Ⅰ「代理とは」


「代理人が本人のためにすることを示して、本人の名において相手方に対して意思表示をし、また、相手方から意思表示を受けることによって、その法律効果を直接本人に帰属させる制度。」


「『代理人が成立するためには、①代理権があること、②顕名があること、③有効な法律行為が行われたこと』が必要。」


「代理人が代理権の範囲内で有効に代理行為を行ったときは、その行為の効果はすべて本人に帰属する。」


Ⅱ「代理権(本人と代理人の関係)」


1.代理権の発生原因


(法定代理)


本人の意志の基づかず、法律の規定によって、代理権を与えることで始まる代理をいい、法定代理の代理権の範囲は法律が定める通りになる。


(任意代理)


本人が自らの意思によって、他人に代理権を与えることで始まる代理をいい、任意代理の代理権の範囲は、代理権授与行為の内容で決まる。


2.復代理


「代理人が、自分の権限内の行為を行わせるため、自己の名でさらに代理人を選任して、本人を代理させること。」


・復任権の存否


(任意代理)

原則: なし

例外: ①又は②の場合にあり

 

① 本人の許諾を得たとき

② やむを得ない事情があるとき


(法定代理)

常にあり


・代理人の責任


(任意代理)

原則:

選任・監督上の責任


例外:

本人の指名に従って復代理人を選任したときは、その不適任又は不誠実を知って本人に通知し又は解任を怠った場合にのみ責任を負う。


(法定代理人)

原則:

全責任


例外:

やむを得ない事由により復代理人を選任したときは、選任・監督上の責任のみを負う。


3.代理権の乱用


「代理人の内心では自己又は第三者の利益を図る意図をもって、客観的には顕名により代理の形式をきちんと踏んで、本来の権限内の行為をした場合をいう。」


4.代理権の消滅原因


(法定代理人)


・本人・・・  【死亡】

・代理人・・・【死亡】【破産手続開始の決定】【後見開始】


(任意代理人)


・本人・・・  【死亡】【破産【破産手続開始の決定】

・代理人・・・【死亡】【破産手続開始の決定】【後見開始】【解約告知】


Ⅲ「代理行為(代理人と相手方との関係)


1.意義


「代理人が本人のためにすることを示してする法律行為。」

「帰属要件は、①顕名、②代理権、③代理行為が代理権の範囲内であること。(99条)」


2.顕名


「代理人が本人のために代理行為を行うことを相手方明らかにすること。(99条1項)」


3.代理人の能力


「代理においては、その効果が本人に帰属しますので、代理人自信に不利益は及びません。したがって、代理人が制限行為能力者であったとしても、制限行為能力者保護の必要がないので、代理人の行為能力は不要(102条)。」


4.代理行為の瑕疵


「意思表示の瑕疵や善意・悪意が問題となる場合には、代理人について判断するのが原則(101条1項)。」


「特定の代理行為が本人の指図に基づいてされたときは、代理人がある事情を知らなくても本人が知っていれば、本人は、代理人の不知を主張することができない(101条2項)」


Ⅳ「代理の効果(相手方と本人の関係)」


代理人が代理権の範囲内で有効に代理行為を行ったときは、効果はすべて本人に帰属する。


Ⅴ「無権代理」


「代理人による代理行為がなされたにもかかわらず、代理権がない場合をいう。」


1.効果


(原則) 本人帰属しない

(例外) 相手方の保護の観点から、①・②の制度を用意。


① 追認

② 追認拒絶


2.相手方が取り得る手段


① 催告権

② 取消権

③ 無権代理人への責任追及

④ 表見代理


Ⅵ「表見代理」


「本人と無権代理人との間に、外観的には代理権があると信じさせるだけの特別な事情がある場合に、有権代理と同様の効果を認める制度。」


1.類型


a  代理権授与の表示により表見代理


「AはBに何ら代理権を与えていないにもかかわらず、Cに『Bに代理権を与えた』旨を告げた場合等」(109条)


【要件】


① 他人に代理権を与えた旨を表示したこと。

② 表示された人が、表示を受けた第三者(相手方)と、表示された代理権の範囲内で代理行為をしたこと。

③ 相手方の善意無過失


b 権限外の行為の表見代理


「AはBい対し、100万円を借り入れる代理権を付与しましたが、BはCから200万円を借り入れた場合等」(110条)


【要件】


① 基本代理権の存在。

② 代理人が、基本代理権を逸脱して代理行為をしたこと。

③ 相手方に、その権限ありとと信ずべき正当な理由があること。


c 代理権消滅後の表見代理


「AはBに土地売却の代理権を与えていたが、その代理権が消滅したにもかかわらず、BがCに土地を売却した場合等」(112条)


【要件】


① かつて代理権を有した者の代理行為であること。

② 相手方が、代理権の消滅について善意無過失であること。


2.効果


a 本人への効果帰属


「本人は、無権代理行為の効果帰属を拒めない。」


b (狭義の)無権代理との関係


「相手方は、表見代理を主張せずに無権代理人の責任を追及することもできるし、取消権を行使することもできる。」

「もっとも、無権代理人が制限行為能力者であるときは、その保護のため、無権代理人の責任を問うことはできない。」