「国家の地位」
1.国民の代表機関(憲法43条1項)
2.国権の最高機関(憲法41条)
3.唯一の立法機関
a 「立法」の意味
「一定の内容を持ったルール(実質的意味の立法)については、国会だけが定める権限を持つという意味。」
「一定の内容を持ったルール」 → 一般的・抽象的法規範 (通説)
「一般的・抽象的法規範」 → 不特定多数の人に対して(一般的)、不特定多数の場合ないし事件(抽象性)に適用される法規範であること。
b 「唯一」の意味
①国会中心立法の原則と、②国会単独立法の原則の2つを意味する。
・国会中心立法の原則
意義・・・国の行う立法は、憲法に特別の定めがある場合を除いて、国会によってなされなくてはならない。
例外・・・①議員規則(58条2項) ②裁判所規則(77条1項)
委員立法の問題点
・国会単独立法の原則
意義・・・国会による立法は、国会以外の他の機関の関与がなくとも、国会の議決のみで成立する。
例外・・・①内閣の法律案提出 ②地方自治特別法制定のための住民投票
「国会の組織と活動」
1.国会の組織
a 二院制(憲法42条)
・二院制の存在理由
①衆議院の軽率な行為や過誤を参議院がチェックして是正すること、②異なる時期に選挙を行うことによって、その時々の民意を国会に反映させること。
・衆議院の優越
【理由】
①一院を重視することで国会の意思形成を容易にできること、②議員の任期、解散制度からみて、衆議院の方が民意により密着していること。
【衆議院のみに認められる権限】
①内閣不信任決議権(憲法69条) ②予算先議権(憲法60条1項)
【参議院にも認められるが衆議院の決議が優先するもの】
①法律案の議決(憲法59条)
②予算の議決(憲法60条2項)
③条約の承認(憲法61条・60条2項)
④内閣総理大臣の指名(憲法67条2項)
b 選挙
・選挙区
①小選挙区・・・一人の議員を選出する選挙区をいう。
②大選挙区・・・二人以上の議員を選出する選挙区をいう。
・代表の方法
①多数代表制
②少数代表制
③比例代表制
c 政党
「一定の政策を掲げ、それに対する国民の支持を背景に、政府機構の支配を獲得、維持を通じてその実現を図ろうとする、自主的、恒常的な政治組織団体。」
2.国会の活動
a 会期の定義と種類
・「常会」(憲法52条)
・「臨時会」(憲法53条)
・「特別会」(憲法54条1項)
b 緊急集会(憲法54条)
c 会議の原則
・「定足数」(憲法56条1項)・・・3分の1以上
・「表決数」(憲法56条2項)・・・過半数
【出席議員の3分の2以上で決すべきとされるもの】
①議員の資格争訟の裁判(憲法55条)
②秘密会(憲法57条1項)
③議員の除名(憲法58条2項)
④法律案の再可決(憲法59条2項)
【総議員の3分の2以上で決すべきとされるもの】
⑤憲法改正の発議(憲法96条1項)
・「公開」(憲法57条)
「国会議員の特権」
1.不逮捕特権(憲法50条)
2.免責特権(憲法51条)
3.議員の歳費受領権(憲法49条)
「国会の権能」
1.憲法改正の発議権(憲法96条)
2.法律の議決権(憲法59条)
3.内閣総理大臣の指名権(憲法67条1項)
4.弾劾裁判所の設置権(憲法64条1項)
5.財政監督権(憲法83条以下)
6.内閣の報告を受ける権能(憲法72条・91条)
7.条約の承認権(憲法61条・73条3号)
「議院の権能」
1.議院自律権
a 内部組織に関する自律権
・会期前に逮捕された議員の釈放要求権(憲法50条)
・議員の資格争訟の裁判権(憲法55条)
・役員選任権(憲法58条1項)
b 運営に関する自律権(憲法58条2項)
・議院規則制定権
・議院懲罰権
2.国政調査権(憲法62条)
a 意義
「衆議院、参議院が、それぞれ立法、行政、司法を含む国の政治全般について、調査する権能のこと。」
b 法的性質
「議院が立法その他の権利を行使するための手段として認められた補助的な権能であり、議院は、その権能を有効、適切に行使するための資料の収集等を目的としてのみ、調査を行うことができる。」
【重要論点】
「国政調査権の法的性質をいかに解するか。」
A説:補助的権能説(通説)
結論:議院の権能を実質的に行使するために認められた補助的権能である。
理由:①「最高機関」とは政治的な美称であり、国会を統括機関とみることは妥当ではない。
②この様に解しても、国会の権能は広く国政全般にわたるので、不都合はない。
B説:独立権能説
結論:国政調査権は、国会が国権を統括するための手段として認められた独立の権能である。
理由:41条の「最高機関」性に基づき、国会は統括機関として広く国政全般を統括する権能を持っている。
c 国政調査権の範囲と限界
・司法権との関係
「現に裁判が進行中の事件について、裁判官の訴訟指揮等を調査したり、たとえ確定裁判後であっても裁判の内容を批判する調査をしたりすることは許されない。」
・検察権との関係
「起訴、不起訴について、検察権の行使に政治的圧力を加えることが目的と考えられる調査、起訴事件に直接関係する事項等を対象とする調査、捜査の続行に重大な支障を及ぼすような方法による調査等は、違法ないし不当である。」
・一般行政権との関係
「議院内閣制の下で国会に行政監督権が認められることから、行政権の行使の合法性と妥当性について、全面的に国政調査の対象となる。」