Ⅰ「序説」


「不法行為とは、ある者(被害者)が他人(加害者)から損害を加えられた場合に、被害者が、その受けた損害の賠償を加害者に対して請求する債権が発生する制度。」


「不法行為の趣旨・機能は、① 被害者の救済、② 損害の公平な分担、③ 将来の不法行為の抑止 にある。」


Ⅱ「一般不法行為」


1.要件


・故意・過失

・権利又は法律上保護される利益侵害

・損害の発生

・因果関係

・責任能力(712条・713条)

・違法性阻却事由がないこと


2.効果


a 損害賠償請求権の発生


「不法行為に基づく損害賠償請求権は、損害の発生と同時に遅滞に陥る。」


b 賠償の方法


(原則)


金銭により賠償する(722条1項・417条)


(例外)


名誉毀損の場合には、裁判所は被害者の請求により、損害賠償に代え、又は損害賠償とともに名誉を回復するに適当な処分を命じることができる(723条)


c 損害賠償の範囲


「加害者が賠償すべき損害の範囲は、416条の類推適用により加害行為と相当因果関係に立つ損害(相当因果関係)。」


d 請求権者


(被害者が生きているとき)


被害者は、自己が受けた損害(財産的損害、精神的損害)について、賠償請求できる。


(被害者が死亡した場合)


① 被害者の相続人は、被害者の損害賠償請求権と慰謝料請求権を相続して、これを行使することができる。


② 被害者の近親者(父母、配偶者、子)も、自己が受けた損害(養ってもらうはずだったのが不可能になった場合等)の賠償(709条)や自己の精神的損害について、賠償請求することができる(近親者固有の慰謝料請求権、711条)。


e 過失相殺(722条2項)


被害者側の過失


損害の公平な分担、及び求償関係の一挙解決の見地から、被害者本人と身分上、生活関係上一体をなすとみられるような関係にあるもの(親、配偶者等)の過失は考慮される(判例)。


722条2項類推適用


被害者の体質的素因や心的素因によって損害が拡大した場合、損害の公平な分担という見地から、損害賠償額の認定にあたってその素因が考慮される場合があると解されている(722条2項類推適用、判例)。


f 損害賠償請求権の消滅時効(724条)


不法行為による損害賠償請求権は、被害者、又はその法定代理人が損害、及び加害者を知ったときから3年間(時効)、不法行為時より20年間(除斥期間)経過した場合に消滅する。


Ⅲ「特殊不法行為」


・監督責任(714条)


・使用者責任(715条)


・注文者の責任(716条)


・工作物責任(717条)


・共同不法行為責任(719条)


Ⅳ「不当利得」


法律上正当な理由がないにもかかわらず、他人の財産、又は労務から利益を受け、これによってその他人に損害を及ぼした場合の、その利益をいう。」


1.一般不当利得


a 要件


・ 他人の財産又は労務によって利益を受けたこと(受益)

・ そのために他人に損失を与えたこと(損失)

・ 受益と損失の間に因果関係があること

・ 法律上の原因がないこと


b 効果


「受益者は、その主観的事情に応じて不当利得返還義務を負う。」


善意の受益者】(703条)


現存利益において利得を返還すればよい。


悪意の受益者】(704条)


損失額の全額及びその利息を返還しなければならない(前段)。

損害があるときは、それも賠償しなければならない(後段)。


2.特殊の不当利得


Ⅴ「事務管理」


義務がないのに他人のためその事務(仕事)を管理(処理)すること(697条)。」