Ⅰ「弁済」


「債務の本旨に従った給付を実現する債務者、ないし第三者の行為。」


1.要件


a 弁済期


「通常は当事者の契約や法律の規定によって決定する。」


b 弁済場所


「通常は当事者の明示、又は黙示の合意や取引慣行によって決定。」

「それが、明らかでない場合は、484条」


c 弁済者


・ 債務者、及び弁済権限を有する者


「履行補助者による弁済も、債務者の弁済とみなす。」


・ 第三者


(原則) 債務の弁済は、第三者もすることができる。


(例外) 下記の場合には、第三者は弁済できない。


【債務の性質上許されない場合】(474条1項前段)

【当事者が反対の意思表示をした場合】(474条1項後段)

法的利害関係を有さない第三者の弁済が、債務者の意思に反する場合】(474条2項)


d 弁済の相手方


(原則) 債権者、及び弁済受領権限を有する者

(例外) ① 債権の準占有者(478条) ② 受取証書の持参人(480条)


e 弁済内容


・ 債務の本旨に従った弁済


「特定物に関しては現状のまま引き渡せば足りる(483条)。」


・ 弁済の費用


「特約がない限り債務者が負担(485条本文)。」


2.効果


a 債務の消滅


b 弁済による代位(499条・500条)


「保証人など主債務者以外の者が弁済した場合に、債権者が債務者に対してもっていた権利が、弁済した第三者に移転する制度。」


「弁済者は求償権が確保されるので、安心して弁済でき、債権者としても、第三者からの弁済が促されるという利点がある。」


Ⅱ「弁済の提供」


「債務者が給付を実現するために必要な準備をして、債権者の協力を求めること。」


1.要件


① 債務の本旨に従った ② 現実の提供、又は口頭の提供があること


a 現実の提供


「債権者が目的物を受領する以外は何もしなくてよいほどの提供を、債務者がする場合。」


(特定物の引渡債務)


その特定物を提供すれば、瑕疵があっても、債務の本旨に従った提供となる。


(不特定物の引渡債務)


品質・数量が債務の内容に適合していれば、債務の本旨に従った提供となる。瑕疵がある時は債務の本旨に従った提供とならない。


(金銭債務)


遅延利息が生じている場合には、その利息分等も提供しなければならない。


b 口頭の提供


「債務者が現実の提供をするのに必要な準備を完了して、債権者にその受領を催告すること。」


c 口頭の提供が許される場合


・ 債権者があらかじめ受領を拒んだとき

・ 債務の履行につき債権者の行為を要する場合


2.効果


a 債務不履行責任が発生しない(492条)。


b 双務契約の場合、同時履行の抗弁権(533条)がなくなる。


c 善管注意義務(400条)が軽減される。


d 弁済の増加費用が債権者負担となる(485条但書)。


e 危険が移転する。すなわち、債権者主義(534条)になる。


f 約定利息の不発生。


Ⅲ「受領遅滞」


「債務の履行につき、受領その他債権者の協力を必要とする場合において、債務者が債務の本旨に従った提供をしたにもかかわらず、債権者が協力しない、あるいはできないために、履行が遅延している状態にあること。」


※ 要件


a 債務の本旨に従った履行の提供(弁済の提供)があること


b 債権者がその提供を拒み、又は受領することができないこと


→ 債権者は、その履行の提供があった時より、遅滞の責任を負う(413条)。


Ⅳ「その他の債務消滅事由」


1.更改(513条)


「債権の内容を変更することによって、新債権を成立させるとともに旧債権を消滅させる契約。」


2.混同(520条)


同一債権について債権者としての地位と債務者としての地位が同一人に帰属すること。」


3.免除(519条)


「債権を無償で消滅させる旨の債権者一方的意思表示。」


4.供託(494条)


「給付の目的物を供託所寄託して債務を消滅させること。」