ロリータからフルメタル・ジャケットまでを一気に観た正月
年末からの休みも今日で7日目。
この1週間一滴のアルコールも口にしていません。
特に理由はありません。身体が欲しないのでそのままにしているだけですが、普段の私の酒量を知っている人には信じられないかもしれません。本当の酒好きではないのでしょう。いつもそう思います。
立川談志がかつて落語の枕詞で酒についてこう語ったことがあります。
「酒を止める。タバコを止める。なんて言うのは意志のの弱いやつだ。酒は自分がダメなやつだということを確認するためにあるんだから。酒を飲まないやつには、この自覚が足りない」
うまいことを言うものだと感心したことがあります。
また、彼が沖縄開発庁政務官のときに二日酔いで記者会見に出席し、記者から「酒と政務とどっちが大事なんですか?」と聞かれ
「酒にきまってるだろ!」と開き直った話も有名です。
このときは事前に記者クラブとの話し合いで二日酔いでもよいという了解の下で記者会見に出席したそうで、このとき談志は「新聞で信じられるのは日付だけだ」という名言を吐きました。
その後、談志は新聞をとるのさえ止めてしまいました。新聞を読むと自分で考える力が落ちるという彼ならではの理由からです。
実に個性的な落語家ではないでしょうか。
さて、年末からCS放送でスタンリー・キューブリック監督の作品が一挙に放送されるというのを知り、まずはHDDに収録。
元日~2日にかけて一気に観ました。
キューブリックの一般的なイメージは、「巨匠」、「気難しい映像作家」というものでしょうが、いくつかの作品は実にオーソドックスで丁寧なな作りです。
スタンリー・キューブリック作品とは、一般的に1962年に公開された「ロリータ」以降を指すことが多いのですが、1960年にはカーク・ダグラス制作・主演の「スパルタカス」というエンタテインメント史劇を監督しています。
キューブリックは、このハリウッド式の映画製作によほどこりたのか、生涯この「スパルタカス」を自分の作品と認めなかったそうです。(そうでしょうね)
ロリータ以降のラインアップを紹介します。
*1962年 ロリータ(34歳)
*1964年 博士の異常な愛情(36歳)
■1968年 2001年宇宙の旅(40歳)
*1971年 時計じかけのオレンジ(43歳)
■1975年 バリー・リンドン(47歳)
■1980年 シャイニング(52歳)
*1987年 フルメタル・ジャケット(59歳)
■1999年 アイズ・ワイド・シャット(71歳・遺作)
今回、初めて観た「ロリータ」と「博士の異常な愛情」の2本を含む*印の計4本を観ました。
もちろん■印の作品も全て公開時に観ています。
4作品でトータル10時間前後ですが、もちろん食事もあれば箱根駅伝の観戦時間もあるので、合間、合間に観たことになります。
まず、キャリアと名声の割には寡作です。
高い評価を得た作品が多いけれど、興行的には必ずしも成功していません。
1970年代、80年代にはそれぞれ2本。
1990年代では遺作となった「アイズ・ワイド・シャット」のみです。
まず、「ロリータ」。
ウラジミール・ナボコフの小説の映画化でナボコフ自身が脚本を担当。「ロリータ・コンプレックス」の語源になった映画です。
原作では12歳の少女が、少女に惚れた大学教授を翻弄するのですが、映画製作当時の社会的規制もありロリータを演じたスー・リオンは当時15歳。チョット大人びていてガッカリしました。
それにキューブリックが後年こだわったSEX描写が皆無ですから、今観るとテーマの割りにはインパクトがありません。
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次に「博士の異常な愛情」。
公開当時異常に長い邦題だったのでよく憶えています。
「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」ですから。
原題は「Dr.Strangelove or.How I Learned to Stop Worrying and Love Bomb」
Dr.Strangeloveという名前を「博士の異常な愛情」と訳したところに当時の宣伝マンの苦労が感じられます。
60年代の冷戦、いわゆる米・ソ関係の緊張をブラックユーモアで描いたものですが、ロリータにも出ていたピーター・セラーズの一人三役が強く印象に残りました。
この2本が初めて観たキューブリック作品ですが、「博士の異常な愛情」にその後のキューブリック作品の片鱗を感じました。
キューブリックが「美術」と「音楽」に独特のこだわりを持っていたことは、次の「2001年宇宙の旅」で広く知られるようになりましたが、「時計じかけのオレンジ」ではベートーベンの第九を、「フルメタル・ジャヶット」のエンディングではローリング・ストーンズの「黒く塗れ」を使っていたことでも明らかです。
最後に個人的に私が一番好きなキューブリック作品は何と言っても「時計じかけのオレンジ」です。
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この映画を公開時に観たときの興奮、特に映像の斬新さと文明批判の鋭さ、そして主人公を演じたマルコム・マクドウェルの存在感に衝撃をうけたことを今でも鮮烈に憶えています。私も多感な青春時代でしたから・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
というわけで2009年も既に3日になってしまいました。
今年の私のテーマは通俗的ですが、「原点回帰」です。
現在の私の仕事はインターネットを使った広告やビジネス開発がメインですが、私自身のビジネスフィールドでの原点は「音楽」と「映画」です。
音楽が好きでレコード会社に就職し、映画が好きで広告会社に転職したのですから。
この原点に徹底的に拘った仕事を1年を通じてやってみたい。
そして、その原点にインターネットが絡み、新しい広告モデルや新しいビジネスモデルに展開していくことができれば・・・・・・・・・それを目指してこの1年間、気合を入れすぎず、周囲の邪魔にならないよう(私のような年代になると、これが結構重要)やっていきたいと思います。