昨晩見たNHKドラマ「メイド・イン・ジャパン」は面白かったです
まさに中国の圧倒的な国力に押されて右往左往している今の日本、まさにそのことを象徴する日本の大手家電メーカー「TAKUMI」が主役の経済ドラマです。
本業のテレビが売れなくなり、会社存亡の危機に陥った「TAKUMI」は、3ケ月以内に5,000億円を調達しなければメインバンクからの融資も受けられず、倒産への道をまっしぐらに突き進んでしまう。
テレビを観た多くの人がある特定の日本企業を連想したのではないでしょうか?
唐沢寿明演じるTAKUMIのエリート営業統括部長が会長命により、会長直属の会社再建グループの責任者に任じられるところからこのドラマは始まります。
極秘の再建チームメンバーを前に唐沢寿明が発した台詞が印象的でした。
「なぜ、私たちが選ばれたのですか?」
と問うメンバーに
「君たちは親しい仲間がいない。いわば自力で生きている企業内アウトローだから。そして、この私もそうだ。」
まあ、正確な台詞ではありませんが、そんなことを唐沢寿明が述べるのです。
「仲間が多いやつにこの仕事は向かない。なぜならば、仲間が多いやつは情に流されるから。」
企業内アウトローならば、情に流されることなく非情な決断ができる。
要はそういうことです。
単に仲間から外され、仕事で孤立しているダメ人間ではなく、自分一人でもやることはやって実績を残している人たちを企業内アウトローと定義しているのですから、そこんとこ誤解のないように願います。
これはあくまでも企業内のことですが、自分自身の人生に例えれば、歳を重ねるごとに自分一人で生きていく力を高めていかなければならないという気持ちが強くなってきました。
例えば史上最高齢(75歳)で芥川賞を受賞した黒田夏子さんは、受賞のコメントの中で次のように語っていましす。
「(他者は)はげましにはなっても、いたたまれなさの肩代わりをしてもらえるわけではない」
「めいめいがめいめいでやりかたを見つけてくふうするしかなく・・・・・・」
本当に大切なことは他者に頼るのではなく、自分ひとりでおこなうものであり、そして、そのひとりで歩んでいる者同士こそが、真の友達になれると黒田さんは語っているように思いました。
自分ひとりの力で生きていく、いや生きていかなければならない、そんな世の中だからこそ「OO力」という本が売れていると朝日新聞「ニュースの本棚」は解説しています。
例えば昨年のベストセラー1位は阿川佐和子さんの「聞く力」だったし、数年前には池上彰さんの「伝える力」がベストセラーになりました。
世の中を見渡せば、確かに「恋愛力」、「仕事力」、「人間力」、「老人力」・・・・・・・「OO力」という本がたくさんありますね。
では、なぜ「OO力」という本が売れるのか?
ニュースの本棚では
「かつて世の人々に共有されていた生き方や働き方についての定番が揺らぎ、人々は自らの力で、人生の様々な局面をサバイバル化していかねばならなくなった。」
と分析しています。
なるほど、生き方の定番が揺らいでいるのが今という時代なのですね。
つまり、人生における敗者とはこの「OO力」を高められなかった人だと今の時代は認識してしまうようです。(私はそう思いませんが・・・・)
嫌な時代になったと思うかもしれませんが、ニュースの本棚ではこう結んでいます。
「世に喧伝されているOO力とは、いま何が揺らぎ、何が新たに作り直されようとしているのかをまさに示しているものだとも考えられないか。そう観察するならば、世に溢れるOO力は、私たちの現地点を教えてくれるナビに姿を変えるのだ。」
そう考えれば、「聞く力」という本が売れているのは、世の中に「聞く力」を持った人が少なっていることへのナビ(気づき)なのだと理解できます。
「恋愛力」という本が売れているのは、世の中にちゃんとした恋愛をできる人が少なくなっていることへのナビ(気づき)なのだと理解できます。
こういう風に「OO力」という本が世の中に溢れている現象を分析すると、今の世の中がよく見えてきます。
新聞とはいいですね
こういう気づきを与えてくれるから。
ネットで自分が欲しい情報だけを検索だけしている人では、こういう気づきに出会うことは少ないと思います。
私が新聞を評価する一面です。
今の世の中をたくましく生き抜いていくために自分自身の力、「自分力」を高めていかなければならないということは充分理解できてもなお、多くの仲間に支えられてここまで生きてきた私のような世代には仲間を切り捨ててまでも自分の力だけで生きていくことに素直に賛同できないのです。
NHKドラマ「メイド・イン・ジャパン」で高橋克実演じる技術者は、自分が精魂込めて開発してきた技術を会社(=TAKUMI)に断念させられたことへの報復として中国企業に転籍し、その技術でTAKUMIを窮地に追いやる。
いわば、仲間を捨てて単身中国に渡り、自らが開発した技術でのし上がり、TAKUMIに報復する。
でも、彼の技術開発をかつて支えたのは、TAKUMIやそこで働く多くの仲間たちだったのでは?
TAKUMIや仲間がいなければ、今回の技術開発はできなかったのではないだろうか?
この葛藤の中でドラマは展開していくような・・・・・・・
そんな予感です。
「仲間」と「自分力」について、もう少し考えてみようと思います。