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貧しい黒人たちの集落とカーニバルを舞台にした純愛ラブ・ストーリー。
その年のカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞したマルセル・カミュ監督の作品です。ヴィニシウス・デ・モライスの戯曲を基にした作品ですが、そのルーツはギリシャ神話のオルペウスの物語にまでさかのぼります。
DVD特典にはオルペウスの物語が要約されています。なるほど、確かにオルフェも同じ運命を辿っていますね。
この作品はギリシャ神話をブラジル、リオ・デ・ジャネイロを舞台にして描いています。
街は明日のカーニバルを待ち切れないかのように大賑わいです。街から遠く離れた山頂で暮らす黒人たちの集落もこの時ばかりはと、一文無しになろうともカーニバルの準備と稽古に余念がありません。
路面電車の運転手オルフェは集落の人気者。歌、ダンス、ギター。才能に溢れたオルフェは女性たちの憧れの的でした。そんなオルフェもミラとの結婚を決意しようとしていました。
役所でオルフェは名前を聞かれると、係の男が「じゃ花嫁さんはユリディスだ。」と言います。嫉妬深いミラは怒り出しますが、係の男は神話に例えた冗談を言っていただけでした。
しかし、その時はまだ知りませんでした。
その日に、オルフェが路面電車に乗せた見慣れない美しい女性の名がユリディスであることを・・・。
この作品を一言で例えるなら「躍動感」ですね。
サンバのリズムに合わせて踊り出す黒人たち。日々の暮らしも大変なはずなのに、全財産を使い果たしてでもカーニバルに命を懸けるからなのでしょうか。強い生命力を感じます。
人気者のオルフェでさえも愛用のギターを質屋に売って生活を切り詰めています。なのにミラときたら・・・。
ミラは嫉妬深く、自信家という厄介な性格の持ち主。でも、煽てられるとすぐに乗ってしまうところに茶目っ気もあります。カーニバルでは、オルフェが太陽、ミラが昼の女王役となりダンスシーンを盛り上げます。さすがにダンスのキレが違いますね。
ユリディスは従妹のセラフィナを訪ねるためにリオへやって来ました。このセラフィナが陽気な女性でこの作品をストーリーに面白味を加えていきます。セラフィナはカーニバルでは夜の女王役でした。
とういことで・・・セラフィナの家は、なんとオルフェの家の隣りでした・・・ちょっと強引?
再会したオルフェとユリディスはお互いに惹かれ合っていくのですが・・・。
ユリディス役のマルベッサ・ドーンをはじめ、そのほとんどが役者経験の無い人たちばかり。しかし、経験の無さを感じさせない演技を披露しています。
特にオルフェ役のブレノ・メロはサッカー選手、キーパーソンとなる死神役のアデマール・ダ・シルヴァは三段跳びの選手だというから驚きですね。
カーニバルの稽古や本番のシーンでは熱狂的なダンスに注目です。あのリズム感、足使い、腰のキレは日本人では到底真似できない持って生まれた才能なのでしょうね。
また、音楽も素晴らしいです。激しいサンバのリズムをバックにして、オルフェが歌う優しいメロディのボサノヴァが心にスッと入り込んできます。
ボサノヴァは元来、サンバが起源となって派生した音楽ですからね。サンバと合って当然なのかもしれませんね。
ラストになると、趣きがガラッと変わり、宗教的なイメージが色濃くなっていきます。でも、ラブ・ストーリーであることに変わりありません。この辺りがギリシャ神話をそのままなぞっているかのようでしたね。
ラストシーンの少年ベネディットとゼッカ、そして、白い服を着た女の子が日の出を見つめます。あの女の子は突然出てきましたね。ユリディスの生まれ変わりなのでしょうか。
ゼッカが次のオルフェなら、ベネディットは誰の生まれ変わりなのでしょう・・・死神ではないですよね?オルフェが慈悲を頼むエルメスかな?
・・・そういえば、死神の正体がまったく判らなかった・・・。
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Title:
ORFEU NEGRO
Country:
Brazil/France/Italy (1959)
Cast:
(Orfeo)BRENO MELLO
(Eurydice)MARPESSA DAWN
(Mira)LOURDES DE OLIVEIRA
(Serafina)LÉA GARCIA
(Death)ADEMAR DA SILVA
(Hermes)ALEXANDRO CONSTANTINO
(Chico)WALDEMAR DE SOUZA
(Benedito)JORGE DOS SANTOS
(Zeca)AURINO CASSIANO
Director:
MARCEL CAMUS
Awards:
Academy Awards, USA 1960
(Oscar(Best Foreign Language Film))
Cannes Film Festival 1959
(Golden Palm)MARCEL CAMUS
Golden Globes, USA 1960
(Golden Globe(Best Foreign Film))
