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人気作家である男性と熱烈なファンである女性の日常を描いたラブ・コメディ。
観る者をハッピーにする世界観は「大人版アメリ」のようでした。
夫に先立たれたオデット・トゥールモンドは、息子ルディと娘スー=エレンを育て上げ、昼はデパートの化粧品売り場で働き、夜は羽飾りの内職で生計を立てながら自分の人生を謳歌していました。
彼女が最もハマっているのは人気作家バルタザール・バルザン。彼の本はすべて買い揃え、その世界に浸ることが至福の喜びであるかのようです。
そんなある日。彼の新作のサイン会があると聞き、会場へと向かうのですが・・・。
メルヘン。
オデットに最も当てはまる言葉だと思います。彼女は夢やあこがれを常に抱き、自分の溢れ出す幸せを周りの人たちにも与えることができる女性なのでしょうね。
そんな彼女の想いが「アメリ」同様、特殊効果で表現されています。「地上5センチの恋心」という邦題もそこから付けられていると思うのですが、5センチなんてとんでもない。彼女の「幸せバロメータ」はどんどん上がっていきます。
また、オデットの周りにいる登場人物も実に多彩です。
人気作家バルタザールは女性にモテモテでマッチョな男ですが、心は傷つきやすいナイーブな性格の持ち主。
オデットの息子ルディは美容師でゲイ。オデットの良き相談相手でもあります。
オデットの娘スー=エレンは気性が激しく、ニートの恋人ポロを2年間も家に住まわせています。
さらに、オデットの同僚で口が軽いナディーヌ。
オデットたちが住むアパートの向かい部屋に住んでいる筋トレ好きなフィリップ。
そして、オデットにしか見えない?イエス。
その中でも彼女が憧れている人気作家バルタザールは、とあるテレビ番組で新作を酷評され人気が下降気味。繊細なバルタザールは意気消沈する中、さらに妻とその酷評した批評家が密会している場面に遭遇してしまい・・・。
そして、オデットからのファンレターを読み涙したバルタザールがとった行動とは・・・。
こんなにも個性豊かな人物が登場すると、メインキャストの影が薄くなる場合もありますが、オデット役のカトリーヌ・フロとバルタザール役のアルベール・デュポンテルは存在感を失うことなく最後まで作品を盛り上げています。
監督は小説家エリック=エマニュエル・シュミット。この作品で監督デビューだそうです。次回作も楽しみですね。
演出としては、オデットがジョセフィン・ベイカーのジャズナンバーに乗せて口ずさみ、そして、踊り出すコミカルなシーンがこの作品を象徴しているかのようでした。
オデットの幸せが広がっていくイメージ。
終盤でのオデットとルディ、スー=エレン、バルタザールと息子フランソワでのダンスシーンには自然と笑みがこぼれてしまいました。
ラスト。
オデットにしか見えないイエス。彼はオデットの清らかな心そのものだったのでしょう。彼女は無理をして嘘を付くあまり、胸が苦しくなってしまったのでしょうね。
「幸せになるには自分を受け入れること。」
バルタザールのいかにも作家らしい口説き文句が心を和ませてくれました。
Title:
ODETTE TOULEMONDE
Country:
France/Belgium (2006)
Cast:
(Odette Toulemonde)CATHERINE FROT
(Balthazar Balsan)ALBERT DUPONTEL
(Olaf Pims)JACQUES WEBER
(L'éditeur)ALAIN DOUTEY
(Nadine)CAMILLE JAPY
(Rudy)FABRICE MURGIA
(Sue Helen)NINA DRECQ
(La dame sèche)JACQUELINE BIR
(Isabelle Balsan)LAURENCE D'AMELIO
(François)JULIEN FRISON
(Filip)ERIK BURKE
(Florence)AÏSSATOU DIOP
(Polo)NICOLAS BUYSSE
(Jésus)BRUNO METZGER
Director:
ERIC-EMMANUEL SCHMITT
