Ⅰ「権利能力(権利の主体)」


「私法上の権利義務の主体となる資格」

「自然人」と「法人」に限られる。


1.人の権利の始期


(原則) 

私権の享有は、出生に始まる(民法3条1項)。


(例外) 

胎児は、法行為も基づく損害賠償の請求(民法721条)、相続(民法886条)、遺贈(民法965条)については、すでに生まれたものとみなされる。


2.人の権利の終期


①死亡 ②失踪宣告(民法30条)


Ⅱ「意思能力・行為能力」


1.意思能力


有効に意思表示をする能力をいい、意思能力を欠く者の意思表示は無効。」


2.行為能力


単独確定的有効な法律行為をなし得る能力をいい、行為能力が制限されるものを制限行為能力者という。」


Ⅲ「制限行為能力者制度」


1.未成年


「20歳未満の者」(民法4条)


a 行為の効果


(原則)

未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は、取り消すことができる。(民法5条1項本文・2項)


(例外)

以下の場合は取り消すことができない。

① 単に権利を得、又は義務を免れる行為

② 処分を許された財産の処分

③ 法定代理人によって許された一定の営業に関する行為をすること


b 保護者


「親権者」または「未成年後見人」


→ 「取消権」「同意権」「追認権」「代理権


2.成年後見人


「精神上の障害によって物事の判断能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所で後見開始の審判を受けた者」(民法7条)


a 行為の効果


(原則)

成年後見人が単独で行った法律行為は、原則として、取り消すことができる。(民法9条本文)


(例外)

日常生活に必要な範囲の行為については、単独で有効に行うことができ、取り消すことはできない。(民法9条但書)


b 保護者


「成年後見人」(民法8条)


→ 「取消権」「追認権」「代理権


※ 成年後見人は、自然人だけでなく、法人もなることができる。(民法843条4項)

※ 成年後見人が選任されている場合でも、さらに成年後見人を選任することができる(民法843条3項)


3.被保佐人


「精神上の障害によって物事の判断能力が著しく不十分な者で、家庭裁判所で保佐開始の審判を受けた者」(民法11条)


a 行為の効果


(原則)

被保佐人は、単独で法律行為をすることができる。


(例外)

重要な財産上の行為について、保佐人の同意を得ずに行った法律行為は取り消すことができる。(民法13条4項)

もっとも、日常生活に必要な範囲の行為については、単独で有効に行うことができ、取り消すことはできない。(民法13条1項但書・2項但書)


b 保護者


「保佐人」(民法12条)


→ 「取消権」「同意権」「追認権」 

裁判所は、審判によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に「代理権」を与えることができる。(民法876条の4第1項)


※ 保佐人は、自然人だけでなく、法人もなることができる。(民法876条の2第2項・843条4項)

※ 保佐人が選任されている場合でも、さらに保佐人を選任することができる(民法876条の2第2項・843条3項)


4.被補助人


「精神上の障害によって物事の判断能力が不十分な者で、家庭裁判所で補助開始の審判を受けた者。」(民法15条1項)


a 行為の効果


(原則)

被補助人は、単独で法律行為をすることができる。


(例外)

13条1項所定の行為の中から、被補助人の精神状態に応じて家庭裁判所が決めた特定の法律行為については、被補助人は単独で行うことができず(民法17条1項)、補助人の同意を得なかった行為は、取り消すことができる(民法17条4項)


b 保護者


「補助人」(民法16条)


→ 家庭裁判所の審判によって定めた特定の法律行為について「取消権」「同意権」「追認権」を有す。


→ 裁判所は、審判によって、被補助人のために特定の法律行為について補助人に「代理権」を与えることができる(民法876条の9第1項)


※ 補助人は、自然人だけでなく、法人もなることができる。(民法876条の7第2項・843条4項)

※ 補助人が選任されている場合でも、さらに補助人を選任することができる。(民法876条の7第2項・843条3項)


★ 取消しの効果


「遡及的に無効」(民法121条本文)


その結果、譲り受けた物やその他の給付につき、法律上の原因がなくなるので、制限行為能力者は、譲り受けた物やその他の給付を相手方に返還しなければならない。(民法703条以下)


※ 現存利益のみの返還(民法121条但書)


★ 相手方の保護


① 法定追認(民法125条)


② 取消権の期間の制限(民法126条)・・・追認できる時から5年、行為の時から20年で消滅。


③ 催告権(民法20条)


④ 詐術による取消権否定(民法21条)


Ⅳ「法人(権利の主体)」


1.法人の種類


a 社団法人と財団法人


(社団法人)


一定の目的に沿った事業を行うために、一定の人間を組織して作られた法人のこと。

例えば、日本医師会等。


(財団法人)


一定の目的のために提供された財産を運用する目的で作られた法人のこと。

例えば、財団法人行政書士試験研究センター・日本相撲協会・講道館等。


b 公益法人と営利法人


(公益法人)


学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他公益に関する事業を目的とし、営利を目的としない法人をいう。ここで、公益とは、特定人ではなく、不特定多数人の利益を目的とすることをいい、営利を目的としないとは、利益をあげて、構成員に分配しないことをいう。


(営利法人)


営利を目的とする法人をいう。ここで営利とは、利益をあげて、構成員に分配することを目的とすることをいう。会社法で規定されている会社がこの典型である。


2.法人の成立要件


(公益社団法人)


①社団法人の根本規則である定款を作成し(民法37条)、②主務官庁の許可を受ける必要がある。この主務官庁の許可があって初めて公益社団法人となり、権利能力を取得する(民法34条)。


(公益財団法人)


①財団法人の根本規則である寄附行為を作成し(民法39条)、②主務官庁の許可を受ける必要がある。この主務官庁の許可があって初めて公益財団法人となり、権利能力を取得する(民法34条)。


3.法人の組織


「社団法人は、社員総会、理事、監事という3つの機関。財団法人は、理事、監事の2つの機関。」

※ 監事は任意的


Ⅴ「物(権利の客体)


1.不動産と動産


2.主物と従物