Ⅰ「賃貸借契約」


「賃貸人が賃借人に目的物を使用収益させ、これに対して賃借人が対価を支払う契約。(601条)」


→ 有償双務諾成契約


1.賃貸借の成立


「諾成契約なので当事者の合意だけで成立する。」


a 敷金とは


「契約期間中に賃借人が賃貸人に対し負担する賃料債務その他一切の債務の担保のために差し入れられた金銭であり、契約終了後、目的物の明渡義務履行までに生ずる賃借人の債務を控除した残額が返還されるものをいう。」


b 敷金返還請求権


明渡しの完了した時点が、敷金返還請求権の発生時期。賃借人が賃貸人に対して、その返還を請求する。」


2.存続期間


「民法上、賃貸借の存続期間は、最長で20年とされている。もし、契約で30年と決めたとしても、20年になる。(604条1項)。」


3.賃貸人・賃借人の義務


a 賃貸人の義務


・ 使用収益させる義務

・ 修繕義務

・ 費用償還義務 (必要費償還義務)(有益費償還義務)

・ 担保責任


b 賃借人の義務


・ 用法遵守義務

・ 賃料支払義務

・ 目的物の保管義務

・ 契約終了時の目的物返還義務


4.賃借人の譲渡、目的物の転貸


(賃借権の譲渡)


賃借人Bが第三者Cに対して賃借人の地位を移転すること。


(目的物の転貸)


賃借人Bが賃貸借の目的物をに又貸しすること。


a 賃借権の譲渡、目的物の転貸の要件(612条)


【原則】


賃借権の譲渡や目的物の転貸をするには、賃貸人の承諾が必要である。賃借人が賃貸人の承諾を得ずに、無断で賃借権の譲渡や目的物の転貸をなし、譲受人や転貸人が賃借物を使用収益したときには、賃貸人は、原則として賃貸借契約を解除することができる


【例外】


賃借人が賃貸人の承諾なく、第三者をして賃借物の使用収益をなさしめた場合においても、賃借人の当該行為が賃貸人対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情がある場合においては、612条の解除権は発生しない


b 賃借権の譲渡、目的物の転貸の効果


・ 賃借権の譲渡の効果


「賃貸人Aは、賃借権の譲受人Cに対してのみ賃料を請求できる。」


・ 目的物の転貸の効果


「賃貸人保護の観点から、転借人は賃貸人に対して、直接に賃料支払等の義務を負う。(613条1項)」


「賃借人も、賃貸借契約上の義務を免れることはできない。(613条2項)」


5.賃借人の第三者に対する関係


a 賃借権の対抗要件


・ 民法の原則


「賃貸人が賃貸借契約の目的物を第三者に譲渡した場合、賃借権の対抗力は、原則として認められないが、例外として、不動産賃借権については、それを登記すれば第三者に対抗することができる。(605条)」


・ 借地借家法の特則


「建物所有を目的とする土地の賃借人は、借地権の登記がなくても、当該土地上に登記されている建物を所有していれば、第三者に対して借地権を対抗することができる。(借地借家法10条1項)」


「建物の賃借人は、借家権の登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、建物の新所有者に対して借家権を対抗することができる。(借地借家法31条1項)」


b 賃貸人たる地位の移転


「Aが、自己所有の不動産をBに賃貸したまま、当該不動産をCに売却した場合において、Bに登記などの賃借権の対抗要件が備わっているときは、目的不動産の所有権の移転に伴って、賃貸人の地位当然にAからCに移転する。この場合、Cが、賃料を請求する等賃貸人たる地位をBに主張するためには、賃貸目的物に対する所有権の登記を備える必要がある。」


c 不法占拠者に対する関係


「AがBに対して土地を賃貸している場合において、Zが土地を不法占拠しているときは、Bは、いかなる手段によってZを排除できるか。」


・ 占有訴権に基づく妨害排除請求


「Bが土地を占有している場合において、ZがBの占有を妨害したときは、Bは、Zに対して、占有訴権に基づき妨害の除去を請求することができる。」


・ 所有権に基づく妨害排除請求権の代位行使


「Bが土地を占有していなかったとしても、Aに対し賃貸人の使用収益させる義務の履行としてZの占有を排除するように請求できるので、Aが妨害排除を請求しないときは、Bは、債権者代位権(423条)の転用により、Aの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使できる。」


・ 賃借権に基づく妨害排除請求


「Bが土地賃借権について対抗要件を備えていれば、BはZに対して、賃借権に基づく妨害排除請求をすることができる。(判例)」


6.賃貸借の終了原因


a 存続期間の定めある場合


原則として、存続期間満了時


b 存続期間の定めない場合


賃貸人、賃借人は、いつでも解除を申し入れできる


c 特別の終了原因


・賃借人の債務不履行による解除


・目的物の滅失・朽廃による使用不能


・賃借人の死亡


Ⅱ「消費貸借契約」


「金銭その他の代替物を借りて、後日、これと同種・同等・同量の物を返還する契約。(587条)」


→ 無償(利息付の場合は有償)・片務・要物契約


Ⅲ「使用貸借契約」


「貸主が借主、無償で目的物を貸す契約。(593条)」


→ 無償片務要物契約