大人が聴く歌とヒットの方程式 | ソフィアの森の「人生は、エンタテインメントだ!」

ソフィアの森の「人生は、エンタテインメントだ!」

音楽が好きで、映画が好きで始めたブログですが、広告会社退職後「ビジネスの教訓は、すべて音楽業界に学んだ」を掲載しました。

NHKの「歌謡コンサート」とNTVの「誰も知らない泣ける歌」


毎週火曜日の午後8時~「NHK歌謡コンサート」が始まります。番組のコーナー「時代の歌・心の歌」に人気が集まっています。


続いて9時~「NTV誰も知らない泣ける歌」が始まります。おまけに今日は2時間スペシャルです。


「歌謡コンサート」は主に演歌系の歌手が中心ですが、「・・・・・・泣ける歌」のほうはジャンルを問わず、ズバリ!「泣ける歌」、通称「泣け歌」とその背景にある人生やドラマを再現します。


最近、私の周囲ではこの二つの番組が話題になることが多いです。


どちらもゴールデンの歌番組なのに、大人というかシニアをも対象にした番組作りが特徴です。


長年続いている「歌謡コンサート」への出演をきっけにブレイクし、年末の紅白歌合戦への出場を果たした歌手も沢山います。


最近では、「千の風になって」(テイチク)の秋川雅史さんや「吾亦紅」(テイチク)の杉本真人さんなどがその代表例です。


もっと最近では、秋元順子さんの「愛のままで」(キング)がそうなるかもしれません。


テイチクとキング・・・・・・・・・・・・・・いずれも老舗のレコード会社です。


両社に親しい友人がいるので聞いたことがありますが、どの曲も初回オーダーが数千枚、それも5000枚よりはるか下のオーダーだったそうです。


全国に何軒のCDショップがあるのか分りませんが(1万店ぐらい?)、レコード会社の編成会議では「売れる!」と前向きに評価されなかったことだけは確かです。


「吾亦紅」などは「作家自らが歌っているのだから・・・・・・・」という理由にもならない理由で、かろうじて発売が決まったと聞きました。


少し乱暴かもしれませんが「売れたらラッキー」みたいな烙印を押されて世の中に出たということになります。


しかし、「千の風になって」は130万枚を超えるビッグヒットに。「吾亦紅」も数十万枚。「愛のままで」も60万枚を超え、いまだに売れ続けています。


プロの眼力とは一体どこにあるのでしょうか?


一方の「誰も知らない泣ける歌」からは、馬場俊英さんの「ボーイズ・オン・ザ・ラン」やしをりさんの「smile」等のスマッシュ・ヒットの他、複数のコンピレーション・アルバムも発売されています。


安室奈美恵さんやEXILE・・・・・・・・・若者を対象にしたメジャーな音楽市場の対極にしっかりと根付いた大人の音楽市場があるということです。


その市場の拡大に大きな役割を果たしているのが上記の2テレビ番組であることは間違いありません。


それに加えて、PCに接するシニアが増えたことも影響しているのではないでしょうか?
ソフィアの森の映画と音楽&広告、マーケティング
2月末に終了してしまいましたが、ソニーミュージックが展開していたPCサイ「こいうた100」では、「・・・・・泣ける歌」で取り上げられた翌日には、その曲のダウンロード数が一気に跳ね上がったそうです。


テレビからPCを経由してケータイに繋がった好例として日経の「ネットマーケティング」でも紹介されました。


またテイチクの歌謡曲系アーティストのプロモーションビデオの大半はヤフー!動画で見ることができます。


またユーチューブ内にある「テイチクチャンネル」でも同様です。


ユーチューブと演歌のPV・・・・・・・・・・・・・・違和感はありませんが、驚きました。


先にエントリーした樋口了一さんの「手紙・・・・・」もユーチューブでは全てのバージョンを合わせると20万回以上も再生されています。


私見ですが、樋口さんが然るべきタイミングでNHK歌謡コンサートに出演したら・・・・・・・・・・楽しみです。


さて、ここからはマーケティングの視点で話を進めます。


名もない死者を悼む「千の風になって」や不義理をした母親への愛を歌った「吾亦紅」は必ずしも音楽ファンだけがCDを買っているわけではないと思います。


ある種の公共的な社会現象を背景にこの曲を知り、歌詞を読み、結果としてCDを買ったという人も多いはずです。


このあたりのことを本田鉄也さんが近著「戦略PR」の中で書いていています。


「消費社会は成熟し、オトナな消費者が増えた。彼らに商品そのものの魅力だけでアピールすることは徐々に難しくなってきている。というわけで、商品に公共性や社会性のあるテーマを付加したり、それを公共的なチャネル(つまり報道)を巻き込んで諸費者に伝えていくことが必要になってくる」


「・・・・・・・泣ける歌」の番組作りは、まさにこの視点で制作されています。


ところがレコード会社の人たちは、どうしても「楽曲の評価」を唯一・最大の判断基準にしてヒットの度合いを測ろうとしてしまいます。シニアの市場では必ずしもそうではないと思うのですが。


先の樋口了一さんの「手紙・・・・・・」も、今日の「・・・・・・・泣ける歌」で紹介された代田幸子さんの認知症のおばあちゃんのことを歌った「おばあちゃんの唄」などは、まさに公共性、社会性を背景にした楽曲ですから、この後の緻密なPR、つまり戦略PRが重要だということになります。


そんな中、以前同じ職場で仕事をし、今はビクターエンタテインメントでディレクターをしているMさんが素晴らしいアーティストに巡り会い、素晴らしい歌を完成させました。


発売は5月20日。立道聡子さんの「たからもの」がそれです。


全盲のシンガー・ソングライターであり、やはり全盲である夫との間に生まれた子供を育てながら音楽活動をしている立道聡子さんについては、また別のところで書いてみたいと思います。


曲も良いのですが、素晴らしい声質の持ち主です。