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人気カメラマンが遭遇する事件とその顛末?を描いた作品。
その年のカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞したミケランジェロ・アントニオーニ監督の作品です。
モダンかつスタイリッシュ、先鋭的な作品ですね。1960年代の作品なのに古臭さを感じません。
イギリス、ロンドン。安宿から出てくる貧しい人たち。その中に紛れて出てきた青年は、ロールス・ロイスのオープンカーに乗って颯爽と街に戻ります。
青年は人気カメラマンでした。
撮影スタジオには、アシスタントとモデルたちが既にスタンバイ。青年は早速、撮影を始めます。
写真を撮ることだけに執着する青年。モデルとの官能的な撮影が終わると突然冷めたように立ち去り、次の撮影を始めます。
しかし、彼はかなりの自信家であり、自己中心的な考えの持ち主でした。撮影が気に入らないと、モデルに当たり散らし、スタジオから出て行ってしまいます。
自宅に戻ると、同棲?しているパトリシアと画家のビルが出迎えます。少しの休憩の後、スタジオに戻るとモデル志望の若い女性が2人いましたが、青年は目もくれず、再び外出してしまいます。
パートナーのロンと店を買い取るつもりなのか、お目当ての骨董屋へと行きます。しかし、店主は留守。戻るまで向かいの公園を散歩することにしました。
緑の芝生が一面に生い茂る公園。青年はカメラを手に写真を撮り続けます。すると、高台へ行こうとするカップルに目が留まり追いかけることに・・・。
隠れながら、カップルの姿を写真に撮りますが、女性に気付かれネガを渡してと詰め寄られます。しかし、青年はいつものように横柄な態度でネガを渡しません。すると、いつのまにか男性がいなくなっていました。
女性はその場から逃げるように立ち去ります。青年はその姿も写真に撮りますが、その写真には恐るべき真実が隠されていました・・・。
まぁ、この青年の性格の悪さときたら・・・(^_^;
カメラマンの才能があるから、周りからもてはやされているだけで、そうでなければ誰からも相手にされないのでは?と思ってしまいます。
でも、カメラマンとしての彼はいたって真剣。最初のモデルとの撮影シーンはエロチックな名シーンですね。
今まで相当遊んでいたのか、女性にはもうコリゴリと言った感のある青年でしたが、公園で会った女性に惹かれてしまいます。でも、それは女性としてではなく、被写体としてなのでしょうね。
しかし、彼女を撮ったネガを現像すると、青年はあることに気が付きます。そこから、殺人事件へと発展していくのですが・・・。
青年役にはデヴィッド・ヘミングス。本物のカメラマンのような見事な手さばきでしたね。この青年には一応「トーマス」という名前があるそうなのですが、劇中では、1回も名前で呼ばれていません。名前で呼ばれるほど親しい人がいなかったということでしょうか。ミケランジェロ・アントニオーニ監督を投影した人物という説もあるそうですが・・・。
原題の「BLOWUP」とは、写真を引き伸ばすことだそうです。
タイトル通り、青年は現像した写真を次々と引き伸ばし・・・。
このシーンは食い入るように観てしまいました。これからどんな展開が待っているのか・・・。
あれ?
何だこりゃ?
これが「不条理」と言わしめる展開か・・・。
でも、これはこれで結構好きかも。事件はもちろんですが、青年はいったい何をしたかったのでしょうね。
邦題の「欲望」は、まさにその疑問に答えてくれているような気がします。
彼は本能のまま写真を撮り、そのためには貧しい人と偽って安宿に泊まり、妻ようで妻でない女性と同棲し、目に留まった女性を強引にモデルに仕立てる。そして、かつてない経験を目の当たりにし深みに嵌ってしまう・・・。
彼の言動は、ただ「欲望」にかられていただけなのかもしれませんね。
オープニングとラストに登場する白塗りの青年たち。一言も発せずマイムのみで青年と対話します。
この謎の青年たちの解釈も諸説あるようですが、私には、今まで「目で見える物」のみに欲望を抱いていた青年が、「目で見えない物」でも想像力で膨らませるようになれたことを表現していたのかなぁ・・・なんて思いました。
もしかしたら、引き伸ばした写真や彼が公園で見た人物もすべて想像の産物なのかも・・・。
ラストシーンでも、あるはずのないテニスボールの音がかすかに聞こえたような・・・想像力を膨らませ過ぎかな(^_^;
答えのない不条理サスペンス。あなたならどう観ますか?
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Title:
BLOWUP
Country:
UK/Italy/USA (1966)
Cast:
(Jane)VANESSA REDGRAVE
(Patricia)SARAH MILES
(Thomas)DAVID HEMMINGS
(Bill)JOHN CASTLE
(The Blonde)JANE BIRKIN
(The Brunette)GILLIAN HILLS
(Ron)PETER BOWLES
Director:
MICHELANGELO ANTONIONI
Awards:
Cannes Film Festival 1967
(Golden Palm)MICHELANGELO ANTONIONI
National Society of Film Critics Awards, USA 1967
(NSFC Award(Best Director))MICHELANGELO ANTONIONI
(NSFC Award(Best Film))
