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シチリア島の島民を巻き込んだ新人オーディションを開催した映画プロデューサーと美しい女性の物語。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督の映画に対する想いを込めた作品です。
イメージとしては「映画」をテーマにした「ニュー・シネマ・パラダイス」と後に製作された「虐げられた女性」がヒロインとなる「マレーナ」の中間的な作品といったところでしょうか。
物語は1953年のシチリア島レアルチーザから始まります。
ローマのウニベルアリア映画社の宣伝カーから「銀幕の新人オーディション」を開催することが告げられると、島民たちが集まってきます。
決して豊かな暮らしとは言えない島民たちにとって、島から出ること、そして、島からスターが生まれることで島が活気付くことを願っていました。
映画プロデューサーであるジョー・モレッリは、車から撮影機材をセッティングし、希望者のオーデションを行います。
参加料1500リラを受け取って・・・。
修道院に住む美しい女性ベアータ。しかし、教育を受けておらず貧しい彼女は、町の人たちから「バカ」呼ばわりされていました。ベアータは、自分の身体を男に見せてまで得た1500リラを手に持ってオーディションに参加するのですが・・・。
ストーリーはジョーとベアータの出会いとその顛末がメインですが、それと同じくらいに島民たちのオーディションにかける想いが描かれています。
皆、初めは一攫千金を手にしたいという気持ちで受けているのでしょうね。誰も「役者になりたい」とか「有名になりたい」だなんて思っていないようでしたね。その辺りが、日本で開催されているオーディションと感覚が違いますよね。皆、必死です。
しかし、そのように感じたのも初めのうちだけでした。カメラを目の前にした島民たちの活き活きとした姿。周りを囲む島民たちの見守る姿。
漁師。
憲兵。
山賊。
共産党の地区職員。
謎の黒衣の老人。
当時、娯楽が少なかったであろう彼らにとって、皆、映画が大好きだったのです。そして、このオーデションは、自らの人生を振り返ることができたターニングポイントでした。
ベアータもその1人。ジョーの軽い一言を信じ込み、ローマで女優になることを夢見たベアータは、ジョーの後をついて行ってしまいますが・・・。
ジョーも詐欺師に騙されたり、マフィアの葬儀を撮影することを頼まれたりとトラブルに見舞われますが・・・。
ジョー役にはセルジオ・カステリット。「マーサの幸せレシピ」で好演していたシェフ役の人ですね。この作品は、ジョーの行動を追って行くストーリーになっているので、ほとんど出ずっぱりの彼なのですが、それに耐え得る演技力の持ち主です。
ベアータ役にはティツィアーナ・ロダト。「マレーナ」のモニカ・ベルッチを彷彿とさせる長い黒髪とミステリアスさを持ちながら、あどけなさも残す女性です。現在はどうしているのでしょうね。
ラスト。
ジョーの真実が明かされ、ベアータの運命も大きく変わってしまいます。
ジョーはオーディションで撮影した音声テープを聴きながら何を思ったのでしょうね。
明日を夢見た島民たちとベアータへの償いでしょうか。
島民たちの映画にかける想いを目の当たりにし、そして今、そのテープを聴くことで、ジョーもやっと自分の人生を振り返ることができたのでしょうね。
Title:
L'UOMO DELLE STELLE
Country:
Italy (1995)
Cast:
(Joe Morelli)SERGIO CASTELLITTO
(Beata)TIZIANA LODATO
Director:
GIUSEPPE TORNATORE
Awards:
Venice Film Festival 1995
(Grand Special Jury Prize)GIUSEPPE TORNATORE
