監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
キャスト:ジェレミー・レニエ、デボラ・フランソワ
製作:2005年、ベルギー/フランス
まだ若い少女ソニアと青年ブリュノとの間に息子が生まれた。入院中に一度も見舞いにも来なかったブリュノを退院直後のソニアが探していると、ブリュノは路駐ドライバーを相手に小銭集めをしていた。ブリュノはまともな職にも就かずにその日暮しの生活を送っていたのだ。仕事をしてほしいと懇願するソニアに「クズどもと働けるか」と突っぱねるブリュノ。しかしブリュノは、これといった将来の計画も考えず、悪ガキどもと盗みを働きながら小銭を稼ぐ・・・。
そんなある日、闇ブローカーから子供も売買できることを聞かされ、ブリュノは生まれたばかりの我が子を売ってしまうのだった・・・。
Comment:
若者達の裏の側面をドキュメンタリー・タッチでリアルに描いた衝撃作。
音楽は一切無く、ブリュノの行動を追っていくストーリーです。
タイトルの「ある子供」とは、おそらくブリュノのことでしょう。
彼の行動はすべて子供染みています。彼には責任感が無いのでしょう。息子が生まれても愛でる様子も無く、盗んだ物と同じように売ってしまう。それが警察沙汰になると、自分だけ助かりたい一心で平気で嘘を付く。観ていて気分が悪くなりました。
しかし、ソニアもまた若過ぎました。出産したことによって母親としての自覚はあるのでしょうが、やはり、一人で赤ん坊を育てていくのには限界があったのでしょう。留置場に入れられたブリュノに会いに行ってしまいます。
そこで見せたブリュノの涙は、どんな意味の涙だったのでしょうか。
私にはソニアを母親代わりにした、助けを請う駄々っ子の涙のように思えました。
そもそも、警察に引ったくりの首謀者として自首したのは、ソニアが心配してくれると思ったのかも知れませんし、さらに、闇ブローカーからも追われないため、生活が楽になるためと考えたのかもしれません。
でも、あえてブリュノを弁護するなら、親がブリュノを見捨ててしまっていたのと、失業率が高いといわれるフランスの社会事情がブリュノのような若者を生み出しているのかもしれません。
映画的には「えっ!これで終わりなの!」と言うくらいに突然のラストを迎えます。斬新といえば斬新。
きっとブリュノはこの後も更生せずに大人になりきれない子供のままでいるのかなぁと思うのでした・・・。
第58回カンヌ国際映画祭 パルム・ドール
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