俺は姉貴に世話になった家を出て、ナオさんの家に転がりこむことにした。

ナオサンに事情を話した。

ナオサンは、見た目は怖い人だけど、凄く心は広くて俺を本当の弟のように慕ってくれていた。

『真吾!よく決めたな。お前、かっこよすぎるやんけー!男の中の男だ!金はねー俺がいうのもアレだけど、ここにいれば良い!お前が好きなだけな!』

『ありがとうございます・・・・・・。』

俺は、思わず号泣した。俺の居場所ができた。

『おいおい、いませっかく男の中の男って褒めたんだから、泣くなよ。女かお前は。家には女は入れないっていう決まりがあるんだから、いれねーぞ!』

初めて聞いたよ・・・・。ナオさん。

ちょっと心のなかに温かいものが吹いた気がした。

それから、俺のナオさんの家での第二の人生がスタートした。

今まで、高校の学費は全て姉にだしてもらってたから、姉と離れた今、俺の財布の中の2320円じゃ高校もいけるわけもなく、高校を中退した。

俺は、夢とか希望とかこの頃は良く分からなくて、とにかく金さえ沢山あれば生きてける、俺はできればこうしてナオさんの家で気のあう仲間と生きていきたい・・・そう思ってバイトを始めることにした。

昼間はガソリンスタンド、夜は今のまま給料の良い居酒屋でバイトをすることにした。

高校を止め、バイト生活の俺は、世間から見たら完璧に落ちこぼれとしか見られていないのかもしれない。

でも、俺は高校の時よりも明らかに生活に充実を見つけていた。

このころ、俺はナオさんのバイクで2ケツして道路を吹っ飛ばすことを覚えた。

居酒屋のバイトをおえ、いつものように帰ろうとしたある日、『よー!お疲れさんやったなぁ!』ナオさんだ!

『どーしたんすか?』 『いや、たまには俺のデカイバイクに乗せたろと思ってな!』

ナオさんはそういうと俺に自分が被ってたメットを投げ渡し、俺を後ろに乗せてくれた。

俺の小さな原付はナオさんが乗せてきた、駿が変わりによく乗って帰ってくれた。

藤川駿平。ナオさんの溜まり場の常連で俺よりも2つ上の19歳だった。

駿は、大工の見習いをやっているなど、真面目な不良だ。ただ、髪の色は銀色で鼻にピアス、首に竜と蛇の刺青をしている。見た目は怖い。

こんな風に俺は、ナオさんと2人で風をきりながら家まで帰ることが日課になっていった。

ナオさんの背中は温かく、大きかった。俺はあまり記憶のない親父と少しずつナオさんを重ねていた。

だから、ナオさんには何でも話せた。これからの事、俺はどうするべきなのか?とか、女のこととか、とにかくナオさんとたくさん話してしたかった。


・・・。


そして、あの日もいつもと同じようにナオさんは居酒屋まで迎えに来てくれた。

しかし、駿の姿が見当たらない。

『お疲れ~!』 『うっす!、あれ、駿はどーしたんすか?』

『アイツな・・・俺、喧嘩してしまったん。俺の家に女連れてきたから、女連れ込むなや!って言ったら。駿の女が泣いてしもうて。なんか俺が更にそんなんで泣くなや、アマ!って怒りのままいうてしもうたんよ。』

『そうなんですか・・・。』

ナオさんがそんなに怒ったところは見たことがない。だから、想像つかなかったが、少し不安になった。

でも、ナオさんは笑顔で、『ほな、今日はお前の愛車はここに留守番やな、いくで!』いつものナオに戻っていた。


違う・・・。


ナオさんの後ろに乗って気が付いた。きっと駿のこと気にしてるんだろうな・・・。

ボーっとして何回も信号無視していた。大丈夫かな。

とにかく話しかけても、『・・・ん?なんていうた?』の繰り返しだった。俺の話もうわのそらになっていた。

いつものカーブか続く俺らの大好きな道・・・。

ナオさんはカーブが近づいているのに、スピードを落とす気配がない。

『ちょっ、ナオさん!ナオさん!カーブ!!!』 『・・・ん?』

『ナオさん!カーブ!!』 『あっ!あーーーーー!!』


バイクは正面のガードレールに激突。

そのまま俺らは別々に道路にふっ飛ばされた。


『・・・・・・ナオさん・・・・。』

俺の居場所は、それきりナオさんの家である溜まり場になっていった。

ナオさんの団地から、学校までは、自分の家よりも近かったため日が経つにつれて、

家には帰らず、ナオさんの家から通うようになっていった。

姉のことも、気になっていたが、ちょうどその頃、姉に3つ上の彼氏が出来ていた。

もとは、姉がママをしているキャバクラの常連だったらしいが、次第に姉と付き合うようになったらしい。

彼氏の名前は、五十嵐康太。

高学歴のサラリーマンで、どう考えても姉とはつりあわないように思える。

でも、姉が好きになった人だ、間違いないだろうと2人を認めていた。

五十嵐さんは家に頻繁に来るようになっていた。姉と一緒に帰ってきて、家から会社へ行くようになっていた。

姉と俺の部屋は別であるが、家が古い為会話は筒抜けだった。

『玲子(姉の源氏名)~早く~』 『はいはい』 そういうイチャイチャした会話が常に聞こえてきた。

『玲子、いつになったら結婚してくれるんだ。』 『それは、当分無理ね。』

『やっぱり真吾くんか?』 『・・・。』

『彼だって来年には18歳になるし、高校卒業だ。もう1人で自立できる時期だろう。もう、姉の力を借りずに生きていけるだろう!』 『自分は、大学まで、ママパパにお世話になった身でしょ?何が分かるのよ!!』

『あーそうかい!俺のことそういう目で見てきたのか?じゃあな!』

そういって五十嵐さんは出て行ってしまった。

追いかければ良い・・・。でも、追いかけても、まだ俺がこの家にいる限り姉を縛り付けるだけだ。。。

何も出来ないって思った姉は、ただ、開けっ放しの玄関で泣きじゃくるだけだった。。。


姉は、それからまるで抜け殻のようになった。

俺は、何もしてやれなかった。

唯一できたこと。。。



『姉貴へ

今まで、育ててくれてマジありがとう。

俺は、何にもできないクソ生意気な弟だったけど、姉貴の弟でよかったっておもってる。

ホントありがとう。

幸せになれよ。探すなよ。

                               真吾 』


精一杯手紙に書いた。

頭わるいし、かっこよい言葉も分からない俺にはこうして手紙を書いて、家をあとにすることしか出来なかった。


そして俺は、家を出た。。。

ありがとな。今まで。。。



俺の名前は大川真吾。

3日後にようやく成人式を迎える。。。

しかし、ここまでくるまでに凄く、凄く心が強くなった。

君に見えてるかな。。。聞こえるかな。。。

僕は立派になりました。。。


3年前の終業式の前日。

俺はクラスで一番仲が良い『原野幹人』にさそわれて、あの溜まり場デビューを果たした。

俺は10歳離れた姉と2人暮らしで、両親は俺が小学校1年生のときにギャンブル好きの両親のせいでうちは破綻し子供2人を残し行方不明になっていた。俺は幼すぎて何がおきたかわからなかったが。。。

姉にあとで話をきくと、悲惨な生活であったようだ。17歳と7歳の姉弟がたった2人で親の借金を抱えて生きていくのは不可能だっただろう。姉は親戚の家に何件も頭下げて、弟だけでも・・・と言ったが親は親戚中からも借金していたのだろう。。。どこの家も話を聞く前に戸を固く閉めてしまった。

どんなに寒くても、家がないから、友達の家にお世話になったり、時には公園のベンチにお世話になるときもあった。もう、無理だと思った姉は施設に俺を預けようとしたが、どうしても出来なかったという。

最後にあたった家のおじさんが運良く『君達をお世話するわけにはいかない。世間的にも、近所付き合いってのがあるから、いきなり家なき子が2人もうちに来たとなると印象が悪くなる。だから、借金はおじさんが払う。だからこれを持って生きていってくれ。本当にすまん。』といって封筒に約20万円をいれくれた。

おじさんの言葉は子供に対していうようなことじゃなかったかもしれない。しかし、俺らにとってはそんなことなかった。金こそすべてで。とにかく一生懸命生きた。

姉は後に高校を中退し、高収入を得られるキャバクラの仕事を始めた。

そこのママさんが親切な人で、アパートが借りられるまで、裏の小さな物置を貸してくれていた。そこで、俺は姉の帰りを待っていた記憶がある。。。

姉の生活と俺の生活は全く真逆なものであり、姉を待っていたとはいえ、いつも先に寝てしまっていた。

しかし、あるときたまたま、目が覚めていて、姉を驚かそうと寝たふりをしてまっていた時があった。

でも。。。驚かすことは出来なかった。姉は帰ってくるなり、布団に倒れこみ泣きじゃくっていた。

そんな日が何日も何日も続いた。幼すぎた俺は正直わからなかったが、今となってはなんとなく分かる気がする。キャバクラという仕事は華やかだけではない。裏には様々な苦労もあるだろう。そんな苦労を17歳で必死に背負っている姉の泣き顔を見て、俺はいつか姉を守りたいと心に誓った。

でも、出来なかった・・・。

姉は自分のぶんも行ってほしいと高校も行かせてくれた。しかし、頭が悪く、集中力がない俺は受験に失敗し、滑り止めにうけた県内でもバカ学校で有名なF高校に入学することになった。

F学校というと、俺のように受験に失敗したやつ、不良、おちこぼれといった生徒で占める学校で有名だった。

だから、近所の評判も悪かった。

更に運わるく、F高への道は二つに分かれる道があり、右側にF高校、左側に、小中高一貫のお嬢様がいくS学園があった。だからその道付近ではF高の生徒はいつもしろい目で見られることが多かった。

S学園の生徒には快く挨拶をする近所の人がF高の生徒には鋭い悪口がこそこそとぶつけられる。

『よく、あの制服をどうどうと着て歩けるわね。』、『俺が親だったら、恥ずかしくてF高にはいかせねーな。』


『・・・何が悪い!!』


入学にてすぐは凄く恥ずかしい気持ちになっていつも制服を隠すようにクソ暑い夏でも『パーカー』を羽織って、

登校していた。しかし、それが、反発する気持ちに変わり、髪を派手にし、ピアスをあけ、バイクを乗り回し、

酒を飲み、今にいたった。


そして、幹人に誘われ、薄暗い団地の一室にある溜まり場へ今入ろうとしている。

『ういーす!』幹人はいつもどおりといった感じにくつを脱ぎ捨て、入っていった。

『真吾!早く入れよ!!』、『う、うん!』

中はタバコくさく、少し、緊張した。。。

『お前が新人か!俺、ここの住人の直人。みんなナオさんって呼ぶけど、好きなように呼んでやってくれ!』

『あっ、俺は真吾って言います。よろしくっす。』

『じゃぁ、シンだなぁ!よろっ! あ!他のメンバーを紹介しとくわ!こいつが駿、でその隣が、廉、で、・・・』


というふうに怖そうなおにいさん方を紹介してくれた。

俺は初めは緊張して、『よろしくっす!』っとしか返せなかったが、俺と幹人のほかはみんなF高の卒業生としってなんだか居心地がよく心強くなっていた。

初めて、そこでたばこも覚えた。うまいもんではなかったが、これでみんなの一員だと思うとすんなりできた。

それで、俺は彼らに不良にしてもらった。

不良でいることが自分の誇りに思えていった。。。