原題は「The Iron Lady」だが、日本語タイトルは、それに「涙」を加えた。
「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」は実に上手いタイトルだと思う。
原題を日本の市場に合わせて、別の邦題に変える、これが配給会社の大きな仕事のひとつだが、今回はこれがハマった。
「涙」の一言で、この作品の訴求ポイントが一段と明確になったからだ。
日本人というのは、まっこと、「涙」とか「恋」とか「愛」のついたタイトルに弱い民族だと思う。
マーガレット・サッチャーは保守党の教育相時代に時の党首であるヒースが繰り返す労働党との妥協政策に我慢がならず、党首選に立候補し、見事に当選。
以後11年間にわたって首相として英国を率いた。
必ずしも成功した政策ばかりではなかったが、この人の強さはその「信念」にある。
並の強さではない、この「英国を愛する信念」の強さゆえ、歴史に名を刻む首相と評価されるようになったのだと思う。
このところは映画でもきちんと描かれている。
それゆえ、80歳を過ぎ、認知症になった現在のサッチャーの寂しさが大きく浮かび上がってくる。
この老いを演じたメリル・ストリープの演技は秀逸!
現在の老いたサッチャーと強い信念を貫き通した政治家サッチャーの比較が巧みな編集技術によって高められたのがこの作品の大きな特徴だと思う。
映画全体としてみれば必ずしも完成度の高い作品ではないが、メリル・ストリープの超プロフェッショナル的演技と巧みなストーリー展開に酔うことはできる。
そこれに比べて・・・・・・・・・・・・・・・・・・
わが日本の政治家は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
劇場を出たあと、どうしても考えてしまうのは、私だけではないと思う。