ようやく競争原理が働き始めたCD小売業界
古い話ですが、私がレコード会社に就職した当時は、ディレクターであれ、宣伝マンであれ、経理であれ、もちろん営業は当然ですが、入社するとしばらくの間は商品課もしくは商品センターという部署に一定期間配属されました。
私もそうでした。
洋楽のディレクターとして就職したのに、勤務先は高田馬場にある商品センターでした。
いわゆるレコードの倉庫です。
ショックでした。
ここで毎日レコードの出荷と返品の整理を行うのです。
何しろアナログの時代ですからレコード店から電話で注文が入ると、注文伝票を持って商品棚に走り、商品をピックアップし、梱包して配送するのです。
スピードと正確さが命です。
ベテランの商品マンはどの商品がどの棚にあるかを覚えていますから、新人の私などは、いつも「遅い!もっと走れ!」とベテラン社員に怒鳴られてばかりいました。
澤田さんというおじさん、恐かったなあ・・・・・・・・
朝から晩まで単純作業に明け暮れるわけですから、すぐに飽きてしまいました。
しかし、この研修期間(3ケ月程度でした)で最も学んだことはレコードには返品があるということでした。
戻ってくるものは再出荷される場合もありますが、大半は廃棄されてしまいます。
後年レコード会社の経営に関わったとき、この返品ロスをいかに減らすか、ということに大変苦労した思い出があります。
レコードがレコード会社からレコード店への委託商品であり、返品が自由なんだということをこの時初めて知りました。
また、レコードは再販価格維持商品ですから、レコード店が勝手に価格をつけてはいけません。全国一律の価格で販売される商品なのです。
だから、長い間レコード店間では競争原理が働きませんでした。
しかし、さすがにこの不況。
さらに音楽配信によりダメージを受けているCDショップが従来のやり方で生き残れるはずはありません。
競争せざるを得ないのです。
ここに来て、チェーン化している大手のCDショップが軒並みレコードメーカーと独自に交渉し、オリジナルな商品を店頭で販売し始めたのです。
いわゆるプライベートブランドによる他店との差別化戦略です。
例えばタワーレコードは、来年1月下旬、エイベックスを通して独自CDを販売します。
タワレコ30周年を記念して、東京スカパラダイスオーケストラなど30組のアーティストの書き下ろし作品を収録しました。
キャンペーンタイトルは「No Music, No Whisky」ではなくて「No Music, No Life」です。
新星堂はワーナーミュージック・ジャパンなどから音源提供を受け、創業60周年記念の企画で「大人のための、気軽に聴ける音楽」をテーマに親しみやすいジャズやクラシックなどを発売します。
HMVもCCCも独自商品を発売します。
国内最大手のCCCは強力な販売網を駆使して、洋楽の999円CDを12月4日から順次発売します。
カーペンターズやスティービー・ワンダーなどのベスト盤60タイトルだそうです。これは売れます!!
CDはピーク時の1998年ごろから縮小が続いており、08年のCD生産はピーク時の約2分の1にまで落ち込みました。
限られた顧客を囲い込むためにPB商品を投入して、自社のブランド力を向上させる戦略です。
しかし、洋楽を中心にしたカタログ商品もいずれ枯渇してきます。
その時どうするか?
今から考えておかなければばりません。