監督:イシュトヴァン・サボー
キャスト:
アネット・ベニング、ジェレミー・アイアンズ、ショーン・エヴァンス
ブルース・グリーンウッド、トム・スターリッジロジャー、ミリアム・マーゴリーズ
ルーシー・パンチ、マイケル・ガンボン、ジュリエット・スティーヴンソン
製作:2004年、アメリカ
1938年、ロンドン。シドンズ劇場では大女優ジュリア・ランバートの舞台劇が拍手喝采を浴びていた。舞台監督である夫マイケルやアシスタントのエヴィ、スポンサーのドリー、良き理解者であるチャールズ、一人息子のロジャーらに支えられ、充実した人生を送っているジュリアだったが、ここ最近は疲れも溜まり休みたいと懇願していた。
そんなある日、マイケルの事務所に1人のアメリカ人青年がやって来た。名はトマス・フェネル。事務所の経理担当して雇われたトマスは幼い頃からジュリアの大ファンだった。ジュリアに興味津々のトマスにジュリアも若い青年の魅力に惹かれてしまうのだが・・・。
Comment:
大女優と若い青年との愛と2人を取り巻く人との駆け引きを描いた愛憎劇。
ジュリアの浮気から始まり、お金のないトマスに貢ぎ、そこに新人女優が登場。トマスと只ならぬ仲になりジュリアが嫉妬。年上のジュリアは大人の態度で別れを告げますが、その内なる心の中では復讐という名の炎を燃え滾らせていました。
・・・例えるなら「昼ドラの豪華版」と言ったところですね。
大女優ジュリアに対して息子ロジャーが的を得た例えをしています。
舞台の中だけで演じているのでなく、普段の生活、僕と話しているときでさえも演じているように見えると。
ジュリアは人に注目されたい欲求が強いのでしょう。舞台の中だけでは飽き足らず、高級レストランでチャールズが別れを告げようとすると、絶妙のタイミングで嘘泣きしながら別れないでと懇願したり、言葉の1つ1つが妙に台詞めいていたり、まるでジュリアの人生にも台本があるかのようでした。
そこへ登場するのが、ジュリアの演技の師であるジミー。既に亡くなっているジミーですが、ジュリアの前に度々現れ演技指導を今もなお続けています。ジュリアと会話するシーンは1つもないので、ジュリアの思考でも妄想でもなく、幽霊として現れているのでしょう。このジミーがジュリアにいつも助言しているところから、ジュリアが普段から演技しているように見えるのはジミーの影響があったのかもしれませんね。
しかし、トマスと恋に落ちてからジュリアは女優ではなく、ありのままの自分を出していたのではないでしょうか。決して若くはない1人の女性が息子と同じ年齢くらいの青年と恋に落ちる。常に注目されながらも代わり映えのなかった退屈な人生に、このシチュエーションが新鮮に感じたのでしょうね。
「真実の愛にはならない・・・いずれ別れがやって来る。」
ジュリアはそれを承知の上でトマスと付き合います。ジュリアは若い青年に恋する自分に酔っていたのかもしれませんね。
そして、やはり別れが来てしまうのですが、その別れ方がジュリアには許せなかったのでしょう。ジュリアの人生という舞台に土足で上がり込んできた新人女優エイヴィス。演技の才能があるエイヴィスには野心も持ち合わせていました。ジュリアと親交が深いと噂されるトマスに近寄り、トマスと深い関係になりジュリアの舞台へ出演できるようにと手を回してもらうのですが・・・。
「女性は怖い。」
その一言でした。しかもエイヴィスの相手は大女優ジュリア。あの仕返しは大女優ならではでしたね。やはりジュリアは普段から大女優でした。ただ仕返しするのではなく、さらに自分の名を轟かせ、周りの人間にも認めさせてしまう。ジミーが求めていた女優像にジュリアが辿り着いた瞬間でした。ジミーもやっと成仏できることでしょう。
ジュリア役にはアネット・ベニング。圧巻です。彼女の女優魂を観たような気がします。ラストのエイヴィスとの舞台対決は必見ですね。
邦題のような「華麗なる恋の舞台」だったかどうかは疑問ですが、女性を怒らすと後が怖いということが判りました・・・。
第62回ゴールデン・グローブ 女優賞(コメディ/ミュージカル)(アネット・ベニング)
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