1.職業選択の自由
a 職業選択の自由の意義と営業の自由
・職業選択の自由の意義
・営業の自由
「営業の自由も職業選択の自由に含まれる」
b 職業選択の自由の限界
表現の自由等の精神的自由権に比べて、一般により強い規制を受ける。
・規制の類型
(消極的目的)
国民の生命及び健康に対する危険を、防止もしくは除去ないし緩和する為に課せられる規制。
【許可制】・・・風俗営業・飲食業・貸金業等
【届出制】・・・理容業等
【資格制】・・・医師・薬剤師・弁護士等
(積極的目的)
福祉国家の理念に基づいて、経済の調和のとれた発展を確保し、社会的、経済的弱者を保護する為の規制。
【特許制】・・・電気・水道・鉄道等の公共事業
【国家独占】・旧郵便事業・旧タバコ専売等
・規制の合憲性判定基準
「合理性の基準」
立法の目的及び目的達成の手段の双方について、一般人を基準にして合理性が認められるかどうかを審査するもの。立法府の下した判断に合理性があるということを前提にしている。
さらに、合理性の基準の中でも、消極目的規制と積極目的規制で、審査基準を分けて考えるのが一般的。
(二分論)
(消極目的規制)・・・厳格な合理性の基準
「裁判所が規制目的の必要性、合理性及び同じ目的を達成できる、より緩やかな規制手段の有無を立法事実に基づいて審査する。」
(積極目的規制)・・・明白性の原則
「当該規制が著しく不合理であることの明白である場合に限って違憲とする。」
<薬局距離制限事件 :最大判昭50.4.30>
争点:薬局の開設に適正配置を要求する薬事法は、22条1項に反しないか。
結論:反する。
<小売市場距離制限事件 :最大判昭47.11.22>
争点:小売市場の開設に適正配置を要する小売商業調整と区別措置法は、22条1項に反しないか。
結論:反しない。
<公衆浴場距離制限事件:最判平1.1.20>
争点:公衆浴場の開設に適正配置を要求する公衆浴場法は、22条1項に反しないか。
結論:反しない。
<酒類販売免許制事件:最判平4.12.15>
争点:酒税法10条10号の規定は、22条1項に反しないか。
結論:反しない。
2.居住・移転の自由
a 内容と性質
b 海外渡航の自由
「海外渡航の自由は、22条2項で保障される」(判例)
c 国籍離脱に自由
3.財産権の保障
a 具体的な財産権と、この財産権を制度として保障するため、私有財産制を意味する。
b 財産権の一般的制限
「29条1項で保障された財産権が公共の福祉による制約に服する」(29条2項)
さらに、財産権は職業選択の自由と同様に消極的規制にみならず積極的規制にも服す。
<森林法共有林事件:最大判昭62.4.22>
争点:共有林について、その持分価格2分の1以下の共有者が、民法256条1項に基づいて分割請求することに制限を加える旧森林法186条は、29条2項に反し違憲ではないか。
結論:違憲である。
c 財産権の制限と補償の要否
・29条3項の趣旨
「私有財産を公共のために用いるには、正当な補償が必要である。」
・補償の要否
「29条3項の趣旨は平等原則と財産権の保障であり、この趣旨を実現するために、①特定人に対する制約で、②財産権の本質を害するような強度な制約の場合に、補償が必要とする。」(通説)
d 正当な補償
「完全補償説」 vs 「相当補償説」
・「完全補償説」(通説)(判例)
当該財産の客観的な市場価格を全額補償すべきであるという説。
・「相当補償説」(判例)
当該財産について合理的に算出された相当な額であれば、市場価格を下回っても是認されると考える説。
e 法律で補償規定を欠く場合
「あり法律によってその財産に損失を被るものがいるので、損失補償を要すると解される場合であるにもかかわらず、補償を認める旨がその法律に規定されていなかった場合、国民は直接29条3項を根拠として補償請求する余地があるとしている。」(判例)
「人身の自由」
1.基本原則
a 奴隷的拘束からの自由(憲法18条 )
b 適正手続の保証(憲法31条 )
・31条の保障
「手続の法定」と「内容の適正さ」
・告知と聴聞
<第三者所有物没収事件 :最大判昭37.11.28>
争点:31条の適正手続の内容として、「告知と聴聞」を受ける権利は含まれるか。
結論:含まれる。
・行政手続きへの準用
<成田新法事件 :最大判平4.7.1>
争点:行政上の不利益処分にも31条が準用されるか。
結論:準用される余地がある。
2.被疑者の権利
a 不当な逮捕・抑留・拘禁からの自由(憲法33条 ・34条 )
・身体拘束に対する保障
原則:「令状主義」・・・司法官憲のの発する令状(逮捕状・勾引状・勾留状)
例外:現行犯逮捕
①犯罪とその犯人が明らかであるため誤認逮捕の恐れが少なく、②罪証隠滅・逃亡を防止するため直ちに逮捕する必要性が高いから。
・身体拘束の要件、防御権の保障
b 住居等の不可侵(憲法35条 )
「一般令状の禁止」
c 行政手続への準用
3.被告人の権利
a 拷問・残虐刑の禁止(憲法36条 )
b 公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利
・「公平な裁判所」の裁判
構成その他において偏頗や不公平の恐れのない裁判所による裁判
・「迅速な」裁判
不当に遅延していない裁判
<高田事件:最大判昭47.12.20>
争点:迅速な裁判に反した場合は、直接37条に基づいて、免訴判決によって救済されるか。
結論:これを肯定。
・「公開」裁判
その対審及び判決が公開の法廷で行われる裁判のこと。
c 証人審問権・喚問権(憲法37条2項 )
d 弁護人依頼権(憲法37条3項 )
e 不利益な供述の強要禁止(憲法38条1項 )
「黙秘権」
氏名の供述は不利益な供述に含まれない。(判例)
<川崎民商事件:最大判昭47.11.22>
争点:行政手続に38条1項の黙秘権の保障が及ぶか。
結論:原則として及ぶ。
f 自白の証拠能力の制限(憲法38条2項3項 )
「本人の自由な意思に基づかない自白は証拠として認められない。」
g 刑罰不遡及と二重処罰に禁止(憲法39条 )
「事後法の禁止」ないし「遡及処罰の禁止」
h 刑事補償(憲法40条 )
→ 刑事補償法
★ 重要判例
<土地収用法における補償の価格 :最判昭48.10.18>
争点:土地収用法における「正当な補償」の意義
結論:完全な補償でなければならない。
<河川付近制限違反事件 :最大判昭43.11.27>
争点:法令上補償規定を欠く場合には、直接29条3項に基づき補償請求できるか。
結論:できる。