プロの音楽ディレクターとは? | ソフィアの森の「人生は、エンタテインメントだ!」

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音楽が好きで、映画が好きで始めたブログですが、広告会社退職後「ビジネスの教訓は、すべて音楽業界に学んだ」を掲載しました。

先人の財産にリスペクト


某レコード会社のディレクターSさんとの飲み会がありました。


久しぶりでした。


Sさんは既に60歳を超える根っからの音楽ディレクターで、現在は市販商品とは異なる、いわゆる特販と呼ばれるカタログ商品のディレクターをしています。


よく新聞広告に掲載されている「青春のヒット曲全集」とか「ムード歌謡全集」とか、いわゆるシニア層を対象にした商品のディレクターです。


実は私がレコード会社に勤務していた頃、年下の私が、Sさんの上司になってしまった時期がありました。


Sさんはアイドル歌手のHさんや台湾出身の大物歌手Tさんを担当していたこともある、いわゆる大物ディレクターでしたから、最初の頃は、どこかぎこちない人間関係に悩みました。


しかし、二人とも酒好きということから、何度か杯を交わしているうちにお互いの気持ちを理解し合えるようになり、ヤマハ出身のヴォーカリストA君を獲得してチャートのベスト10にランクさせるほどのヒット曲に仕上げたり、Oさんという個性的な歌手をNHKの番組を柱にヒットさせたり、最後は充実した時間を分かち合いました。


それから十数年。


私は広告代理店勤務。


Sさんは相変わらずレコード会社でディレクターをしています。


そんなSさんとの飲み会です。


Sさんは酒を飲むとだらしなくなります。


声は大きくなるし、隣に妙齢の女性がいるとすぐに話しかけてしまうので、飲み会のときは特に気を使います。


こんなSさんですが、年に数回の彼との飲み会を今では楽しみにしています。


彼から音楽業界の最新情報を得られるわけではありません。


私のビジネスに関係する話があるわけではありません。


要するに一緒に飲むメリットがない人かもしれません。


でも、彼と語る音楽の話や共に過ごした時代の話は、私の心を少しですが、元気にしてくれます。


こういう関係を大切にしたいと思う気持ちが、年齢を重ねるにしたがって強くなってきました。


そんなSさんが発した一言が心に残りました。


「自分は、偉大なる先輩たちが残してくれた音源を使って新たな商品を企画している。だから、その先輩たちに敬意を払いながら仕事をしている」


こういう謙虚な気持ち、大切ではないでしょうか。


それだけではありません。


「単純に昔の曲を編成するだけではなく、そこに新しい曲を加えることによって、先輩が残してくれた音源に別の生命を吹き込むことができる


Sさんはロレツの廻らない口調で、時には唾を飛び散らかしながら、真剣に話すのです。


利害関係のないピュアな関係を長年にわたり保ち続けることができるからこそ「友」と呼べる。


年内にもう一度Sさんと飲む機会があるかもしれません。