ひとつのものに狂えば、いつか必ず答えに巡り合う。
話題の本である。
昨年の7月に幻冬舎から発売されたこの本が既に10刷を数え、売れに売れている。
「NHKプロフェッショナル仕事の流儀」でりんご農家・木村秋則さんの回が放送されたのは2006年12月7日のことでしたが、残念ながらこの回の放送を私は見ていません。
今年の正月休みにアマゾンを検索していたら、私にお薦めの本として「奇跡のリンゴ」が紹介されたのです。
早速取り寄せて読みました。
NHKで放送された映像も改めて見ました。
感動しました!
「農薬も肥料も使わず、たわわにりんごを実らせる。そして、そのりんごの旨さといったら格別」
病気や害虫に特に弱いりんごの木は農薬や肥料なしには育たないというのが青森のりんご農家の常識以前の定説でした。
木村さんのりんご畑には雑草がうっそうと茂り、その雑草の密林で、我が物顔にバッタが跳ね、蜂が飛び、カエルが鳴き、野ネズミやウサギまでが走り回っているそうです。
畑というよりは、自然なままの野山の眺めに近い。そんな中にたわわに実をつけたりんごの木があるのです。
もちろん「農薬なしにりんごを収穫することはできない」と言われ続けてきたわけですから、ここに至るまでの木村さんの苦労は並大抵ではありません。
これは本を読むよりもNHKの映像記録を見れば、よく分かります。
8年間、りんごが育たず無収入だった時期もあったそうです。
そんな時期、木村さんはキャバレーの呼び込みやパチンコ店の店員を続けながら家計を助けたそうです。
そんな苦難を乗り越えたのは木村さんの一途なまでのりんごに対す深い愛情とそれを応援する家族の理解でした。
家庭は限りなく貧乏でしたが、奥さんも3人の子供たちも木村さんがリンゴの無農薬栽培に賭ける情熱を心の底から応援。木村さんの夢がいつしか家族全員の夢になったのです。
「りんごの木は、りんごの木だけで生きているわけではない。周りの自然の中で、生かされている生き物なわけだ。人間もそうなんだよ。人間はそのことを忘れてしまって、自分独りで生きていると思っている」
これが木村流の一貫した哲学です。
「ひとつのものに狂えば、いつか必ず答えに巡り合う」
そのためには
「バカになることだ」と木村さんは笑いながら言います。
木村さんについての詳しい紹介は以下のサイトをご覧ください。
木村さんのりんごから作られたジュースは以下の公式通販サイトでしか購入することができません。しかし、あまりの需要の多さから、常に申し込み=抽選での販売になります。もちろん私も未だ手にしたことはありません。
さいごにこの本の帯封に書かれたことばから引用します。
「人が生きていくために、経験や知識は欠かせない。何かをなすためには、経験や知識を積み重ねる必要がある。だから経験や知識のない人を、世の中ではバカと言う。けれど、人が真に新しい何かに挑むとき、最大の壁になるのはしばしばその経験や知識なのだ。木村はひとつの失敗をするたびに、一つの常識を捨てた。そうして無垢の心でリンゴの木を眺めることができるようになったのだ」
多くの企業家がなし得た成功本やマーケティング本を読むことも大事かもしれないが、この本から学ぶことの大きさに比べたら、それは微々たるものにしか過ぎないような気がしました。
夢に向かい、信念をもって夢の実現に向け努力する。
木村さんは半端じゃない、それこそ死を賭けた努力をしたのです。
しかし、その努力の背後にある、木村さんがいかに勉強熱心で、常識に捉われない思考を持っていたかを理解して、初めてこの本の価値が分るのかもしれません。
木村さんは何十年もかけ、苦労して得た無農薬・無肥料の自然農法の技術を他人に教えるため、今は全国を講演している毎日だそうです。それもノーギャラで。
まだお読みになっていない方にはお薦めです!
- 奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録/石川 拓治
- ¥1,365
- Amazon.co.jp