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辺境の地にある施設で起きた住人たちのクーデターを描いた作品。
ニュー・ジャーマン・シネマの旗手ヴェルナー・ヘルツォーク監督の初期作品です。いやぁ、すごい作品を観てしまいました。この作品は、カルト的な作品に分類されるのでしょうね。
やはり、作品に登場する人物たちについて語るべきでしょう。
登場する人物は、全員、成人になっても低身長のままの「小人」です。
舞台となる施設が小人を管理する施設なのかなぁと思っていたのですが、観ているとどうやら違うようなんですよねぇ。
ストーリーは、施設の所長以下、ほとんどの人たちが町へ出かけたことから騒ぎが起き始めます。
施設に残されたのは、
特に問題を起こしてばかりだった10人の小人。
盲目の2人の小人。
炊事婦の1人の小人。
そして、彼ら指導者である1人の小人だけでした。
10人の小人は、日頃の不満を爆発させてクーデターを起こします。
炊事婦の小人は施設から逃げ出しますが、指導者の小人は彼らに抵抗し、10人の中の1人の男を人質にして建物の中に立てこもります。
物を投げ、人質の解放を要求する小人たち。
さらに、小人たちは建物の電話線を切り、外部との連絡手段を断ってしまいます。何もできない指導者の小人。
9人の小人たちは、さらに不満を爆発させ施設を荒らしまくります。
そして、ここから9人の小人たちの荒らしっぷりが描かれていくわけですが・・・。
まぁ、ハチャメチャな彼らですね。大人なのに子供のような・・・。小人だから見た目が子供のようですが、そうではなく、精神が幼かったのです。
思うに、この施設は精神病棟であり、心が幼い小人が収容されていたのでしょうね。
劇中、町に通じている国道から車を運転する小人の女性が道を尋ねに来るのですが、彼女は施設の小人ではないようでした。つまり、この作品の世界の人間はすべて小人なのかも・・・。
精神病患者たちの反乱。
束縛と自由。
それが、この作品のテーマだったのかもしれません。
9人の小人たちは、物と命ある動植物との違いが判らないようでもありました。逆に捉えるのであれば、すべては平等、同等の価値であることを示しているのかも・・・。
彼らは神にでもなったつもりなのでしょうか。
最後の晩餐。十字架にサルを縛り、行進する小人たち・・・。
やりたい放題の彼らの所業に、ついに怒りの限界に達した指導者は・・・。
指導者の小人にいったい何が起きたのでしょうか。
彼らの結末を知りながら、ストーリーを観る構成になっています。極限にまで追い詰められた小人は、精神に異常をきたしてしまうのでしょうか。
何も語られることはない状況と世界観に、観ている者が個々に想像を膨らませることで、束縛された世界に自由な広がりを与えることができる作品・・・なのかもしれませんね。
Title:
AUCH ZWERGE HABEN KLEIN ANGEFANGEN
Country:
West Germany (1970)
Cast:
(Hombré)HELMUT DÖRING
(Erzieher)PAUL GLAUER
(Pobrecita)GISELA HERTWIG
(Chicklets)HERTEL MINKNER
(Piccini)GERTRUD PICCINI
(Theresa)MARIANNE SAAR
(Cochina)BRIGITTE SAAR
(Pepe)GERD GICKEL
(Azucar)ERNA GSCHWENDTNER
(Territory)GERHARD MAERZ
(Anselmo)ALFREDO PICCINI
(Schweppes)ERNA SMOLLARZ
(Chapparo)LAJOS ZSARNOCZAY
(The President)PEPI HERMINE
Director:
WERNER HERZOG
