「財政の基本原則」
1.財政民主主義(憲法83条)
a 財政の意義
「国家がその任務を行うために必要な財力を調達し、管理し、使用する作用、すなわち、国家の歳入と歳出をいう。」
b 財政民主主義
2.租税法律主義(憲法84条)
a 租税の意味
「国、又は、地方公共団体が、その課税権に基づいて、その使用する経費に充当するために、一方的、強制的に賦課、徴収する金銭給付のこと。」
b 趣旨
「租税は国民に対して、直接負担を求めるものですから、必ず国民の同意を得なければならない。」
c 法律により議決を要する事項
「①納税義務者、課税物件(所得に課税する等)、課税標準(所得金額を基準とする等)、税率等の課税要件と、②税の賦課・徴収の手続が法定されていることが必要。」
3.国費の支出及び国庫債務負担行為の議決(憲法85条)
4.公金支出の禁止(憲法89条)
「財政監督の方式」
1.予算(憲法86条)
a 意義
「一会計年度における国の財政行為の準則。」
b 予算の法的性格
【重要論点】
Q.予算の法的性格は何か。
<A説:予算行政説>
結論:
予算の法的性格を否定し、予算は国会が政府に対して1年間の財政計画を承認する意思表示であって、もっぱら国会と政府との間でその効力を有するとする。
<B説:予算国法形式説>
結論:法律とは異なる国法の一形式である。
理由:
財政民主主義の観点から法形式と考えるべきである。しかし、「予算が政府を拘束するのみで、一般国民を直接拘束しない」、「予算の効力が一会計年度に限られている」等の点で通常の法律とは異なる。
<C説:予算法律説>
結論:予算は法律それ自体である。
理由:
① 予算と法律との矛盾の発生が排除される。
② 予算を法律とすると国会の予算修正権の限界の問題が生じない。
c 予算と法律の不一致
不一致の例
①予算措置を必要とする法律が成立したにもかかわらず、その執行に要する予算が不成立、不存在の場合。
②ある目的のための予算は成立しているが、その予算の執行を命ずる法律が不存在の場合。
【重要論点】
Q.①の場合、内閣はいかなる対応をとるべきか。
結論:
内閣は「法律を誠実に実行する義務」(憲法73条1号)を負っている。よって、補正予算や経費の流用、予備費支出等の方法によって対処することが求められる。
【重要論点】
Q.②の場合、内閣・国会はいかなる対応をとるべきか。
結論:
内閣は支出を実行することはできない。内閣としては、法律案を提出し国会の議決を求めるしかないが、国会に法律制定の義務はない。
d 国会による減額修正と増額修正の可否
【重要論点】
Q.国会の予算修正権に限界はあるか。
<A説>
結論:増額修正は認められない(予算行政説から)
理由:国会に予算の発議権は認められていない。
<B説>
結論:予算の同一性を損なうような大修正は許されない。
理由:
国会を財政処理の最高議決機関とする憲法の精神からみてある程度の増額修正は可能。一方で、憲法が予算の発案件を内閣に専属せしめている以上、予算の同一性を損なうような大修正は許されない(予算国法形式説から)。
<C説>
結論:増額修正権に限界はない。
理由:
① 予算が法律であることの当然の結果として、国会は自由に修正できる(予算法律説から)
② 国会の予算議決権を制限する憲法上の規定が存在せず、財政国会中心主義をとっていることから、減額修正の場合と同様、増額修正いにも限界はない(予算国法形式説から)
2.予備費(憲法87条)
3.決算審査
a 意義
「一会計年度の国家の現実の収入、支出の実績を示す確定的計数を内容とする国家行為の一形式。」
b 会計検査院の決算検査
c 国会の決算審査
4.内閣の財政状況報告(憲法91条)
【重要判例】
<通達課税と租税法律主義:最判昭33.3.28>
争点:
事実上課税されていなかった法律上の課税物件を、通達で課税物件と扱うことは84条に反するか。
結論:
通達の内容が法の正しい解釈に合致するものであれば反しない。