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記憶をなくした夫と再会した妻の決意。
その年のカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞したアンリ・コルピ監督の作品です。
フランス、パリ。町はパリ祭。カフェを営む女主人テレーズも忙しそうです。恋人のトラック運転手からは「今度の金曜日にでもショーリュウへバカンスへ行こう。」と誘われます。
しかし、あまり気乗りしないテレーズ・・・。
祭りも終わり、町の者たちは次々とバカンスへ出かけます。店も暇になるテレーズ。そこへ、毎朝「セビリアの理髪師」を歌いながら店の前を通る浮浪者が・・・。
初めてその男を間近に見るテレーズ・・・その姿に彼女は驚愕します。
その男は、十数年前に逮捕されゲシュタポへと連行された最愛の夫アルベールだったのです・・・。
終戦後、十数年経ってもなおその傷は癒えずにいた悲しい夫婦の物語です。
全編を通してテレーズの気丈なまでの言動に、心の奥の悲しみが逆に伝わってきます。
2人が愛していた頃を描いていなくても、テレーズが十数年会えずにいたアルベールを心から愛していたことが十分に伝わってきます。
それ故に、テレーズの想いがアルベールに届かないことが一層悲しみを募らせます。
アルベールは記憶をなくしていました。
さらに、十数年の長い年月がアルベールの容姿も変えてしまったようです。叔母や甥をアルベールに会わせても彼が本当にアルベールなのか・・・誰にも判りませんでした。
それでも、テレーズ1人だけは夫アルベールだと信じます。
テレーズは1人でアルベールの記憶を取り戻そうとするのですが・・・。
テレーズ役のアリダ・ヴァリが強くそして優しい女性を熱演しています。彼女のキリッとした目が印象に残ります。
アルベール役にはジョルジュ・ウィルソン。かすかに記憶を思い出す難しい役を好演しています。存在感もありますね。最近の作品では「愛されるために、ここにいる」で主人公の父親役を演じています。大好きな作品です。
クライマックスに衝撃のシーンがありました。
テレーズの指先と瞳に真実が突き付けられてしまいます。
幸せから不幸へと突き落とされてしまうかのようなシーンでした。
そこから一気にラストシーンへ。
町の人たちもいい人ばかりでしたね。仲間意識が強いのかなぁ。
あの後のアルベールはどうなったのでしょうね。
テレーズの言葉が唯一の救いであり、また、彼女の本当の戦いがこれから始まるのだと予感させます。
「無情」という言葉が心に残ります。でもそれはアルベールを突き放すことではなく、ゆっくりと時間をかけて彼と付き合っていこうとするテレーズの決意の表れなのでしょう。
夫婦の愛情を描いている作品ですが、母性、慈愛に満ちた作品でもありました。
Title:
UNE AUSSI LONGUE ABSENCE
Country:
France/Italy (1961)
Cast:
(Thérèse Langlois)ALIDA VALLI
(The Tramp)GEORGES WILSON
(Alice)CATHERINE FONTENEY
(Martine)DIANE LEPVRIER
(Truck Driver)JACQUES HARDEN
Director:
HENRI COLPI
Awards:
Cannes Film Festival 1961
(Golden Palm)HENRI COLPI
