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孤児院で暮らす少年が実母を探す旅に出る感動作。
厳しい現実の中で生きる純真無垢な少年の姿に目頭が熱くなります。
極寒のロシア。辺境の地にある孤児院に1組のイタリア人夫婦がやって来ます。その目的は養子となる子供を選ぶことでした。それを知ってか、孤児院の子供たちはイタリア人夫婦の周りに集まってきます。
この貧しい暮らしから抜け出せる唯一の方法が養子として引き取られることだったからです。
今回、引き取られることになった少年の名はワーニャ。この日から、皆に羨ましがられるワーニャは「イタリア人」と呼ばれるようになりました。
しかし、引き取られる前に事件が起きます。
以前、養子として出て行ったムーヒンの実母が孤児院にやって来たのです。ムーヒンの母はムーヒンを捨ててしまったことに後悔し、ムーヒンの足跡を辿り、ここまでやって来ました。
しかし、院長は無情にも突き返してしまいます。
ムーヒンの母を通して、実母の愛を知るワーニャ。次第にワーニャは養子ではなく実子として本当の母親を知りたくなるのですが・・・。
まず、驚いたのが、この作品が事実を基にしているということでした。あんな人身売買を目的としているような孤児院が本当にあるのでしょうか。そして、あまりの孤児の多さにも驚かされます。経済情勢も絡んでいるとは思いますが、あまりに無責任過ぎるのではないでしょうか?
院長やマダムのような金の亡者ばかり裕福になってしまう・・・何だかやるせないですね。
また、養子として引き取られることなく孤児院で暮らしているカリャーンをリーダーとした年長者組が威張っているのに悲しくも見えました。ワーニャが実母を捜したいということを知ったカリャーンが制裁を加えるシーンは、カリャーンの嫉妬からではなく、もしワーニャが事件を起こすようなものなら、今後の養子縁組にも影響があるかもしれないことを危惧してのことだったからかもしれません。
しかし、ワーニャの実母を捜したいという気持ちこそ子供たちのあるべき姿。
ワーニャの気持ちに賛同した年長者の少女イルカは、ワーニャに字を教え、母を探す旅を手助けします。しかし、駅でイルカは男に取り押さえられ、ワーニャは1人で列車に乗り込み旅立ちます。
ことの次第を知ったマダムは、ワーニャを捕まえるために警察の手も借りて執拗に捜索します。
はたして、ワーニャは無事、実母のもとへ辿り着けるのか・・・。
ワーニャ役にはコーリャ・スピリドノフ。幼さの中にも強い意志を持つワーニャを好演しています。たまに、演技し過ぎ感もありましたが、1つ1つの仕草が可愛かったですね。もっと彼を自然に演じさせるべきだったかなぁ。実母の家の前で髪型を整えるシーンなんて可愛らしいシーンの1つですが、実際、幼い子供があんなことするのかと思ってしまいました(^_^;
監督はアンドレイ・クラフチューク。この作品がデビュー作だそうです。今後に期待ですね。
ラスト。マダムのパートナーであるグリーシャの追跡から逃げるワーニャ。
しかし・・・。
ワーニャの命を懸けた訴えにも感動より悲しみが込み上げてきてしまいました。なぜ、こんな幼い子供にこれほどまでのつらい想いをさせなければならないのか・・・。
ラストシーンの演出は良かったですね。一番観たいであろう感動シーンをあえて入れず、もしかしたら、物足りないとさえ思ってしまうラストシーン・・・。
しかし、それは「良かったね。感動した。」だけで終わらせたくなかったからなのでしょう。
「この道は母へとつづく」という感動の物語の背景には、ロシアでの増加する孤児人口を社会問題として提起しているようでした。
Title:
ITALIANETZ
Country:
Russia (2005)
Cast:
(Vanya Solntsev)KOLYA SPIRIDONOV
(Madam)MARIYA KUZNETSOVA
(Grisha)NIKOLAI REUTOV
(Headmaster)YURI ITSKOV
(Kolyan)DENIS MOISEENKO
(Sery)SASHA SIROTKIN
(Nataha)POLINA VOROBIEVA
(Irka)OLGA SHUVALOVA
(Anton)DIMA ZEMLYANKO
(Guard)RUDOLF KULD
Director:
ANDREI KRAVCHUK
Awards:
Berlin International Film Festival 2005
(Crystal Bear - Special Mention(Best Feature Film))ANDREI KRAVCHUK
(Deutsches Kinderhilfswerk Grand Prix(Best Feature Film))ANDREI KRAVCHUK
