Ⅰ「不動産登記」


1.不動産登記


a 登記と登記簿


「不動産の物権変動を公示する方法は登記である(177条)。」


b 登記請求権


「登記権利者が登記に協力しない登記義務者に対して、登記申請に協力せよと請求権利。」


物権的登記請求権


所有権等の物権そのものの効力から生じる登記請求権


物権変動的登記請求権


物権変動の事実そのものから生じる登記請求権(既に所有権がない者でも登記請求できる)


債権的登記請求権


売買契約等の債権的な契約に基づく登記請求権


c 中間省略登記


「不動産がA→B→Cと譲渡されたのに、登記を、中間者Bを省略してA→Cとする場合。」


これからなす中間省略登記


(原則) 否定


(例外) 当事者全員の合意がある場合には、Cは、Aに中間省略登記請求ができる。


すでになされた中間省略登記


(原則) 有効


(例外) A・Cの同意がない場合、中間者が抹消を求める正当の利益を有する場合には、中間者は、抹消請求できる。


2.対抗要件


「177条は物権変動を第三者に対して対抗していくためには、対抗要件としての登記が必要であると規定している。」


3.登記を対抗要件とする権利


・ 所有権

・ 地上権

・ 永小作権

・ 地役権

・ 先取特権

・ 質権

・ 抵当権

・ 不動産賃借権


4.登記なくしても対抗できる第三者


a 不動産登記法5条にあたる者


「詐欺又は強迫によって登記申請を妨げた第三者、他人のための登記申請義務のある者。」


b 不法占拠者・不法行為者


「賃貸借契約が終了しているにもかかわらず、土地、又は建物を明け渡さない賃借人等。」


c 無権利の名義人


「無効登記の名義人や虚偽表示の相手方等。」


d 前主・後主の関係にあるも者


「土地がA→B→Cと順次譲渡された場合に、まだAに登記があるとしても、AとCは前主・後主の関係にあり、対抗関係にならないので、Cは、登記がなくともAに対して自己の所有権を主張できる。」


e 背信的悪意者

背信的悪意者排除論


「背信的悪意者に対しては、登記なくして物権変動を対抗できる。」


背信的悪意者からの転得者


「転得者は転得者自身が背信的悪意者でない限り、有効に権利を取得することができる。」


5.登記を対抗要件とする物権変動


「177条の物権変動は、意思表示による場合に限らず、相続や時効取得等、すべての物権変動を含む(無制限説)。」


a 取消しと登記


取消前の第三者

叫び      得意げ        目

A →(①売買)→ B →(②売買)→ C

  ←(③取消)←


(制限行為行為能力取消)・・・保護されない


(詐欺取消)・・・96条3項によって、善意の第三者は保護される


(強迫取消)・・・保護されない


取消後の第三者

叫び      得意げ        目

A →(①売買)→ B →(③売買)→ C

  ←(②取消)←


「取消権者Aと取消後の第三者Cとは、Bを起点とする二重譲渡類似のの対抗関係に立つので、両者の優劣は登記の先後で決し、先に登記をした者が確定的に権利を取得する。」


b 解除と登記


解除前の第三者


「解除前の第三者が保護される(545条1項)ためには、登記が必要。」


叫び       得意げ       目

A →(①売買)→ B →(②売買)→ C

  ←(③解除)←


※ Cが先に登記していれば、所有権をAに対して対抗できる。


解除後の第三者


「対抗問題となり、登記の先後で、優劣を決す。」


叫び       得意げ       目

A →(①売買)→ B →(③売買)→ C

  ←(②解除)←


※ Cは先に登記していれば、所有権をAに対して対抗できる。


c 相続と登記


共同相続と登記


「共同相続人の1人が勝手に単独登記をして第三者に土地全部を譲渡した場合、他の共同相続人は、登記なくして自己の持分を第三者に対抗することができる。」


相続放棄と登記


共同相続人の1人が相続を放棄したが、他の相続人が登記をしない間に、相続放棄をした者の債権者がその相続人の相続持分を差し押さえた場合、他の相続人は、相続放棄による持分の取得を登記なくして第三者に対抗することができる。」


遺産分割と登記


遺産分割前の第三者


「共同相続人の1人Bが遺産分割前に自己の持分(β持分)を第三者Cに譲渡して、その後遺産分割によってβ持分が他の相続人A所有になった場合、第三者Cが、909条但書より、β持分の取得をAに対抗するためには、登記が必要。」


遺産分割後の第三者


「共同相続した土地を遺産分割の協議によって、Aの単独所有としたが、その登記をしないでいたところ、Bが自己の持分(β持分)を第三者に譲渡した場合、Cは、Aよりも先に登記していればβ持分の取得をAに対抗できる。」


遺贈と登記


「被相続人Dから、特定不動産の遺贈(特定遺贈)を受けたBが、Dの死亡後、所有権移転登記をしないでいるうちに、相続人Aの債権者Cがこの不動産を差し押さえてきた場合、BはCに対して所有権を対抗するためには、登記が必要となる。」


被相続人からの譲受人


「相続人と被相続人は同一人とみなされ、譲受人との関係は当事者関係となるので、譲受人は、登記なくして相続人に対抗することができる。」


d 時効取得と登記(判例の5つの準則)


占有開始当初からの所有者との関係


「時効取得者Aと時効取得された元所有者Bは、通常の売買契約における売主と買主のような関係になるので、Aは、Bに対して登記なくして時効取得を主張できる。」


時効完成前の譲受人との関係


「時効完成前に元所有者Bから不動産を譲り受けた第三者Cは、時効取得者Aとは、通常の売買契約における売主と買主のような関係になるので、Aは、Cに対して登記なくして時効取得を主張できる。」


時効完成後の譲受人との関係


「時効完成後に元所有者Bから不動産を譲り受けた第三者Dは、時効取得者Aとは対抗関係になるので、Aは、Dに対し登記なくしては時効取得を主張できない。」


※ 時効の起算点は、動かすことはできない


※ 時効完成後の譲受人が登記した時点から、さらに新たな時効が進行する。


Ⅱ「動産物権変動」


1.対抗要件


「動産の物権変動においては、引渡しが対抗要件。」


・ 現実の引渡し

・ 簡易の引渡し

・ 占有改定

・ 指図による占有移転


2.即時取得(192条)


動産を占有する者を、善意無過失権利者と信じてこれと取引した者を保護するため、たとえ取引の相手方(動産の占有者)が無権利者であっても、その動産の権利を取得できるとする制度。」


a 要件


・ 動産であること

・ 有効な取引行為が存在すること

・ 無権利者、又は無権限者からの取得であること

・ 平穏、公然、善意・無過失に占有を取得したこと

・ 占有を始めること


b 効果


即時取得によって、取得者は、動産上に行使する権利を取得する。


Ⅲ「占有権」


「自己のためにする意思で物を所持するという事実状態をいい、占有権は、占有することによって成立する権利。」


1.要件(180条)


・ 自己のためにする意思

・ 所持


2.占有の効力


a 占有訴権


「占有の侵害がある場合にその侵害の排除を請求し得る権利をいう。」


・占有保持の訴え(198条)


・占有保全の訴え(199条)


・占有回収の訴え(200条)


b 果実収取権


・善意占有者の果実収取権(189条)


・悪意占有者の果実収取権(190条)


Ⅳ「所有権」


1.所有権とは


「法令の制限内において、自由にその所有物を使用・収益・処分することができる権利(206条)。」


2.公道に至るための他の土地の通行権


「他の土地に囲まれて公道に通じていない土地(袋地)の所有者は、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができるという権利(210条)。」


3.共有


a 共有持分


b 共有物の利用


・ 共有物の使用


「各共有者は、持分の割合に応じて、共有物の全部を使用することができる(249条)。」


・ 共有物の保存・管理・変更


保存行為


(定義)

共有物の現状を維持する行為


(要件)

各共有者が単独でできる(252条但書)


管理行為


(定義)

共有物を利用して収益したり、使い勝手を良くしたりする行為


(要件)

持分の価格の過半数で決める(252条本文)


変更行為


(定義)

共有物を物理的に変化させる行為や法律的に処分する行為


(要件)

共有者全員の同意で決める(251条)


Ⅴ「用益物権」


・ 地上権

・ 永小作権

・ 地役権

・ 入会権