ってお辞儀をしていた。

息子が家から巣立つ今になって…私は、時々…その時の光景を思い出すわけで…

『サルです。』と言った息子の真意を聞いて見たくてしようがないわけで…。

それでも、なんだかコワくて…、未だ聞くに聞けない疑問として私の中にある。

3年保育の幼稚園の入園式で記念撮影のとき泣いて園児の中で独りだけ私に抱っこしたまま写真を撮った。

小学校に入っても『泣き虫ですもんねえええ…』とPTAのたび先生に云われた。


そんな息子も大学生。4月6日入学式と共に一人暮らしを始める。