Ⅰ「売買契約」
「当事者の一方(売主)が、ある財産(目的物)を相手方(買主)に移転することを約束し、これに対して、買主がその代金を支払うことを約束する契約をいう。(555条)」
→ 有償、双務、諾成契約
1.売主の義務
a 財産権移転義務
「売主は、契約の目的となった財産権を移転する義務を負い、買主が完全にその財産権を取得することができるようにするための一切の行為をしなければならない。」
b 担保責任
「売買の目的物に欠陥がある場合に売主が負う責任のことをいう。」(無過失責任)
・ 他人の権利の売買
【権利の全部が他人に属す】(560条・561条)
【権利の一部が他人に属す】(563条)
・ 数量不足・物の一部滅失の場合(565条)
・ 目的物に他人の権利が付着している場合
【地上権等が付着している場合】(566条)
①地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的物となっている場合
②目的不動産のために存在するとされた地役権が存在しない場合
③買主に対抗し得る賃借権が存在する場合
【抵当権等が付着している場合】(567条)
「先取特権、又は抵当権が設定されている場合」
・目的物に隠れた瑕疵がある場合(570条)
c 果実引渡義務
「いまだ引き渡さない売買の目的物から果実が生じたときは、その果実は売主に属す。(575条1項)」
2.買主の義務
a 代金支払義務
b 利息支払義務
3.手付
「売買契約の際に、当事者の一方から他方に対して支払われる金銭その他の価値のあるものをいう。」
a 種類
・証約手付・・・契約が成立した証拠
・解約手付
・違約手付
b 解約手付による解除
【解約手付による解除の方法】(557条1項)
・手付倍返しによる解除(売主側)
「買主Bが売主Aに対して300万円の手付を交付した場合、売主Aは、買主Bから解約手付として受け取っている300万円の倍額の600万円を買主Bに渡せば、買主Bとの契約を解除できる。」
・手付放棄による解除(買主側)
「買主Bが売主Aとの契約を解除するためには、すでに売主Aに渡してある手付金300万円について放棄すれば、契約を解除することができる。」
【解除の時期】
「契約の相手方が履行に着手するまでに、解除をしなければならない。」
【手付解除の効果】
「損害賠償請求をすることはできない(557条2項)。」
Ⅱ「贈与契約」
「当事者の一方が相手方に無償で財産を与える契約のことをいう。(549条)」
→ 無償、片務、諾成契約
1.書面によらない贈与
「履行が終わった部分を除いて、各当事者は、いつでも撤回することができる。(550条本文)」
「履行の終わった部分については、撤回することができない。(550条但書)」
2.特殊の贈与
a 負担付贈与
「贈与契約に際して、受贈者も何らかの給付を負担する契約。(553条)」
→ 片務契約 (双務契約に関する規定が準用される)
b 死因贈与
「贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与契約。(554条)」
死因贈与は、「契約」である。
3.交換契約
「当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転する契約。(586条1項)」
→ 有償、双務、諾成契約
※ 当事者間に特約がない限り、売買に関する規定が準用される。(559条)