地球を見た男 | ♪tamla beats♪'s room

地球を見た男

バルセロナで知り合った日本科学未来館の学芸員のMさんからご招待をいただき、昨日、日本科学未来館『65億人のサバイバル展』の内覧会・レセプションに行って来ました。

“科学”という普段の私には接点のないキーワードですけど、同年齢で感性的に共通項の多そうなMさんからのお誘いということもあり、科学館を訪問してみました。

そこでの思いもよらない再会が幾つかあったのも楽しかったのですが、何といっても、科学未来館館長の毛利衛さんと挌闘家・須藤元気さんのトークが、最高に面白かった!

65億人のサバイバル』ということで、「現代を生き抜くために必要なもの」という切り口からタイトル・マッチが始まり、性格、思考回路全てが正反対の二人が30分という短い制限時間の中で、激論を繰り広げました。かなりスリリング!!!

まずテーマに対して、元気さんは「愛」、毛利さんは「正露丸」と答えました。

この両極端な回答が象徴するように、元気さんはロマンチスト、毛利さんはリアリストです。ただ、単純にそれだけでは済まされない。この相対する二人のトークは、あたかもギリシャ哲学の哲人たちが行っていた問答のように、スリリングで面白かったのです!

毛利さんがリードするその対話の方法をみていて、私はソクラテスの問答法を思い出しました。

毛利さんは対話を通じて相手の持つ考え方にひっきりなしに疑問を浴びせかける。

「どうしてそう思うのですか?」

「なぜそれを信じるのですか?」

元気さんに発言させ、元気さんの原則を引きずり出す。その後、その原則の反対を叩きつけてみせる、その皮肉っぽい技は、まさにソクラテスそのもの!

ソクラテスの問答法のひとつに、イロニーと呼ばれる方法がありました。イロニーは皮肉と訳されることが多いですが、話し相手から教えを請うように見せかけながら質問を浴びせかけ、思いがけない結論を導き出し、話し手を矛盾にまきこむことによって、ある知識について当人がもっていると思いながら,実はそれをもっていないことを示す.というやり方です。

毛利さんは、その方法論によって、相手が蓄積していると思っている知識は単なるデータや情報に過ぎず、その真実と根拠を見極めることの大切さを説いていたように思います。

そして、それに、科学は有効な手段であるということをおっしゃられていたのではないかな?と私は感じました。

毛利さん曰く、

科学とは、『事実に基づいて、だれもが納得できることを基礎に、論理的に矛盾がないように築き上げ、証明していく方法論、手段』だそうです。

ただ、私は矛盾があってもいいじゃないか?と思うんです。

だって、人間が持つ“夢”や“希望”、“信じる心”にはいつも矛盾が付きまとうものだと思うんです。そして、それを持つことこそが人間が人間たる由縁だと思うんです。

毛利さんは、宇宙の彼方から地球を見て、地球は特別ではない、人間は特別ではない、私達がいなくても地球は存在するのだ、と感じたそうです。確かに、私達は宇宙共同体の中の一部に過ぎないということを知ることは大切だと思います。

だけど一方で、余りにもリアリズムを押し付けるような毛利さんの問答法に、私は宇宙から地球を見てしまった毛利さんの孤独と切なさを感じてしまいました。彼は、もはや夢を奪われてしまったのでは?目に見えないものを信じられなくなってしまったのでは?と・・・。

真実はどうであれ、私は目に見えないものを信じる心も必要だと思います。

我々が想像力を働かせて思い浮かべる宇宙、そしてその中での私達人間の存在意義を問うこと。何を信じて、どう生きていくのか?

毛利さんにとって、目に見えないもの、輪廻転生とかカルマとか、そういった宗教観はないみたいですけど、例えば、輪廻転生を信じて、生まれ変わった時にまた再び幸せを掴みたいと思って、現世で徳を積もうと必死に生きる人がいたっていいんじゃないかな~と思うんです。

とはいえ、私も結構、現実主義なんですけどね・・・

要は、実証出来るものと出来ないものの中に真実や物事の本質をどう見極めて行くのか。そのバランスが、サバイバルの秘訣になるような気がしました。

久しぶりに思考した刺激的な一夜でした☆