「生命・自由・幸福追求権」(憲法13条 )
1.幸福追求権の意味
憲法13条後段で規定、14条以降で保障。
2.新しい人権
人の人格的生存に不可欠な権利・自由だけが人権としての保護に値する。
a プライバシー権
「放っておいてもらう権利」 → 「自己に関する情報をコントロールする権利」
<前科照会事件 :最判昭56.4.16>
争点:市長が弁護士会の照会に応じ、犯罪の種類、軽重を問わず。前科などを報告することは、公権力の違法な行為にあたるか。
結論:あたる。
<諮問押捺事件 :最判平7.12.15>
争点:指紋の押捺を強制されない権利は13条のプライバシー権に含まれるか。
結論:含まれる。
b 自己決定権
「個人の人格的生存にかかわる重要な私的事項を公権力の介入や干渉なしに、各自が自律的に決定できる自由」
<「エホバの証人」信者輸血拒否事件 :最判平12.2.29>
争点:宗教上の信念に基づく輸血拒否の意思決定は人格権として認められるか。
結論:認められる。
c その他の新しい人権
「肖像権」「名誉権」「環境権(良好な環境を享受する権利)」「日照権」「嫌煙権」「アクセス権」
<京都府学連事件 :最大判昭44.12.24>
争点:「みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由」(肖像権)は憲法上保障されているか。
結論:13条で保障される。
「法の下の平等」(憲法14条 )
1.「法の下」の平等の意味
法の適用の平等・法の内容の平等
2.法の下の「平等」の意味
a 相対的平等
「相対的平等の立場から、人の事実上の差異に着目した合理的な差別は許される。」
ex) 累進課税
b 形式的平等
個人の努力で追いつかない差異という点に配慮して格差是正を国家が介入していくことまで憲法14条が要請しているか。
→ 14条は第一義的には法の取扱いの平等、いわば形式的平等を目指していると考える。
c 平等の具体的内容
・14条1項後段列挙事由
「人種」「信条」「性別」「社会的身分」「門地」以外の事由についても保障は及び得る。(判例)
<非嫡出子相続分差別規定合憲判決 :最大決平7.7.5>
争点:相続財産について、非嫡出子に嫡出子の2分の1の法定相続分しか認めない民法900条 4号但書前段の規定は、法の下の平等に反しないか。
結論:反しない。
<尊属殺重罰規定違憲判決 :最大判昭48.4.4>
事案:実父に夫婦同様の関係を強いられてきた被告人が、虐待にたまりかねて実父を殺害し、自首した。
争点:普通殺に比べて尊属殺に著しく重罰を科すことが、法の下の平等の原則に反しないか。
結論:反する。
・議員定数不均衡の合憲性
「違憲か合憲か」
人口比以外にも、政策的な要素や技術的な要素を加味した結果の合理的な差別は許される。
「判例の基準」
衆議院=1:3
参議院=1:6(地域代表的性格と半数改選制という特殊性があるから)
「合理的期間の経過」
このような不平等状態が生じても直ちに違憲になるとはせず、人口の変動状態を考慮して、合理的期間内における是正が憲法上要求されていると考えられるのに、それを行わない場合に初めて違憲となる。(判例)
★幸福権から導き出される人権
(判例上認められた権利)
・プライバシー権 ・肖像権 ・名誉権
(判例上認められていない権利)
・環境権 ・嫌煙権
★重要判例
<女性の再婚禁止期間の合理性:最判平7.12.5>
争点:民法733条 は憲法14条1項に反し、同条を改廃しないことが、国家賠償法1条の違法行為に当たるか。
結論:あたらない。
判旨:合憲的な根拠に基づいて各人が法的取扱いに区別を設けることは14条1項に違反するものではなく、民法733条の立法趣旨は父子関係を巡る紛争発生の未然防止にあり、合理的であるので、国家賠償法上違法ではない。
<衆議院議員定数不均衡事件 :最大判昭51.4.14>
争点:衆議院議員選挙において、1:5の投票の格差は14条に反し違憲か。
結論:違憲の瑕疵を帯びる(14条に反すが、選挙を無効とはしない)