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貧しい労働階級の女性の生き方。
ケン・ローチ監督が「ケネス・ローチ」名義で製作した長編デビュー作です。この作品は、ケン・ローチ監督の全作品に反映されるプロトタイプのようでしたね。特に主人公が女性であるということで「この自由の世界で」とダブります。
しかし、「この自由の世界で」ほど衝撃度はなく、代わりに貧しい暮らしを余儀なくされた女性の前向きな生きる強さが描かれています。
ならず者のトムと結婚し、男の子を出産したジョイ。18歳で妊娠したジョイはトムとの結婚が間違いであったことなど、その時は考えもしませんでした。
仕事をクビにされても仲間と遊び呆けるトム。その上、ジョイにはきつい言葉を浴びせ時には暴力も・・・。
トムは根っからのゴロツキ。仲間を率いて金庫破りの計画を企てます。しかし、あっさりと警察に捕まり刑務所へ。
ジョイは息子ジョニーと共に叔母のエムの家へ居候するのですが、そこで、真に愛せる人デイブと巡り合うのです。
デイブとの幸せな日々が続くかと思われましたが、デイブも貧しい労働階級の男。トムと同じように強盗を働いてしまい、トムより重い12年の刑に処せられます。
それでもデイブを愛し、ひたすら待つと誓うジョイでしたが・・・。
働き口がないから盗みを働いてしまう。階級の格差を生み出した社会が悪いのか・・・それとも人が悪いのか。
そんな貧しい暮らしでもジョイは強く生きていきます。母は強しですねぇ。ジョニーが産まれていなかったらジョイは堕落した生活を過ごしていたのではないでしょうか。
トムと暮らしていた頃は「お金が大事」と言っていたジョイでしたが、デイブと出会ったことで「愛が大事」と思うようになります。
とは言っても、やはりお金は必要です。デイブが服役中のためジョニーの養育費も自分で稼がなくてはなりません。ジョイはさまざまな職に就くのですが・・・。
ジョイ役にはキャロル・ホワイト。若いあまり、間違い、傷つき、後悔しながらも、しっかりと前を向いて歩き、ジョニーのため、デイブのため、愛のために生きる母親、女性を好演しています。
デイブ役にはテレンス・スタンプ。偶然にも「イエスマン」を観た後にこの作品を観たので、彼の現在と若かりし頃のギャップに驚きました。この作品ではギターの弾き語りで歌うシーンがあるのですが、心に染みる素敵な歌でした。
そう、この作品では随所に多くの歌が流れるのですが、労働階級の苦悩を歌詞にしたためたメッセージ性のある、けれども誇張はせず素朴な感じのする曲調で安らぎを与えてくれる曲ばかりです。
ラスト。
ジョイは愛のために生きるのですが・・・その想いが強過ぎたようで・・・。
でもまぁ、仕方のないことなのかなぁ・・・どうなんでしょ(^_^;
さらに、あれほどトムを毛嫌いしていたのねぇ。ジョニーの実父であるという理由もあるのかなぁ。結果は目に見えていましたけどね。
ラストシーンは、どういう状況なのでしょう・・・弁護士との面会なのでしょうか。
「完璧な生活なんてない。」
「あるものだけで何とか幸せにならなくちゃ。」
というセリフに、妙に納得してしまいました。
「夜空に星のあるように」という邦題の意味が何だろうと気になっていたのですが、「あるものだけでも輝けるように」ということなのでしょうね。
悲しいラストが多いケン・ローチ監督の作品の中では、前向きなラストだったと思います。
Title:
POOR COW
Country:
UK (1967)
Cast:
(Joy)CAROL WHITE
(Tom)JOHN BINDON
(Aunt Emm)QUEENIE WATTS
(Beryl)KATE WILLIAMS
(Dave Fuller)TERENCE STAMP
Director:
KEN LOACH
