6~7年前から使っている電子レンジが
スイッチを入れた途端にブレーカーが落ちてしまいました。
購入先の電気工事屋さんに診てもらうと、
「メーカーに修理に来させます。」ということなので
お願いすることにしました。
次の日
メーカーから来た修理の人は
内部を診てこう言いました。
「インバーターが壊れているので4~5万円掛かります。」
「えっ5万円?・・・・・・どうしよう・・・・・・」
私が考えていると、彼は言いました。
「5万円じゃあ、この電子レンジは買えませんよ。」
「・・・・・・・・・」
当たり前だ。
「この電子レンジは、当時うちの会社で出した製品の中で1番良いクラスのものです。」
「・・・・・・・・・」
知っている。
「家電は主人に決定権があって私には決められないのでぇ」と、ぐずぐずしたら
「奥さん、この手の電子レンジを買うお宅には2種類あるんです。」
「・・・・・・・・・・」
「1つは、本当に料理に毎日使ってくれるおうち。
もう1つは、お金持ちのお宅が電子レンジを買うときに『何でもいいから一番良いやつをくれ』と言うんです。」
たぶん、その話の続きは
「ご主人が家電を選ばれるお宅は後者が多いのです。」に違いない。
私は彼を黙らせようと早口で言いました。
「うちは大人数なんで毎日使ってますけどね、とにかく、私一人では決められないので
主人と相談して決めます。あっ、今、電話します。」
即、「保留!」との答えが返ってきました。
「保留にします。」
「えっ、保留?」
「はい保留で」
「保留って・・・・・・・・」
洗って伏せてあったお椀を拭きながら私はもう一度言いました。
「返事はすぐにできないので保留にします。」
「・・・・・・・保留と言われてもねぇ・・・・・」
修理のおっさんは苦笑いを浮かべて何度も「保留って・・・・」と言っています。
わたしは、
大皿をキッチンカウンターに
「ドンッ」と投げるように置きながら言いました。
「5万円て大金ですよ。」
この人のような「この手の電子レンジを買うお宅には」といいきる何の足しにもならない話を
ぺらつかせる人間て、奥さんの了承なしに5万円の買い物するのだろうか。
しないだろうな。
おっさんの顔を見ながらそんなことを考えていると
「じゃ、じゃあ、修理はえ~と、
修理は1回止す、ということにしますね」
おっさんは忙しく工具類を片付けるとそそくさ帰っていきました。
私は「よっこらしょ」と
電子レンジを棚から退かしました。
重圧な電子レンジが置いてあった場所がぽかっと空いて、
そこにスース―した春風が吹き抜けました。