会計数字と非会計数字を巧みに使う優秀な経営者
最初に数字の感情ということについて話します。
■タウリン1000ミリグラム配合!
■タウリン1グラム配合!
さて、どちらが消費者にインパクトを与え、購買促進につながるか?
1ミリグラム=1グラムであるからタウリンの配合量は同じであるにも拘わらず、与えるインパクトは1000ミリグラムのほうが大きい。
使い手によって意識的に選択された数字には、使い手の感情が濃厚に込められている好例です。
これからの話は休み中に読んだ雑誌「プレジデント」に書かれたものが中心ですが、これが実に面白かったので紹介することにしました。著者は公認会計士の山田真哉氏。
まず上手い数字の使い方3原則を紹介しましょう。
1.決めつけ
「若者はなぜ3年で会社を辞めるのか」という本のタイトル。3年に正確な根拠はないが、こう決めつけることで読者にインパクトを与える。
2.常識破り
チームを活気づけるために「B社に150%勝つ!」という上司がいたとする。100%勝つは常識だが、150%はあり得ない数字だ。しかし、常識にない数字のほうがインパクトが強い。
3.ざっくり
部下が上司に、「昨日のイベントの入場者は9753人でした」というより「昨日のイベントには10000人の入場者がありました!」というほうが記憶に残りやすい。
こういった数字の上手い使い方を知っていると、部下を上手く指導できると結んでいます。
3年前に私は不摂生がたたって「痛風」の発作に襲われたことがあります。とにかく痛くて、痛くて、かかりつけの病院に飛び込んだのです。
痛風の判断基準は「尿酸値」です。
普通の医者ならば
「あなたの尿酸値が年々上がり続けており、このまま今の生活を続ければ必ず痛風になると注意したじゃないですか。今日からビールは禁止です!!」
これが数字だけを根拠に判断する医者の当たり前の診断です。しかし、健康診断の数字をどんなに眺めて比較してもその人の人柄や性格までは分からない。
しかし、私が飛び込んだ病院の医者は
「あなたの職業や性格を考えると、今の仕事を辞めない限り痛風は再発します。しかし、今のお仕事が好きで、お酒を飲むことで仕事が上手くいき、ストレスの発散になるのならば仕方ないですね。ですから、お酒も含めた食事の量を全て20%削減する努力をしたらどうでしょうか?」
素晴らしい医者です。私の仕事の内容や性格まで理解した診断です。
もし、先の医者のように「今日からビールは禁止!」と言われたら、私はストレスで今頃「癌」になっていたかもしれません。
幸いにも20%削減の効果か、今では尿酸値も平均値内に納まり、発作も起きていません。
これも「数字には感情がある」とか「数字は使いかたひとつで相手に与える印象が変わる」ということの好例でしょう。
山田さんは最後に
会計数字を予測に使ってはいけない。多くの企業が会計数字を基に事業計画を立てているが、今の時代こうした予測は殆ど当たらない。なぜなら、会計的な発想では、過去と現在の数字を比較して、その延長線上に未来があると予測するが、今の時代の経営環境はそんな予測とは無関係に変化してしまうからだ。一番悪いのは予測と現実との間にギャップが生じたとき、事業計画を変更するのではなく、むしろ業績のほうを無理やり事業計画に合わせるという愚行を演じることになってしまう。すぐれた経営者は、こうした会計数字の限界を知り、会計と非会計のバランスを取りながら経営の舵取りをしていく。
肝に銘じたい助言ですね。
ちなみに山田真哉氏は、ミリオンセラーとなった「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の著者でもあります。
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