ラスト・・・・・・・・涙が止まらなかった。
朝の通勤車中で読了したのだが、嗚咽が漏れ眼鏡が涙で曇った。
小説を読んでこんな気持ちになったのは久しぶりのことだ。
辞書編纂という気が遠くなるような仕事を通じて描かれた人の情熱・・・・・・ひとつの仕事に魂を込めて没頭することの素晴らしさをこの本は教えてくれた。
それにしても三浦しをんという作家は人物の描き方が上手い。
言葉への愛に満ち溢れた主人公の「まじめ(馬締)」さんは、その名のとおり言葉の編纂という辞書作りに真面目に没頭する。
その一途な姿勢に心を打たれるが、彼を支える仲間や辞書の監修を担当する元大学教授の松本先生の描写がよい。
言葉の海に船出する「大渡海」という辞書のタイトルに準えてつけられたのであろう「舟を編む」というタイトルもよい。
この本を購入したのは今年の初めだが、私の前に家人、義母、娘と3人の女性読者を経て私のところにようやく戻ってきたのが5月の中旬でした。
誰もがこの本を読み、ラストの展開に涙したのです。
「言葉にまつわる不安と希望を実感するからこそ、言葉がいっぱい詰まった辞書を、まじめさんは熱心に作ろうとしているんじゃないだろうか。(中略)たくさんの言葉を、可能な限り正確に集めることは、歪みの少ない鏡を手に入れることだ。歪みが少なければ少ないほど、そこに心を映して相手に差し出したとき、気持ちや考えが深くはっきりと伝わる」
言葉に出さなくたって、夫婦なんだから・・・・・・・・・
言葉にださなくたって、同じ釜の飯を食った仲なんだから・・・・・・・・・・
そんなことはない。
言葉に出さなくては伝わらない。
言葉を慎重に精査する気持ちを失ったとき、お互いの人間関係にヒビが入ることがある。
私も幾度か経験したことがあります。
最後にこの本はできたらカバーをつけないで読んでほしい。
カバーをつけないで読むことの意味が最後に分かるはずですから。
- 舟を編む/三浦 しをん
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