「人権の分類」
1.自由権(国からの自由)
a 精神的自由 b 経済的自由 c 人身の自由
2.参政権(国家への自由)
3.社会権(国家による自由)
4.受益権(国に対して一定の作為を要求する権利)
「人権享有主体性」
1.天皇や皇族の人権享有主体性
2.法人の人権享有主体性
<八幡製鉄事件 :最大判昭45.6.24>
争点:法人に人権享有主体が認められるか。
結論:認められる。
a 法人に認められる人権と認められない人権
(法人にも認められる) 経済的自由権・請願権・国務請求権(裁判を受ける権利、国家賠償請求権)・刑事手続上の諸権利
(法人には認められない) 生存権・生命や身体に関する自由・選挙権
b 保証の限界
c 法人による人権侵害
・マスコミ等の巨大社会的権力 vs 一個人のプライバシー
・法人 vs 法人内部の自然人
<税理士会政治献金強要事件 :最判平8.3.19>
争点:政治団体へ政治献金を行うことは、強制加入である税理士会の目的範囲内の行為か。
結論:目的の範囲外の行為である。
3.外国人の人権享有主体性
「憲法上の人権は、性質上可能な限り外国人にも保障される。」
<マクリーン事件 :最大判昭53.10.4>
争点:外国人に保障される人権の範囲はどこまでか。
結論:権利の性質上、日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き保障される。
a 入国の自由・出国の自由・再入国の自由
入国の自由→保障されず
出国の自由→認めている(憲法22条2項を根拠)
再入国の自由→保障されない
b 政治活動の自由
わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等に関しては保障されないが、それ以外の政治活動の自由に関しては保障される。(マクリーン事件)
c 参政権(憲法15条1項)
権利の性質上日本国民のみをその対象とし、わが国に在留する外国人には及ばない。
<定住外国人地方参政権事件:最判平7.2.28>
争点:定住外国人に地方公共団体における選挙権は保障されるか。
結論:保障されていない。ただし、法律で選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されていない。
「基本的人権の限界」
1.公共の福祉(憲法12条・13条後段)
2.特別な法律関係
a 公務員の人権
「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」(憲法15条2項)
「法律の定める基準に従い、官吏に関する事務を掌理すること」(憲法73条4号)
公共の福祉による制約以外にも公務員であるがゆえの制約を受ける。
・公務員の政治活動の自由
「職員は、・・・・・人事院規則で定める政治的行為をしてはならない」(国家公務員法102条1項)
<猿払事件 :最大判昭49.11.6>
①行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼の確保という規制目的は正当であり、②その目的のために政治的行為を禁止することは目的との間に合理的関連性があり、③禁止によって得られる利益と失われる利益の均衡がとれているとして、職務の性質などにかかわりなく、一律に公務員の政治活動の規制は合憲。
・公務員の労働基本権
警察職員・消防職員・自衛隊員・海上保安庁又は監獄に勤務する職員は「団結権」「団体交渉権」「争議権」の労働三権はすべて否定。
非現業の一般公務員は「団体交渉権」「争議権」が否定。
現業公務員(国有林野事業などの非管理的業務)は「争議権」が否定。
<全農林警職法事件 :最大判昭48.4.25>
争点:公務員の一律かつ全面的な争議行為禁止規定は合憲か。
結論:合憲である。
b 在監者の人権(憲法18条・31条)
在監者の権利を特別に制限することは許されるが、その制限は、拘禁と戒護及び受刑者の矯正教化という在監目的を達成する為に必要最小限に留まるものでなくてはならない。
<「よど号」ハイ・ジャック新聞記事抹消事件 :最大判昭58.6.22>
争点:新聞記事の抹消処分は、在監者の閲読の自由を制限するとして違法であると言えるか。
結論:違法ではない。監獄内の規律及び秩序も維持上放置することができない程度の障害が生ずる相当の蓋然性がある場合に限って制約が許される。
c 私人間効力
vs マスコミや企業等(人権を侵害する恐れのある社会的権力として)
・間接適用説
一般私人の人権を社会的権力から保護する為に、私法の一般条項(民法90条・709条等)を適用する際に、憲法の精神をその解釈に読み込んで解決しようとする考え。
・判例
<三菱樹脂事件 :最大判昭48.12.12>
争点:①憲法の人権規定は、私人間にも適用されるか。②私人相互間で自由・平等侵害があった際、どのように保護していくことができるか。
結論:①直接適用されない。②民法1条・90条や不法行為に関する諸規定を運用して保護していく。