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辺境の村で暮らす幼い少女の物語。
生と死を純粋に受け入れる少女の可愛らしくも切ない物語です。
1940年頃のスペイン。カスティーリャのオユエロス村に映画をみせる巡回車がやって来ます。この村に娯楽は無いのでしょう。大はしゃぎで喜び、車に群がる子供たち。
今回の映画は「フランケンシュタイン」。
午後5時になり、公民館には子供たちだけでなく大人たちも自前の椅子を持って集まってきます。
ここまでは、「ニュー・シネマ・パラダイス」のようなストーリーなのかなぁと思ったのですが・・・。
一方、養蜂場で働く1人の男フェルナンド。仕事を終え、家に帰ると妻テレサは出かけ、イサベルとアナの2人の娘は映画を観に行ったと小間使いのミラグロスから聞かされます。
フェルナンドの家は名家なのか、家というより屋敷に近いですね。
美しい妻テレサは、駅にいました。相手の無事を祈りながらも自らの置かれた悲惨な状況を書き綴った手紙を送るために・・・。
この相手は誰だったのでしょうね。異国の地にいる愛する男へ・・・とか?
イサベルとアナは「フランケンシュタイン」に釘付けでした。
フランケンシュタインを作った博士と助手のシーン。
少女メアリーとフランケンシュタインが出会うシーン。
そして、フランケンシュタインはメアリーを殺してしまいます。
そこで、アナはイサベルに質問します。
「どうしてフランケンシュタインは少女を殺したの?」
そこから、アナの「生と死」の空想が膨らみ始めるのですが・・・。
とにかく、2人が可愛いです。いたずら好きなイサベルと純真無垢なアナ。この作品のタイトル「ミツバチのささやき」は、この2人の少女のイメージなのでしょうね。
イサベルからの「フランケンシュタインは村はずれの家にいる」という出まかせを真に受けてしまうアナ。2人は学校の帰りに廃墟となっているその家へ行きますが、もちろんフランケンシュタインはいません。
それでも、翌日にも見に行ってしまうアナ。しかし、アナには「何か」が見えているかのようです。それが、ただ遊んでいるだけなのか?アナの様子を隠れて見ていていたイサベルにも判りません。
そして、その廃墟と化した家に汽車から脱走した男が逃げ込んで、さらなる展開が待っていました。
アナにとっては、衝撃的な出来事だったに違いありません。空想?でしかいなかった人物が現実に目の前に現れたのですから。
しかし・・・。
父フェルナンドの制止を聞かずに森に逃げ込んでしまうアナ・・・そして、そのまま家には帰って来ませんでした。
村の人々が総出でアナを探します。
1人、森の中を彷徨うアナ。そして、出会います・・・空想上でしか会うことしかできなかった存在と・・・。
監督はヴィクトル・エリセ。この作品が長編デビュー作だそうです。観ている者を空想の世界へと導く演出が秀でていますね。高度なCG技術が無い時代でも、終盤になると「となりのトトロ」や「パンズ・ラビリンス」を思い起こさせるほどです。見事です。
アナの「想像」上の存在と対をなすように、「映画の中のフランケンシュタイン」や「人体標本」、「脱走した男との出会い」などから現実的な「創造」としてアナが感じ、「命の尊さ」をアナの視点から優しく伝えている作品です。
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Title:
ESPÍRITU DE LA COLMENA, EL
Country:
Spain (1973)
Cast:
(Fernando)FERNANDO FERNÁN GÓMEZ
(Teresa)TERESA GIMPERA
(Ana)ANA TORRENT
(Isabel)ISABEL TELLERÍA
(Milagros, la criada)KETTY DE LA CÁMARA
(Guardia civil)ESTANIS GONZÁLEZ
(The Frankenstein Monster)JOSÉ VILLASANTE
(The Fugitive)JUAN MARGALLO
Director:
VÍCTOR ERICE
