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外界との接触がなかった女性と医者との心の交流を描いたヒューマン・ドラマ。
ジョディ・フォスターが設立した映画製作会社の初作品だけあって、非常に力強い印象を受けました。
コヴィータ湖のほとりで暮らす老婆ケルティは、ロビンズヴィルの住民と断絶した世捨て人でした。ある日、食料を配達する青年が、ケルティの家の中に入ると、ケルティは亡くなっていました。
保安官と医者ジェリーが現場を調べると、一人の見知らぬ大人の女性が家に隠れていることに気がつきました。さらに、その女性は聴いたこともない言葉を話し、暴れ出してしまいます。
後に「ネル」という名前を持つことが判明するその女性は、戸籍には登録されていないケルティの忘れ形見でした。聴いたこともない言葉を話すのは、失語症だったケルティの言葉しか耳にしていなかったから・・・。
手に負えないと感じたジェリーは、大病院の精神科医ポーラと面会し助けを乞いますが、ポーラは自分の野心のため、ネルを病院へと入院させようとします。反対するジェリーは、法廷で争うことになり、その結果、ネルが1人で暮らしていけるのかを3ヶ月間観測することになるのですが・・・。
初めのうちは、ネルの選択すら無かった世捨て人としての生活に悲壮感が漂っていましたが、その悲壮感は都会で暮らすポーラにもあることが次第に感じ取ることができます。
他の人には負けたくない。
とりあえず、話を合わす。
本心を明かさない・・・孤独感。
人との接点はあってもポーラの心はネルの暮らしと何ら変わりありませんでした。むしろ、ネルのほうが感情を全身で表現していたのではないでしょうか。
3ヶ月間の観測の中でポーラの気持ちが変わっていくのも当然なのかもしれませんね。
ポーラ役のナターシャ・リチャードソンが好演しています。特に、自分の本心をジェリーに明かし涙するシーンはポーラの感情が強く伝わってきます。
そして、2人を温かく包み込むジェリーの存在が大きく見えました。ジェリー役にはリーアム・ニーソン。見た目も大きいですが、その存在感は見た目以上でした。
時に突飛な行動に出てしまうジェリーでしたが、それもネルを思ってこそ。彼がいなければネルは生きていなかったかもしれませんね。
3ヵ月後の法廷。ジェリーを通訳にしてネルが語り始めます。ネルがジェリーとポーラと過ごした3ヶ月間。町の住民とも出会い、さまざまな経験を得た後のネルのスピーチには説得力がありました。含みのある言い方などしないネルの純粋さが出ていたのではないでしょうか。
ネル役にはジョディ・フォスター。演じるのは難しい役であろうネルを見事に演じきっていましたね。熱演です。
人は1人では生きていけない。
ネルは1人ではありませんでした。心を通わす「メイ」がいて、そして今はジェリーやポーラがいます。ジェリーやポーラもお互いをそしてネルと心を通わせます。
心で語り合える友情や愛情の大切さを教えてくれる作品でした。
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Title:
NELL
Country:
USA (1994)
Cast:
(Nell Kellty)JODIE FOSTER
(Dr. Jerome 'Jerry' Lovell)LIAM NEESON
(Dr. Paula Olsen)NATASHA RICHARDSON
(Dr. Alexander 'Al' Paley)RICHARD LIBERTINI
(Sheriff Todd Peterson)NICK SEARCY
(Mary Peterson)ROBIN MULLINS
Director:
MICHAEL APTED
