Comment:
流れ者の男と雑貨店の女主人との愛の顛末。
シドニー・ルメット監督の初期作品です。
ニューオーリンズで流しのギター弾きをしていた「ヴァル」ことヴァレンタイン・ゼーヴィアは、あるパーティーで乱闘騒ぎを起こしてしまいます。
留置所に入れられたものの、街を出ることを条件に釈放されます。
南部の田舎町ツーリバース。
豪雨の中、車を走らせていたヴァルでしたが、故障してしまい、近くの交番に助けを求めます。出てきたのは保安官の妻ヴィーでした。今、保安官たちは脱走犯を追っている言うヴィー。誰も交番に入れてはならないと言われていたのですが、ヴァルを信じ入れてしまいます。
ヴァルの身の上を聞いたヴィー。
30歳になるヴァルは堅気になることを決意していました。
そんなヴァルのために、ヴィーは翌日、雑貨店「トーランス商店」の女主人レディーに雇ってもらえるよう仲介するのですが・・・。
ヴァルが堅気になる過程を描いていくのですが、周りの人たちがそうはさせません。
・・・なぜなら、ヴァルがカッコ良すぎるから(^_^;
ヴァル役がマーロン・ブランドですからね。何なのでしょう、あのフェロモンは(^_^;
目に魅力があるのかなぁ。仕種にも注目ですね。相手の女性の後ろの柱に片腕をもたれながら語る姿・・・。歯の浮くような詩的な語り口・・・。あたかも女性を誘うような思わせぶりな態度ばかりするのですが、本人には全くその気はなく、自然と出てしまう・・・何とも罪作りな男です。でも、マーロン・ブランドだからこそ、そんな仕種も自然に見えてしまうから不思議です。
女優陣も実に個性的です。
特に注目すべきは、雑貨店の女主人レディー役のアンナ・マニャーニですね。女性として決して若くはない年代になり、夫ジェーブとの愛も冷め、仕事にしか生きる活力を見い出せなくなったレディー。今までジェーブが病に倒れ病院にいたからよかったものの、退院し自宅療養し始めてからは、表面では気丈に振舞う彼女でも心の中では疲れ切っていました。
そんなある日、若く魅力的なヴァルがふらっとあらわれ・・・。
彼女の情感溢れる演技に惹き付けられます。何かの作品で観たことあるなぁと調べてみたら「無防備都市」にも出演していました。「無防備都市」でも力強い女性を熱演し、彼女のラストシーンは印象深いものになっていました。
もう1人は町の嫌われ者のキャロルを演じたジョアン・ウッドワードです。キャロルは町のトラブルメーカー。酒場では出入り禁止。運転も禁止されているのですが、お構いなく暴れまわっています。その姿は、ニューオーリンズでのヴァルと同じだったのでしょうね。ニューオーリンズでのヴァルの噂を知っていたキャロルはヴァルを誘い一緒に町を出ようとするのですが・・・。
常にキレまくりのキャロルを彼女が熱演しています。
クライマックスに近づくにつれ、衝撃の事実も明かされ、ヴァル、レディー、そしてジェーブ、それぞれの心の中に炎が燃え上がります。
黒人だけでなく他の人種や町の風紀を乱す者への差別が激しい南部の町・・・悲しいストーリーでしたが、ラストシーンで、ヴァルが着ていたトレードマークの蛇皮のジャケットが良い意味を持っていたと思います。
「野生の象徴だった蛇皮の服」
キャロルはこの蛇皮の服の力を借りて1人で旅立つ決意ができたのでしょうね。
ちなみに、デヴィッド・リンチ監督の「ワイルド・アット・ハート」の主人公セイラーが着ていた蛇皮のジャケットは、この蛇皮のジャケットがモデルだとか。どちらも「野生と自由」を象徴しています。
Title:
THE FUGITIVE KIND
Country:
USA (1960)
Cast:
(Valentine 'Snakeskin' Xavier)MARLON BRANDO
(Lady Torrance)ANNA MAGNANI
(Carol Cutrere)JOANNE WOODWARD
(Vee Talbot)MAUREEN STAPLETON
(Jabe M. Torrance)VICTOR JORY
(Sheriff Jordan Talbot)R.G. ARMSTRONG
(Nurse Porter)VIRGILIA CHEW
(David Cutrere)JOHN BARAGREY
Director:
SIDNEY LUMET
