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白人至上主義の兄弟の悲劇を描いた衝撃作。
エドワード・ノートンの迫真の演技に圧倒されます。
白人至上主義者のデレクは、ベニス・ビーチを縄張りとするグループ組織のリーダー格でした。グループの首謀者キャメロンに見出され、白人以外の人種を認めず、迫害、時には暴力で訴えることもありました。
その尋常ではない言動が次第に街をたむろする白人青年たちから憧れ以上の崇拝すらされる存在へと変わっていきます。
そんなある日の夜。縄張りを取られた黒人たちがデレクの車を襲います。しかし、彼らはデレクに返り討ちに合ってしまいます。
デレクを止める者は誰もいませんでした。弟ダニーの制止も届かずデレクは黒人たちに情け容赦ない暴行を加え現行犯で逮捕されます。
その3年後。
ダニーは、デレクを崇拝しキャメロンのグループに所属していました。ダニーも白人至上主義者としてデレクと同じ道を辿ろうとしています。それを止めるためにベニス・ビーチ校の校長ボブ・スウィーニーは、ダニーと2人だけのクラスを作ります。
クラスの名は「アメリカン・ヒストリーX」。
ボブはダニーに3年の刑期を終え出所してくるデレクが、なぜあのような事件を起こしたのかをレポートにして提出することを命じます。ダニーは何を考え、そして、何を書き記すのか・・・。
重いです。アメリカの人種差別問題。行き着くところまで行くとこのような形になってしまうのでしょうか。さらに、この作品は人種問題だけでなく、家族の在り方や社会倫理についても鋭いメスを入れています。
デレクは人の道を踏み外していたことに気付くのが遅すぎました。デレクは、人の言うことを何でも吸収して自分のものにしてしまうタイプだったのでしょうね。それが、スウィーニー校長でなくキャメロン、そして、父の言葉に耳を傾けてしまったことが悲劇でしたね。
そして、デレクの変わりゆく様子を見ながらも何も言えず、さらにデレクと同じ道を選んでしまうダニー。デレクの言動に共感していなかったはずでしたが、デレクが周りから英雄視され、刑務所に収容されてから、「デレクの弟」として見られてしまう自分を意識するようになってしまったのか、デレクが出所した3年後にはスキンヘッドの見事な白人至上主義者になっていました。
ダニーは周りに意識しがちな少年だったのかもしれませんね。良く言えば適応能力・順応能力がある、悪く言えば流されやすい性格でした。そんなダニーが、出所してきたデレクを見て、自分の存在が否定されたような感覚に襲われたのかもしれません。
明日までに提出しなければならないレポートに何も書き記すことができません。
しかし、デレクが語る刑務所での3年間の真実を聞き、ダニーは決意します。
それは、自分で決断したこと。その想いをレポートのタイトルにもなる「アメリカン・ヒストリーX」に書き記します。
デレク役にはエドワード・ノートン。穏やかな笑顔とは裏腹の逞しい肉体。そして胸にハーケンクロイツのタトゥー。その風貌から攻撃性が漲っています。狂気のカリスマ性もあるその演技に圧巻です。
ダニー役にはエドワード・ファーロング。エドワード・ノートンの演技を「炎」に例えると、エドワード・ファーロングは「氷」でしょうか。影のある繊細なダニーにピッタリな配役でした。
ラスト。ダニーにとって「アメリカン・ヒストリーX」は、「今までの自分との決別」、そして、「これからの自分への決意」だったのでしょう。
しかし・・・。
デレクはあの後「アメリカン・ヒストリーX」を読むのでしょう。そして、何を思うのでしょうか・・・。
出所したからと言って、すべての罪はタトゥーのように消えはしない。大きな罪は形を変えて罰が下ります。
デレクにとって「アメリカン・ヒストリーX」が同じ過ちを繰り返さない「楔」となるように・・・。
「怒りは君を幸せにしたか」・・・このセリフが印象に残りました。
Title:
AMERICAN HISTORY X
Country:
USA (1998)
Cast:
(Derek Vinyard)EDWARD NORTON
(Danny Vinyard)EDWARD FURLONG
(Doris Vinyard)BEVERLY D'ANGELO
(Dr. Bob Sweeney)AVERY BROOKS
(Davina Vinyard)JENNIFER LIEN
(Seth Ryan)ETHAN SUPLEE
(Cameron Alexander)STACY KEACH
(Stacey)FAIRUZA BALK
(Murray)ELLIOTT GOULD
(Lamont)GUY TORRY
Director:
TONY KAYE
