カスペルスキーが日本市場で攻勢、法人向け事業でパートナーと協業し、組み込みやSaaSを推進
モスクワに本拠を置いて世界中で事業展開するロシアのセキュリティソフトベンダー、カスペルスキーラブのCEO(最高経営責任者)ユージン・カスペルスキー氏が来日。日本市場における今後の事業戦略などを聞いた。検知率の高さなど技術力を売り物に、コンシューマ向け市場と同様、今後はエンタープライズ市場にも積極的に販売していく方針で、パートナー企業とのビジネスをさらに強化すると言う。10月21日には精密切断装置の製造メーカーであるディスコ(東京都大田区)との協業を発表。産業機器向けの「組み込み型セキュリティソリューション」として展開していく。このほかアンチウイルスソフトをSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)で提供するサービス「Kaspersky as a Service」を、2009年第2四半期に日本でも開始し、SaaSやISP(インターネットサービスプロバイダ)事業者向けに販売していく。主な内容は次の通り。
2004年に100%子会社としてカスペスルキーラブスジャパンを設立したが、2006年に川合林太郎社長を迎えて、新しいスタートを切った。エンタープライズ向けも狙っていたが、日本で知名度を上げるためにも、まずコンシューマ向けの市場開拓が先行した。2007年には製品のライセンス体系も変えるなど、エンタープライズ向けも本格的に取り組み始めた。
エンタープライズ向けの事業として、二つの柱を考えている。ライセンス販売と、今回のディスコとの協業のようなOEMビジネスである。ディスコは、半導体のシリコンウエーハからチップを切り出すときに使う精密切断装置「ダイシングソー」のメーカーとして知られる。産業機器でもウイルス対策の必要性が高まっており、当社製品を搭載したダイシングソーをディスコが発売することで、利用者が安心して使える。今後も、こうした事業を推進していきたい。
SaaS事業では「Kaspersky Non Stop Security」と「Kaspersky Hosted Security」の二つのサービスモデルを用意した。Kaspersky Non Stop Securityは月額課金で利用者に提供するもので、サービスプロバイダからプログラムをダウンロードし、利用者は使った分だけ支払う。Kaspersky Hosted Securityは、サービスプロバイダが自社システムに組み込んで、サービスを提供するという形式になる。いずれも当社が直接にユーザーに販売するのではなく、SaaSやISPの事業者向けに販売する。
当社の販売スタイルは、パートナー企業による間接販売がメインである。期待するパートナー企業としては1次受けのユーザーサポートまでお願いできる相手だ。製品流通だけの企業なら、ユーザーサポートできるパートナー企業の下に形式的にでも入ってもらうことになる。SaaSやISPの事業者だけでなく、ディスコのような製造メーカーとの協業は珍しいと思う。これからも新しいパートナー企業とビジネスしていきたい。
最大の売り物は技術力である。マーケットの動きを常に予見し、技術を自ら開発していくことが成長力の源泉だ。本社社員もほとんどが技術者である。他社のように、技術力を持つ企業をM&A(企業の合併・買収)で傘下に収めるやり方にはあまり興味がない。必要な技術ならば自ら開発することが重要だ。実際、今まで当社はほとんどM&Aを行っていない。
日本市場はますます重要になっている。当社のワールドワイドの売り上げは、トップが欧州で次いで米国、ロシアになっている。日本市場への進出は最近なので、まだ売り上げ全体の数パーセントしかない。正直言って日本市場を攻めあぐねた時期もあった。しかしサムライと同じで、あきらめずにやってきたつもりだ。日本市場は世界のIT市場で大きな割合を占める。パートナー企業といっしょになって市場開拓し、日本市場からの売り上げ比率をもっと増やしたい。
出典:ITpro