Ⅰ「時効とは」
「一定の事実が継続する場合に、それが本当の権利関係と一致するか否かを問わず、事実状態に即した権利関係を確定し得るとする制度。」
Ⅱ「消滅時効」
「一定の権利が行使されなかったことによって、その権利が消滅するという制度。」
1.消滅時効にかかる権利と時効期間
【債権】
10年(167条1項)
【債権・所有権以外の財産権】
20年(167条2項)
2.短期消滅時効
【取消権】
追認できる時より5年、行為時から20年
【詐害行為取消権】
取消の原因を知った時から2年、行為時から20年
【相続回復請求権】
相続権侵害の事実を知った時から5年、相続開始から20年
【相続承認放棄の取消権】
追認することができる時から6か月間、承認又は放棄の時から10年間
【遺留分減殺請求権】
相続開始、贈与、遺贈を知った時から1年、相続開始の時から10年
3.時効期間の起算点
「時効期間は、権利を行使することができる時から進行する。」
<時効の起算点>
【確定期限の定めのある債権】
期限到来時
【不確定期限の定めのある債権】
期限到来時
【期限の定めのない債権】
債権成立時
【停止条件付き債権】
条件成就時
【債務不履行による損害賠償請求権】
もとの債権について履行請求できる時
【契約解除による原状回復請求権】
契約解除時
【不法行為に基づく損害賠償請求権】
損害及び加害者を知った時
【返還時期の定めのない消費貸借】
債権成立後、相当期間経過後
Ⅲ「取得時効」
「一定の期間を経過することによって権利を取得できる制度。」
1.取得時効にかかる権利
・ 所有権
・ 地上権
・ 永小作権
・ 地役権
・ 不動産賃借権
2.要件
a 所有の意思を持って
b 平穏、かつ、公然
c 他人の物を占有したこと
d 時効期間
【善意無過失】・・・10年 【それ以外】・・・20年
※ 時効取得を主張する者は、自分の占有期間に自分の前の占有者の占有をあわせて主張しても構わない。
ただし、この場合、前の占有者の悪意等の瑕疵も承継する(187条)。
e 不動産賃借権の時効取得
「債権は、取得時効の対象とならないのが原則であるが、不動産賃借権は、債権であるものの、占有を伴う継続的権利であるので、『所有権以外の財産権』として取得時効の対象となりえる。」
「上記4つの要件に加えて、① 土地の継続的な用益という外形的事実の存在、及び② それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されていること」
3.効果
「時効が完成して、その効果が援用されると、占有者は、所有権(又は他の財産権)を原始取得する。」
Ⅳ「時効の中断」
1.時効の中断事由
【請求】(147条1号)
【差押え・仮差押え・仮処分】(147条2号)
【承認】(147条3号)
2.中断の効果
a 進行した時効期間は振り出しに戻る。
b 中断事由が終了した時から時効は再び進行する。
c 時効の中断の効果が及ぶ範囲は、【原則】当事者とその承継人にのみ及ぶ(相対効、148条)。
【例外】として保証人にも及ぶ(付従性、457条1項)。
Ⅴ「時効の効果」
1.時効の効果
「時効の効果は、その起算日に遡る(144条)。」
2.時効の援用
「時効によって利益を受ける者が時効の利益を受ける意思を表示すること(145条)。」
a 援用の効果
「時効完成により、権利の得喪が確定的に生じるものではなく、援用により初めて確定的に生じ、時効利益の放棄により時効の効果が、確定的に発生していないことになる。」
b 援用権者
「時効により直接に利益を受ける者」
ex) 保証人、連帯保証人、物上保証人等
3.時効利益の放棄(145条)
「時効完成後に、その利益を放棄することをいう。」
→ あらかじめ、時効利益を放棄することは許されない(146条)。